グレード制が導入された1984年以降、1999年までの天皇賞(秋)で単勝1番人気に推された馬のうち、優勝を果たしたのは1984年のミスターシービーと1987年のニッポーテイオーだけで、当該期間中の1番人気馬の勝率は12.5%にとどまっていた。一方、2000年から2017年の優勝馬延べ18頭中、半数の9頭は単勝1番人気だった。2000年から2017年まで毎年行われたJRAのGⅠ全23競走(J・GⅠも含む)のうち、単勝1番人気馬の勝率が50%以上なのは、この天皇賞(秋)とフェブラリーS、日本ダービー、有馬記念の4競走だけだ。今年も前評判の高い馬が期待に応えるのだろうか、それとも意外な伏兵が王座を奪取するのだろうか。今回は過去10年のレース結果から、好走馬に共通しているポイントを分析してみたい。
過去10年の3着以内馬延べ30頭中28頭は、年齢が「5歳以下」だった。一方、「6歳以上」だった馬は3着内率2.7%と苦戦している。6歳以上の馬は過信禁物だ。〔表1〕
年齢 | 成績 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 |
---|---|---|---|---|
3歳 | 0-2-2-11 | 0% | 13.3% | 26.7% |
4歳 | 3-5-3-32 | 7.0% | 18.6% | 25.6% |
5歳 | 6-3-4-31 | 13.6% | 20.5% | 29.5% |
6歳 | 0-0-1-30 | 0% | 0% | 3.2% |
7歳 | 0-0-0-30 | 0% | 0% | 0% |
8歳 | 1-0-0-9 | 10.0% | 10.0% | 10.0% |
9歳 | 0-0-0-2 | 0% | 0% | 0% |
5歳以下 | 9-10-9-74 | 8.8% | 18.6% | 27.5% |
6歳以上 | 1-0-1-71 | 1.4% | 1.4% | 2.7% |
過去10年の3着以内馬延べ30頭中22頭は、“前年以降のJRAのGⅠ”において連対経験のある馬だった。この経験のある馬は3着内率が31.9%に達している。まずは前年以降にビッグレースで連対経験がある馬に注目すべきだろう。〔表2〕
連対経験の有無 | 成績 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 |
---|---|---|---|---|
あり | 6-7-9-47 | 8.7% | 18.8% | 31.9% |
なし | 4-3-1-98 | 3.8% | 6.6% | 7.5% |
なお、“前年以降のJRAのGⅠ”において連対経験がなかったにもかかわらず3着以内に入った8頭は、前走が「同年の毎日王冠かつ7着以内」、もしくは「同年の札幌記念かつ1着」だった。前年以降のビッグレースで連対経験がない上、“同年の毎日王冠で7着以内もしくは同年の札幌記念で1着”の経験もなかった馬は評価を下げたい。〔表3〕
年度 | 着順 | 馬名 | 前走とその着順 | |
---|---|---|---|---|
2009年 | 1着 | カンパニー | 2009年毎日王冠 | 1着 |
2010年 | 2着 | ペルーサ | 2010年毎日王冠 | 5着 |
3着 | アーネストリー | 2010年札幌記念 | 1着 | |
2011年 | 1着 | トーセンジョーダン | 2011年札幌記念 | 1着 |
2着 | ダークシャドウ | 2011年毎日王冠 | 1着 | |
2013年 | 1着 | ジャスタウェイ | 2013年毎日王冠 | 2着 |
2014年 | 1着 | スピルバーグ | 2014年毎日王冠 | 3着 |
2015年 | 2着 | ステファノス | 2015年毎日王冠 | 7着 |
前走が“国内のレース”だった馬について、前走の単勝人気別成績をまとめると、前走で「1番人気」だった馬は3着内率42.9%と優秀な成績を収めている。一方、「8番人気以下」だった馬は全て4着以下に敗れている。臨戦過程を比較する際は、前走の単勝人気にも注目してみよう。〔表4〕
前走の単勝人気 | 成績 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 |
---|---|---|---|---|
1番人気 | 6-5-4-20 | 17.1% | 31.4% | 42.9% |
2〜7番人気 | 4-5-6-92 | 3.7% | 8.4% | 14.0% |
8番人気以下 | 0-0-0-30 | 0% | 0% | 0% |
過去6年の3着以内馬延べ18頭中14頭は、前走が“国内のレース”、かつそのレースの4コーナーの通過順が「3〜7番手」だった。一方、「2番手以内」だった馬は3着内率10.5%、「8番手以下」だった馬は同5.1%と、それぞれ苦戦している。2011年以前は「2番手以内」や「8番手以下」だった馬の好走例も少なくなかったが、近年の傾向を重視するならば、前走の4コーナーの通過順が「3〜7番手」以外だった馬は評価を下げた方がよさそうだ。〔表5〕
前走の4コーナーの通過順 | 成績 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 |
---|---|---|---|---|
2番手以内 | 1-1-0-17 | 5.3% | 10.5% | 10.5% |
3〜7番手 | 4-4-6-29 | 9.3% | 18.6% | 32.6% |
8番手以下 | 1-1-0-37 | 2.6% | 5.1% | 5.1% |
過去10年の優勝馬10頭は、いずれも“東京競馬場のGⅠかGⅡ”において3着以内に入った経験がある馬だった。ちなみに、この経験がなかった馬は2008年以降〔0・3・1・72〕(3着内率5.3%)と苦戦している上、2005年のヘヴンリーロマンスを最後に優勝がない。今回と同じ東京競馬場のGⅠやGⅡで好走したことがない馬は、勝ち切る可能性が低いと見るべきだろう。〔表6〕
(伊吹 雅也)
注記:表は横にスクロールすることができます。
年度 | 優勝馬 | “東京競馬場のGⅠかGⅡ”における最高着順 |
---|---|---|
2008年 | ウオッカ | 1着(2008年安田記念ほか) |
2009年 | カンパニー | 1着(2009年毎日王冠) |
2010年 | ブエナビスタ | 1着(2010年ヴィクトリアマイルほか) |
2011年 | トーセンジョーダン | 1着(2010年アルゼンチン共和国杯) |
2012年 | エイシンフラッシュ | 1着(2010年日本ダービー) |
2013年 | ジャスタウェイ | 2着(2013年毎日王冠ほか) |
2014年 | スピルバーグ | 3着(2014年毎日王冠) |
2015年 | ラブリーデイ | 2着(2012年京王杯2歳S) |
2016年 | モーリス | 1着(2015年安田記念) |
2017年 | キタサンブラック | 1着(2016年ジャパンカップ) |
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