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フレミントン競馬場は、ヴィクトリア州の州都メルボルンの中心部からわずか6キロメートルほどのところにある。ヴィクトリア州には“メトロポリタン”と呼ばれる主要競馬場が、フレミントン競馬場のほかにも、コーフィールド競馬場、ムーニーバレー競馬場、ラドブロークスパーク競馬場と3つあるが、フレミントン競馬場はこの4つの競馬場の中でメルボルンの中心部から最も近く、電車やトラムを使って、簡単にアクセスすることができる。また、2018年11月1日には92年間使われたメンバーズスタンドに替わるスタンドとして、1億2800万オーストラリアドル(約112億6400万円。1オーストラリアドル=約88円で換算)もの費用をかけて建設されたクラブスタンドが正式にオープン。装いを新たにして競馬が行われている。
フレミントン競馬場で初めてレースが行われたのは1840年3月のことだ。創設当初はメルボルン競馬場と呼ばれていたが、その後、1850年代後半には現在のようにフレミントン競馬場と呼ばれるようになった。その名前の由来については、第1回の開催時に検量用のはかりを貸してくれた、近所の肉屋ロバート・フレミングから取られたとする説もあるが、フレミントン競馬場で競馬を主催するヴィクトリアレーシングクラブは、当時メルボルンの中心部から競馬場に行く際に通る土地の名前がフレミントン(フレミントン自体は土地所有者の妻の出身地であるスコットランドの地名から命名)だったからと説明している。なお、フレミントン競馬場は歴史的価値も非常に高く、2006年にはオーストラリアの国家遺産(National Heritage)にも登録されている。
フレミントン競馬場は、左回り1周2312メートルの芝コースで、最後の直線は450メートル。ただし、その直線には長い引き込み線が伸びており、直線だけで1200メートルのレースを行うことも可能だ。「ザ・ストレート・シックス」(以前の距離単位である6ハロンのシックスからの命名)と呼ばれるこの直線では、オーストラリアを代表する短距離戦のひとつであるニューマーケットハンデ(芝1200メートル)を筆頭に4つのG1レースが行われている。
コースは平坦で、なおかつ広々としており、これといって大きな癖はないが、特徴的なのは3コーナーから4コーナーにかけてゆったりとしたカーブが続くこと。コースに慣れていない騎手が、コーナーと最後の直線を勘違いして動き出してしまうというケースも、過去にはあったようだ。
馬場状態に関しては、たとえばニューサウスウェールズ州を代表する競馬場であるランドウィック競馬場と比べると水はけが良く、あまり悪化しにくい印象。2018年のメルボルンカップ当日(11月6日)は降雨の影響で第2レースから第5レースまでは不良馬場(Heavy 8)で行われたが、雨が止むと急速に馬場が回復。第7レースのメルボルンカップは重馬場(Soft 6)と現地の10段階表記では2段階も持ち直した。なお、コースレコードは芝1200メートルが1分07秒16、芝1600メートルが1分33秒49、芝2000メートルが1分58秒73と、日本と比べても遜色ない時計が記録されている。
フレミントン競馬場で行われるG1レースは全部で14(2019-2020年シーズンの日程)。このうち、最も有名なのは芝3200メートルで行われるメルボルンカップで、毎年11月の第1火曜日(2019年は11月5日)に開催される。この日はヴィクトリア州の「祝日」に指定されており、毎年10万人近い観客が競馬場に詰めかける、フレミントン競馬場最大のイベントとなっている。
また、メルボルンカップ直前の土曜日から、その次の土曜日にかけて、メルボルンカップの開催日を含めて4度行われる競馬開催は「メルボルンカップカーニバル」と銘打たれており、ヴィクトリアダービー、VRCオークス、マッキノンSといったG1レースが連日開催。計8つのG1が組まれるカーニバル期間中の観客数は毎年合計で30万人を超え、大変なにぎわいを見せる。
文:秋山 響(TPC)
(2019年10月現在)
メルボルンカップはフレミントン競馬場の芝3200メートルで争われる。そのスタート地点は、周回コースにおける最後の直線につながる「ザ・ストレート・シックス」と呼ばれる直線コース上に設定されており、そこからまっすぐ進んで周回コースに入り、左回りに1周してゴールというのがレースのおおまかな流れ。コースはほぼ平坦と言って良く、ヨーロッパの競馬場のように坂の上り下りを気にする必要はない。
フレミントン競馬場の芝3200メートルは実力が反映されやすいフェアなコースとして知られている。1周距離が2312メートル、幅員が30メートルと広々としており、最後の直線も450メートルと十分な長さ。加えて、芝3200メートルのスタート地点から最初のコーナーまでは約900メートルの距離があり、たとえばオーストラリアの重要なG1レースであるコックスプレートが行われるムーニーバレー競馬場の芝2040メートルのように、スタートから200メートルも進まずに最初のコーナーに入るというようなトリッキーさはない。スタートの重要性はそれほど高くなく、脚質を問わずに実力を発揮できるコースと言えるだろう。
ただ、2015年のメルボルンカップでは、ゲート番「1番」の馬が1着、「2番」が2着、「4番」が3着、2017年も「4番」が1着、「3番」が2着、「2番」が3着、「5番」が4着と内枠勢が上位を独占。一方で、2014年、2016年、そして2018年は二桁ゲート番の馬がそれぞれ1着から8着、6着、5着までを占めており、ここ5年はゲートによる顕著な偏りが出ていることは特記しておきたい。
馬場に関しては、競馬場の紹介で記した通り、日本と比べても遜色ない時計が記録されており、基本的にはスピードが生きる馬場。芝3200メートルのコースレコードは、1990年にキングストンルールがメルボルンカップで記録した3分16秒30となっている。
文:秋山 響(TPC)
(2019年10月現在)