乗馬未経験からでも騎手になれる先輩騎手から貪欲に学ぶ姿勢

馬が好きだという気持ちは絶対に必要だと思います

丸山 元気 騎手Genki Maruyama

1990年生まれ。祖父は高崎競馬の調教師、父は騎手という競馬一家に育つ。競馬学校を第25期生として卒業後、2009年にデビュー。1年目は8勝をあげたが、初勝利は7月の札幌で、80戦目と同期では最も遅かった。2年目の2010年は全国リーディング7位の92勝、3年目も72勝と大ブレイク。関東の若手筆頭格に躍り出た。

  • 競馬一家に育ち、小さい頃から馬が近くにいた

    僕は祖父と父が地方競馬の調教師と騎手で、小さな頃から馬が近くにいました。朝の厩(きゅう)舎仕事などで厩務員さんの手伝いをしたり、もちろん馬にまたがったこともありました。将来は騎手になりたいとずっと思っていましたし、それ以外の仕事は考えたこともないくらいでしたけど、乗馬を習いに行くことはなかったですね。

    子供の頃は、野球をずっとやっていました。中学生になるとき、体が小さかったのでプロを望むのは厳しいかもしれないと思ってそこでは卓球部に入りましたけど、それまでは野球は本当に頑張って練習しました。野球をやっていて役に立ったことは……トレーニングセンターの中の人たちで作っている草野球チームで活躍できていることです(笑)。

  • 乗馬の成績はいつも下の方だった

    競馬学校の試験は自分ではできた手応えが全然なくて、ああ、やっちゃった、と思いました。正直、試験は落ちたと思っていたので、合格したのはうれしかったです。

    入学してからも乗馬はなかなか上手くならなくて、成績はいつも下の方でした。正直つらかったです。でも初めての走路の試験で、なんと1位になれたんですよ。そこで当時の教官に、このままちゃんとやっていけば大丈夫だと言ってもらえて、がぜんモチベーションが上がりました。あそこから、また新たに頑張る気持ちが起きましたね。

  • 先輩騎手の技術に驚かされ、意識が変わる

    乗馬が上手いことと、走路で馬を速く走らせることは、個人的には別のものだと思っています。でも、馬をコントロールできなければ走らせることもできませんし、若い馬を育てていく中で乗馬の技術が不可欠なのは、競馬の現場でもすごく感じています。

    僕は、夏は北海道に滞在して函館と札幌のレースをメインに乗っているんですが、デビューしてすぐの頃、同じように北海道に滞在している四位洋文騎手が調教から馬を仕上げる過程をじっくり見ることができたんです。四位さんは乗馬もすごく上手い方で、その技術を生かして調教していくと、馬がどんどん言うことをきくようになっていくんですよ。本当に驚きましたし、すごくひかれました。自分が乗馬が下手なこともあって、デビューするまでは調教や馴致(じゅんち:馬が人を乗せるための訓練)にはそんなに興味はなかったんですけど、あれからそういうことも意識するようになりました。

  • 自由な時間も多いし、全国あちこちに行けて楽しい仕事

    僕はデビュー2年目に92勝もできたんですけど、本当にあれは勢いだけ、完全にできすぎでした。師匠の根本康広調教師の人脈で良い馬に乗せていただいていたことがすべてで、本当に感謝しています。僕自身はただ無我夢中でやっていただけです。「一発屋」って、お笑い芸人だけじゃなくジョッキーの世界にもあるんですよ(笑)。

    その後はまだ、それ以上勝てたシーズンはないですけど、でも幸せなことに仕事は楽しくできています。騎手は、普通の仕事の人よりは自由な時間が多いですし、全国あちこちに行くこともできます。何より、頑張れば頑張るほど稼げる仕事です。やってみる価値はあると思いますよ。

  • 馬が好きという気持ちが必要

    馬が近くにいなくても、乗馬をしたことがなくても、騎手になりたいという強い気持ちがあるなら、なれると思います。もちろん決して甘い世界ではないので、騎手以外の仕事は自分にはないんだ、というくらいの決意を持って入ってきてほしいですけどね。

    ただ、乗らなくてもいいですが、一度は馬を見に行ったり、触れ合ったりはしてみてほしいです。馬が好きだというのは、騎手という以前に競馬の世界に入るのには絶対に必要ですから。僕も子供の頃から馬は本当に好きでしたし、競馬学校でも、馬の手入れなんかは、へたをしたら乗ることより好きかも、というくらいでした。
    ぜひ、馬が好きという気持ちを持った人に入ってきてほしいなと思います。

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