騎手に迫るJRAで7人目の女性ジョッキー

私が頑張ることで騎手をめざす女の子を勇気づけられれば

藤田 菜七子 騎手Nanako Fujita

1997年生まれ。競馬学校を第32期生として卒業し、JRAでは16年ぶり、通算7人目の女性騎手としてデビュー。目標とする騎手は同じ女性で、ニュージーランドのリーディングジョッキーに輝いたこともあるリサ・オールプレス。

  • 小学5年生で騎手をめざし、乗馬を始めた

    私が騎手になりたいと思ったのは、小学5年生の時にテレビで競馬中継を見て、とてもかっこいいなと思ったのがきっかけです。それまでは水泳とか、あとは空手を長くやっていて初段を取ったりもしたんですが、騎手をめざそうと決めて乗馬を始めることにしました。

    初めて馬に乗ったときの感想は、こんなに高くて、こんなに揺れるんだな、というものでした。でも恐怖心とかはぜんぜんなかったです。馬もかわいくて、すぐ好きになりました。周囲もほぼ初心者で、みんなで少しずつ上手になっていくのはとても楽しかったです。

  • 乗馬苑への送り迎えをしてくれた両親に感謝

    JRAでは女性騎手はしばらく出ていませんでしたけど、私自身はそういうことはぜんぜん気にしていませんでした。両親も、やりたいならやってみなよ、と応援してくれました。乗馬の練習場所は家から少し遠くて、中学2年生に入ってからは練習も週5回に増えたんですが、両親が送り迎えをしてくれたりして通うことができたんです。すごく感謝しています。

    仮に競馬学校の受験に失敗したらということは、私はまったく考えていませんでした。そのときはそのとき、高校受験の準備は落ちてから考えればいいと覚悟を決めて、競馬学校の試験の勉強やトレーニングに集中していました。

    でも試験のときは、周りは男の子ばかりですし、すごく目立ってしまっているのは感じました。自分の力は出せたし、これで落ちたらしょうがない、と思いましたけど、やっぱり合格したときはうれしかったですね。

  • フィジカルトレーニングのおかげで体力が付いた

    入学後は、フィジカルトレーニングが大変で最初は付いていくのが精一杯でした。乗馬を始める前は空手を一生懸命やっていましたけど、決して体力に自信がある方ではなかったですし、もともと運動神経もそんなに良くないんです。でも3年間頑張ったおかげで、入学時に比べたら体力はものすごく付いたと思います。

    競馬学校のフィジカルトレーニングは、ただの筋力トレーニングではなくて、馬のどんな動きにも対応できるような筋肉の動かし方を学ぶものでした。体幹トレーニングもたくさんやりましたね。身体の軸を意識するというのは馬の上でも求められますし、すべて今に役立っています。

    教官に教わったことで今でも実践しているのは、失敗してもいいから、その後を大切にするということです。調教で指定のスピードより速くなったり、馬が怪我をしてしまったりしても、その後に馬の担当者としっかりそのことを話したり、ケアをしてあげたりするということです。

  • 目標はニュージーランドのリサ・オールプレス騎手

    ニュージーランドの女性騎手であるリサ・オールプレスさんは、ちょうど私が2から3年生の厩舎実習でトレセンに行っていたときに、短期免許で来日していたんです。身元引受調教師の二ノ宮敬宇先生が、同じ女性の騎手だからということで紹介してくださって、一緒に調教に乗せていただいたりもしました。

    リサさんの、常に上を目指しているところを、私は本当に尊敬しています。女性ながらニュージーランドでリーディングジョッキー(2011/2012シーズン)になったこともあるすごい人なのに、それでぜんぜん満足せず、次はどこの国で乗りたいとかそこで1位を目指したいとか、そういう姿勢がかっこいいんです。

    リサさんにはいろんなことを教えていただきましたし、お話ししていると、私でもあんなふうになれるかもしれないと勇気が出てくるんです。リサさんのようなジョッキーが、私の目標です。

  • 騎手になってみたいと思っている女の子へ

    日本の競馬の世界は、まだ女性が少なくて、女の子が入ってくるにはたいへんな世界に見えるかもしれません。でもやりがいがあって楽しい世界ですし、実際に海外には女性の騎手や厩(きゅう)務員はたくさんいます。

    私はJRAでは久しぶりの女性騎手ということで注目を集めてしまっていますけど、私が頑張ることで女性でも騎手になってみよう、馬の世界に入ってみようと思う方が増えてくれるといいですね。私がリサさんに勇気づけてもらったように、私が騎手を目指す女の子を勇気づけられればいいなと思います。

    あと、騎手は体重が増えることが心配な仕事ですけど、甘いものが好きな女の子でも、その分、運動すれば大丈夫ですよ。私もスイーツ好きですから(笑)。

ページトップへ戻る
表示モード: