GⅠに挑戦した前々走の大阪杯では10着と結果を出すことができなかったが、これはGⅠの壁ではなく、スタートで後手を踏んで自分のリズムで走ることができなかったため。そんな厳しい状況で勝ったベラジオオペラからは0秒7差なら、地力は確実にアップしていると言えそうだ。3走前の小倉大賞典で重賞初制覇を果たし、その小倉大賞典より1キログラム重いハンデを背負った前走の中京記念でも、勝ったアルナシームとクビ差の2着に好走した。今回はGⅢの別定戦で、前走から1キログラムの斤量減となる。力量上位と言えるだけに、2つ目のタイトル獲得に期待が高まる。

約6か月の休養を挟んで復帰した今年4月の1勝クラス（中山・芝1800メートル、1着）からの成績は5戦3勝。前走の秋華賞は9着に敗れたが、春はスイートピーS（リステッド・東京・芝1800メートル）を勝ち、古馬相手のクイーンSでは、次走の秋華賞で2着に好走した同世代のボンドガールを退けて重賞初制覇を果たした。今回のメンバーでも実績上位に数えられる一頭と言えるはずだ。父はゴールドシップ、母の父はロージズインメイというタフな血統背景。結果を出したクイーンSが洋芝の札幌で稍重馬場だったことを踏まえれば、開催が進んだ現在の芝コンディションにも対応できるはずだ。

瞬発力よりもスピードの持続力に秀でた馬が多いシルバーステート産駒。本馬のイメージも同様で、今回もそれなりのポジションを取り、直線で早めに抜け出して粘り込むスタイルの競馬を狙ってくるはずだ。前述したようなレース運びで重賞初制覇を決めた七夕賞は昨年の7月。レース後に右前脚の浅屈腱炎を発症し、今回は約1年4か月の長い休養明けになる。ただ、さまざまな技術が発達した現在は、屈腱炎による休養から復帰して重賞タイトルを獲得する馬も少なくない。久々を感じさせないパフォーマンスを期待したい。

半姉プリモシーン（父ディープインパクト）はマイル重賞を3勝した活躍馬で、2022年のセレクトセールにおいて4億9500万円（消費税込み）の高値で取引された本馬も、デビュー前から期待値が非常に高い。昨年秋のアイビーS（リステッド・東京・芝1800メートル）ではホウオウプロサンゲ、レガレイラを負かし、ダービートライアルのプリンシパルS（リステッド・東京・芝2000メートル）も勝った。前走の毎日王冠は6着に敗れたが、勝ったシックスペンスとのタイム差は0秒3で、前残りの展開も向かなかった印象。持っているポテンシャルの高さは今回のメンバーでも上位と言えるはずだ。

3歳限定戦のすみれS（リステッド・阪神・芝2200メートル）も含めれば、オープンクラスで3勝の実績馬。重賞制覇に手が届いていないのが不思議なくらいだが、最近はハンデ戦で他馬より重い斤量を背負うケースが多かった。別定戦の今回は初重賞制覇のチャンスと言えるかもしれない。約3か月の休み明けで出走した前走のアンドロメダS（リステッド・京都・芝2000メートル）は、これまで以上に折り合いの課題を感じる内容で4着。馬体重だけを見れは仕上がっていたが、調教段階から良化がスローとの声もあった。一度使われた上積みが見込める今回は、本来の走りを見られそうだ。

一昨年の菊花賞はコースレコードで勝利したアスクビクターモアと同タイムの2着。続く有馬記念もイクイノックスの2着に好走するなど、秘めるポテンシャルはGⅠ級だ。晩成だったスクリーンヒーローが父である血統背景を考慮すれば、王道路線で活躍していても不思議はなかったはずだが、右前脚の腱周囲炎が判明して長期の休養を余儀なくされた。今回は、昨年の天皇賞・春（6着）から1年7か月ぶりの実戦になる。超えるべきハードルは低くないが、出走態勢は整っているようで、いきなり好走するシーンが見られるかもしれない。

父は菊花賞、ジャパンカップを勝ったエピファネイア、母はエリザベス女王杯の勝ち馬であるラキシス。どちらも角居勝彦厩舎所属で活躍した馬だが、本馬を管理する辻野泰之調教師は角居厩舎の出身。気性が激しく、コントロールが難しいとされた父の特徴も、食が細く、体重維持に悩まされた母の特徴も熟知しているのは心強い。レース間隔を空けて出走させているのも、走りが前がかりになり、バランスが崩れてしまうことを防ぐためだ。前走のオープン特別・ケフェウスS（中京・芝2000メートル）は惜しい2着。持っている能力を発揮できれば、重賞のメンバーでも臆するところはない。

12番人気の低評価を覆し、勝ったスタニングローズから2馬身差の2着に好走した前走のエリザベス女王杯。難しいはずの外枠（8枠16番）から巧みに誘導した川田将雅騎手の手腕が目立つレースではあったが、それを可能にしたのが折り合い重視の調整過程だ。レース直前は半マイルのみの追い切りにするなど、陣営の苦心が結果となって表れた印象がある。振り返れば、アルテミスSでリバティアイランドを負かし、オークスでは4着に健闘。今年の京都記念では勝ち馬プラダリアから0秒5差の5着に入っている。牡馬相手の重賞でも好勝負が可能だろう。