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ランドウィック競馬場は、ニューサウスウェールズ州を代表する競馬場のひとつ。同州の州都であるシドニーの中心部から5キロメートルほどと近く、バスやタクシーで簡単にアクセスすることができる。競馬はオーストラリアンターフクラブの手で開催されており、同クラブはランドウィック競馬場のほかにもローズヒルガーデンズ競馬場、ウォリックファーム競馬場、カンタベリーパーク競馬場とニューサウスウェールズ州に4つあるメトロポリタンと呼ばれる主要競馬場の全てで競馬を主催している。
現在のランドウィック競馬場がある場所で初めて競馬が行われたのは1833年のこと。しかし、やがて馬場が荒廃してレースを行えなくなったため、1840年に結成されたオーストラリアンレースコミッティ(1842年にオーストラリアンジョッキークラブに改編。同クラブは現在のオーストラリアンターフクラブの前身)はシドニー郊外のホームブッシュで競馬を開催していた。
その後、オーストラリアンジョッキークラブによって元の場所に競馬場が再建され、1860年5月29日に現在のランドウィック競馬場における競馬がスタート。以降、160年以上にわたってシドニーの競馬における中心地として重要な役割を果たしている。なお、競馬場の正式名称に“ロイヤル”が冠せられたのは2022年に崩御されたイギリスのエリザベス女王の訪問を受けた1992年のこと。2013年9月には1億5000万オーストラリアドル(当時のレートで約136億5000万円)もの費用をかけたスタンドやパドックなどの改修工事が完了し、美しく、機能的な競馬場に生まれ変わった。
ランドウィック競馬場は右回りの競馬場で、1周が2224メートルとニューサウスウェールズ州では最大規模を誇るメインコース(最後の直線は410メートル)と、その内側にある1周2100メートルのケンジントントラック(最後の直線は401メートル)の2コース(ともに芝)が競馬用となっている。メインコースには4本のシュート(引き込み線)が設けられており、たとえばG1のドンカスターマイルが行われる芝1600メートルは2コーナー奥に伸びたシュートからのスタートとなっている。また、最後の直線は緩やかな上りになっていることから“ザ・ライズ”と呼ばれている。
馬場状態に関しては、芝1200メートルのコースレコードが1分7秒32、芝1600メートルが1分32秒73と良馬場であれば速い時計も出るが、水はけがいいとは言い難く、降水量が多くなる3月から6月頃の馬場は悪化しやすい印象。実際、4月のクイーンエリザベスSは過去10年で1度しか良馬場で行われていない。
ランドウィック競馬場で行われるG1は全部で20レースあり(2022-2023年シーズンの日程)、これはヴィクトリア州のフレミントン競馬場の14レースを上回り、オーストラリアでは最多。ハイライトとなるのは、毎年4月に行われている「ザチャンピオンシップス」と呼ばれる開催で、2週連続の計2日間で、総賞金500万オーストラリアドルのクイーンエリザベスS(芝2000メートル)、総賞金400万オーストラリアドルのドンカスターマイル(芝1600メートル)を含む8つのG1を行うビッグイベントとなっている。
文:秋山 響(TPC)
(2023年4月現在)
クイーンエリザベスSが行われるランドウィック競馬場の芝2000メートルは、1コーナー途中(コース図を参照)からのスタート。そのためか、外枠は成績が芳しくなく、クイーンエリザベスSにおいては、歴史的な名牝であるウィンクスが2年続けて大外枠からのスタートで勝利した(2018年10番ゲート。2019年9番ゲート)が、これは1996年のドリーマス(12番ゲート)以来となる大外枠出走馬の優勝であった。なお、ここ3年は4番ゲート(2022年)、3番ゲート(2021年)、1番ゲート(2020年)が優勝している。
1周2224メートルのメインコースは、ヨーロッパの競馬場のような大きな起伏はないが、410メートルある最後の直線には、“ザ・ライズ”と呼ばれる緩やかな上り坂があり、最後は底力が問われる。
コースレコードは、2014年10月に行われた3歳馬限定戦のスプリングチャンピオンS(G1)でハンプトンコートがマークした2分00秒19。クイーンエリザベスSが行われる4月のシドニーは比較的雨が多いため馬場が悪くなりやすく、軽いスピードを持ち味とする馬よりは、パワータイプの活躍が目立つ印象がある。
文:秋山 響(TPC)
(2023年4月現在)
ドンカスターマイルが行われるランドウィック競馬場の芝1600メートルは2コーナーの奥にあるシュートからのスタート。最初のコーナーまでには十分な距離があるだけに、一般的に言えばゲート順による有利不利は少ない。ただ、出走頭数の多いドンカスターマイル(フルゲートは20頭)に関しては、内がごちゃつきやすいのか、悪化しやすい馬場状態の問題なのか、明確な理由は分からないが、過去10年では2桁ゲートの馬が7勝。2015年は1着が16番、2着が18番、3着が15番、2014年は1着が13番、2着が18番、3着が12番、2009年は1着12番、2着11番、3着19番と、好走馬(上位馬)が外枠という偏りが出た。
コースレコードは、2018年9月のエプソムハンデ(G1)でハートネルが記録した1分32秒73。良馬場であれば、日本と比べても遜色ない時計が出る。ただ、ドンカスターマイルが開催される4月のシドニーは比較的雨が多く、ここ5年の勝ちタイムは良に近い稍重だった2018年こそ1分33秒17という好時計が出たが、2017年が1分39秒17、2016年が1分35秒27、2015年(悪天候で2日間順延されての開催)が1分37秒61、2014年が1分39秒59とどれもレコードよりも2秒以上も遅く、スピードのみならず、パワーや道悪適性も求められるケースが多くなっている。
また、410メートルある最後の直線には、“ザ・ライズ”と呼ばれる緩やかな上り坂があり、ドンカスターマイルでは2018年が先行抜け出し、2017年が逃げ切りだったが、それ以前は4年連続で残り400メートル地点で10番手以下だった馬の差し・追い込み決まっていた。
文:秋山 響(TPC)
(2019年3月現在)