乗馬未経験からでも騎手になれるトレセン実習で鍛えられたくましく成長

情熱があれば、なんでもできる。そう思います

松岡 正海 騎手Masami Matsuoka

1984年生まれ。競馬学校を第19期生として卒業後、2003年にデビュー。若手のホープとして早くから活躍し、4年目の2006年、マイケル・キネーン騎手(アイルランドの名手で日本でもワールドスーパージョッキーズシリーズなどで騎乗)の紹介により、アイルランドのジョン・オックス厩舎のもとへ約3か月間の武者修行に。2007年にはヴィクトリアマイルをコイウタで、2009年には天皇賞(春)をマイネルキッツで優勝。2010年に全国リーディング5位となる109勝を挙げるなど、存在感を増している。

  • F1レーサーに憧れるような感覚で騎手をめざす

    僕は父が競馬好きだったこともあって、競馬は小さな頃から見ていましたし、好きでした。小学2年生の時には、もう騎手になりたいと思っていましたけど、それですぐに乗馬を始めるとか、そういう方向にはいかなかったですね。どちらかといえばF1レーサーに憧れるような感覚に近かったからかもしれないです。

    子供の頃はずっと野球をやっていて、将来は騎手じゃなければプロ野球選手になりたいとも思っていました。選抜チームに入ったり、かなり頑張っていたんですが、だんだんとプロにまではなれないだろうなということもわかってきて。

    競馬学校の試験は、ぎりぎりまで野球をしていたこともあって、特に準備はしませんでした。運動神経には自信がありましたし、勉強もまんべんなくできていた方でしたから。あ、そうだ。中学2年生くらいから、身体が大きくなりすぎないように食事制限はしていましたね。よく驚かれますけど、騎手になるためにはそこは最低限必要ですから。そのくらい頑張るのは普通だろうと自分では思っていました。

  • 2年生のトレセン実習で自信をつけた

    1次試験を通った後、2次試験で馬に乗ることはわかっていたので、そこで初めて乗馬を体験しに行きました。想像していたものとは、ずいぶん違うんだなと思いましたね。他の何も似た乗り物が思い浮かばないというか。言い方は悪いんですが、すごく変わった乗り物だなと(笑)。でも、他に似たものがないというのは今でもそう思っています。

    入学してからは、さすがに乗馬を長くやっていた子たちとのレベル差は感じました。実際、実技審査の成績も下の方でしたし。でも2年生でトレセン実習に行って調教に乗せてもらったとき、これなら負けない、自分の方が上手いと思えたんです。乗馬の技術では負けていても、追い切りをすればこっちが上だ、と。乗馬と競馬が重なるところがあることはもちろんわかっていますが、でも分野が違うという感覚は今でも強くあります。

  • 4年目にアイルランドへの武者修行を決断

    デビューした時の所属厩舎の前田禎先生には、スタートをしっかりしろ、といつも言われていましたね。技術面以外では、身を粉にして働け、と教わりました。来るのはいちばん早く、帰るのはいちばん遅く、気配りを忘れずに。そうやって仕事をしていると先生も評価してくれて良い乗り馬を用意してくれました。それでいて、いろいろな厩舎の馬に乗せてもらえ、とも言ってくれましたし。本当に感謝しています。

    4年目にアイルランドへ修行に行こうと思ったのは、まだ自分には足りない部分があるんじゃないかと思ったからです。日本の若手の中ではいいところに行けたけど、ここで満足するわけにはいかない。もっと上をめざしたい、毎日少しずつでも上手くなりたいという気持ちの延長線上での決断です。

  • 「世界」のすごさを知らされ、それが自信につながる

    アイルランドには約3か月いましたが、本当に貴重な時間でした。自分ではある程度乗れると思っていたのに、このくらいの技術の持ち主なんてゴロゴロいるんだと知らされて、ショックを受けました。年下でも明らかに自分より上手いやつが普通にいたりして、あの感覚は日本では絶対に味わえないものでした。

    競馬では2レースしか乗らなかったんですが、休みは1日もなくて、毎日馬に乗って、競馬場へ行ってレースを見てという、常に馬に寄り添った日々でした。正直、日本でそのまま乗っていればこの期間にたくさん稼げたんでしょうけど、そんなことより大事なものを得られましたから。僕の中では、自分の未来に投資したという感覚です。日本に帰ってきて世界のすごさを見てきた自分が、日本ではそうそう負けるわけがないという自信がつきました。

  • マイケル・キネーン騎手に教わった「情熱」の大切さ

    騎手になるために大切なものは何かと質問されたら、それは情熱だと答えます。情熱があれば、なんでもできる。そう思います。

    じつはこれは、マイケル・キネーン騎手の教えなんです。彼は常にそう言っていましたし、実際に信念を持って、ぶれずに自分の信じた道を進む人でした。アイルランドの他のどのジョッキーに聞いても、大切なのはヘッドワーク(頭脳)だって言われましたけど、キネーンだけは情熱だ、と答えるんです。情熱だけは教えることはできない、って。

    もし乗馬をしたことがなかったり、体がそれほど小さくなかったりしても、競馬が好きで、騎手になりたいという情熱があれば、僕は絶対になれると思います。情熱があれば、上手くなれるし、減量だって頑張れます。そしてそういう人こそ、騎手になってもそこがゴールだと思わずにさらに上を目指せるんだと思います。

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