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アラブ首長国連邦(UAE)競馬の概要

アラブ首長国連邦(UAE)競馬の概要

世界の競走馬が集う祭典の地

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7つの首長国からなる連邦国家であるアラブ首長国連邦(UAE)では現在、ドバイ、アブダビ、そしてシャルジャと3つの首長国で競馬が行われている。そのうち、レースレベルという点で群を抜いているのがドバイで、UAEで行われるサラブレッドによる重賞の全てがドバイでの開催(メイダン競馬場で31レース、ジェベルアリ競馬場で1レース)となっているほどだ(2023-2024年シーズンの日程)。

UAE競馬の中心地であるドバイに初めて競馬場が作られたのは1969年のこと。当時、ドバイはまだイギリスの保護領(UAEの独立は1971年)だったが、イギリスに留学して競馬に魅了されたマクトゥーム殿下(9代目ドバイ首長)とモハメド殿下(10代目現ドバイ首長)を中心とするマクトゥーム家(ドバイの首長家)の主導で、現在ではドバイ国際空港の敷地となっているあたりに競馬場が建設された。ただ、ここでの競馬はあくまで非公式なもので、空港の拡張に伴って1982年に閉鎖された。

ドバイ、さらにいえばUAEで初めて正式な規則の下で競馬が行われたのは1981年のこと。ラクダによるレースが行われていたダートコースを借用してのものだった。この頃はマクトゥーム家の人々が馬主として次々にイギリスやアイルランドで勝利を挙げ、生産にも乗り出した時期であり、ドバイ、そしてUAEの競馬はマクトゥーム家の競馬熱の高まりとともにスタートしたといえる。

1984年には現在のメイダン競馬場がオープンするまでドバイを代表する競馬場として機能していたナドアルシバ競馬場が前述のラクダ競走用のコースの近くにオープンした。当初は、レースではなく、調教のためだけに用いられていたが、1988年に800人収容のグランドスタンドが設えられるなど徐々に競馬場としての体裁が整えられ、UAEの競馬統括機関であるエミレーツ競馬協会(Emirates Racing Association、現在はエミレーツレーシングオーソリティーEmirates Racing Authority。略称はどちらもERA)が発足した1991-1992年シーズンからはここで競馬がスタート。1993年から1995年にかけてはドバイ国際騎手チャレンジという騎手招待イベントが行われ、日本からも岡部幸雄騎手、武豊騎手、南井克巳騎手が参加した。

UAEの競馬にとって大きなターニングポイントとなったのは1996年にドバイワールドカップ(ダート2000メートル)が創設されたことだ。世界最高賞金レース(総賞金400万アメリカドル。現在は1200万アメリカドル)としてスタートしたこのレースはドバイの競馬におけるシンボルとして、世界の競馬地図においても重要な位置を占め続けている。
なお、第1回ドバイワールドカップの舞台となったナドアルシバ競馬場は2009年3月をもって閉場となり、2010年1月28日にはそれに替わる競馬場として、その隣接地にメイダン競馬場が開場。ドバイワールドカップをはじめとする、UAEにおける主要レースのほとんどが行われる、UAE競馬における総本山となっている。

UAEの競馬は、真夏の酷暑を避ける形で行われており、おおよそ10月下旬から翌年4月上旬までの開催。したがって、2023-2024年シーズンというような形でシーズンが表される。障害や速歩競馬は行われておらず、平地競馬のみの開催だが、サラブレッドだけでなく、アラブによる競馬も盛んだ。

シーズンのハイライトとなるのは3月末に行われる「ドバイワールドカップデー」。前記のドバイワールドカップを頂点にして、ドバイシーマクラシック(芝2410メートル)、ドバイターフ(芝1800メートル)などサラブレッドによる競走だけでも5つのG1を含む8つの重賞が行われる一大イベントとなっている。

また、ドバイにおける競馬の大きな特徴として、地元馬だけでなく、ヨーロッパ、北米、南米など世界中から競走馬を集めて競馬を行っていることが挙げられる。特に、11月中旬から3月上旬までメイダン競馬場で開催され、ドバイワールドカップデーへと繋がる「ドバイレーシングカーニバル」は海外からの出走馬も多く、ハイレベルの争いとなっている。

この「ドバイレーシングカーニバル」は2023-2024年シーズンにそれまで1月スタートだった「ドバイワールドカップカーニバル」のスタートを早めて開催日を増やすともに改名したもの。ジェベルハッタ(芝1800メートル)、アルマクトゥームチャレンジ(ダート1900メートル)と2つのG1が組まれる1月下旬の「ファッションフライデー」、ともにG2のアルマクトゥームクラシック(ダート1900メートル)とドバイシティオブゴールド(芝2410メートル)など6つのサラブレッド重賞が行われる「スーパーサタデー」を含む計14日の開催となっている。

なお、UAEではかつてジェイドロバリー、ティンバーカントリー、ホーリングといったトップホースが種牡馬として繋養されていたが、現在ではサラブレッドの生産はほとんど行われておらず、2018年から2021年は4年続けて0頭だった(2022年、2023年は発表なし)。また、宗教上の理由から賭博が禁止されており、馬券も発売されていないが、賞金が出る参加費無料の「コンペティション」と呼ばれる予想ゲーム(指定7レースの1着馬を全て当てるなどいくつか種類がある)があり、ファンに親しまれている。

文:秋山 響(TPC)
(2024年3月現在)

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