騎手になるには騎手・調教師として競馬の世界を知りつくす

伝えていきたいのはプロ意識と馬を愛する気持ち

坂本 勝美競馬学校教官

1964年生まれ、埼玉県出身。1982年に美浦・高木嘉夫厩(きゅう)舎所属の騎手候補生となり、1984年にデビュー。1998年に引退するまでにJRA通算289勝、シンコウラブリイのラジオたんぱ賞(1992年)やマイネルブリッジの福島記念(1995年)など重賞6勝をあげる。1998年に調教師免許取得。ルルパンブルーのフェアリーS(2007年)などJRA通算140勝をあげ、2012年に勇退。2015年秋より競馬学校の教官となる。

  • 騎手に必要なのはプロ意識

    競馬学校での私の役目は、自分がやってきたこと、経験を若い騎手課程生たちに伝えていくことです。その中で、いちばん伝えたいのは「プロ意識」です。技術は、たくさんいる優秀な教官たちが教えてくれますし、最後は自分で身に付けていくもの。私は意識の部分を教えてあげて、プロの騎手としてやっていくための道しるべになれればと思っています。

    騎手というのはプロのスポーツ選手です。勝負に勝ちたい、お客さまに自分のパフォーマンスを見てもらいたいという気持ちが大事です。こんなプロになるんだという意識を持ってもらえるように指導しています。

    そしてもう一つ、大事に育てていきたいのが、馬を愛する気持ちです。相手は言葉を話せない馬ですからね。愛情をもって接することができなければ、一人前のホースマンにはなれません。

  • 競馬学校で身に付けてほしい自己管理能力

    競馬学校では3年間、全寮制で厳しい生活をしていきます。でも騎手免許を取得して実際のレースに行けば、もっと厳しい世界が待っています。競馬学校で頑張れれば、そんな厳しさにも負けない気持ちが養える。そのくらいの気持ちで過ごしてもらいたいと思っています。

    勝負の世界の厳しさ以外に騎手が直面するのが、「体重管理」の厳しさです。プロとして長い間やっていくためには、強い気持ちと自己管理の能力が必要です。競馬学校の3年間ではそういったものも養っていくことになります。

    騎手には大きな喜びもあります。私も経験しましたが、例えば東京競馬場の大観衆の前で1着でゴールに入ったときの喜びは、たとえ未勝利でもとても大きなものです。騎手は、その馬に携わった人たち、みんなの責任を最終的に背負います。たいへんなプレッシャーですが、それだけやりがいのある仕事なのです。

  • 私も乗馬経験なしで騎手になった

    私が騎手になったのは競馬学校ができる直前ですが、当時、馬事公苑の養成所に入るまで、実は私はいちども馬に乗ったことがなかったんです。それでも騎手になれましたし、その後は調教師にもなることができました。だからみなさんも乗馬経験がないことを心配しないでください。競馬学校には優秀な教官がそろっていますし、上手くなれるかどうかは入学してからの自分次第です。

    それにしても、私が騎手になった頃と今とでは、騎手を取り巻く状況はずいぶん変わりました。今は馬主さんがより腕のある騎手を望むようになって、若手といえども、そういった要求に早くから応えていかなくてはなりません。そして今の若い騎手は、デビュー戦から本当に上手に乗っています。私がデビューした頃なんて、今思い出すと恥ずかしくなるような乗り方をしていましたから。

    それも競馬学校がしっかり指導して騎手を送り出しているからですが、本当に大事なのは技術だけでなく、人間的な部分でもきちんと課程生を指導することです。馬うんぬんの前に、一社会人としてちゃんとした人間になることをサポートするということが大切だと常に意識しています。

  • 騎手を目指そうと思っている若者たちへ

    私もそうでしたが、騎手になろうと思っている人は、体が小さかったりして、今はそれがコンプレックスになっていたりするかもしれません。でも騎手は、それが長所として発揮できる世界です。少しでも興味があれば、ぜひ受験してみてください。

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