昨年は3勝クラス・むらさき賞（東京・芝1800メートル）、函館記念、オールカマーと3連勝。とりわけオールカマーではGⅠ3勝馬のタイトルホルダーを下しての優勝だった。続く香港カップ（G1・芝2000メートル）では8着と結果を残せなかったが、前々走の大阪杯では後方の位置取りから向正面で果敢に動いて、残り1000メートルの地点で3番手まで進出。直線ではベラジオオペラとの追い比べに持ち込み、クビ差及ばずの2着も、レースぶりを思えば勝ち馬と同等の評価ができるだろう。宝塚記念（5着）以来だが、9月上旬から熱心に乗り込まれている。再び能力の高さを見せるのか、期待したい。

特筆すべきは前々走のスプリングS（1着）。道中がかなり遅いペースだったとはいえ、3番手追走からメンバー中最速の上がり3ハロン33秒3（推定）の脚を使って、直線は後続を離す一方の快勝だった。レースのラスト1ハロン10秒8というラップも、脚力の非凡さの表れと言えるだろう。前走の日本ダービーは3番人気の支持を集めたが、最後の伸びを欠いて9着。とはいえ、あれが実力でないことはスプリングSの圧倒的なパフォーマンスが示す通りだろう。今回はそのスプリングSと同距離。また、毎日王冠は過去5年で3歳馬が4勝をマークしている。能力発揮にふさわしい好条件がそろったと言えそうだ。

昨年は毎日王冠を迎えるまでに、未勝利、1勝クラス、ラジオNIKKEI賞と3連勝。その毎日王冠は好位追走から直線は狭いところを突いて先頭へ。ゴール前はソングライン、シュネルマイスターらの猛追を受けたが、ハナ差だけしのいだところがゴール。他世代との初対戦で重賞連勝を果たした。その後は勝利に手が届いていないが、前走の中京記念では59キログラムのトップハンデを背負い、差し馬が殺到する展開のなか直線入り口で一度は先頭に立っての3着と、素質を再認識させるのには十分な力走だった。さらに9月25日の1週前追い切りでは、栗東CWコースで6ハロン79秒7の好タイムをマーク。完全復調がかなうだけの態勢が整っている。

2歳時から一貫して王道路線を歩み、ホープフルS3着、皐月賞5着、日本ダービー7着とGⅠでも健闘を見せた。重賞初勝利は2022年1月の日経新春杯。直線では外から鋭く伸びて成長を見せつける快勝だったが、その後は屈腱炎で長期休養を余儀なくされた。復帰戦となった今年の金鯱賞は3着、続く新潟大賞典も3着の後、前走の鳴尾記念で復活の勝利を果たした。着差こそアタマ差だったが、1分57秒2の好時計で走れたあたり、状態面の良化に加えてパワーアップを遂げた印象も受けた。日本ダービーを除けば左回りの重賞で2着、1着、3着、3着。今回も上位争いになりそうだ。

3歳時に出世レースの1勝クラス・フリージア賞（東京・芝2000メートル）を勝って、続くスプリングSはベラジオオペラの2着。皐月賞こそ17着と崩れたが、日本ダービーでは2番手追走から直線残り200メートルまで先頭を窺う脚色で、勝ち馬タスティエーラから0秒2差の6着と奮闘を見せた。つまり、もともと素質が高く、今年の函館での連勝はその素質が開花した一端とみるべき。前走の函館記念は直線入り口で先頭に立つと、後続を悠々と突き放しての快勝だった。本格化を果たした今なら、再び押し切りがあっていい。

驚かされたのが前々走の中山記念だ。好スタートから3番手のインを取ると、勝負どころでも手応え十分。残り200メートル過ぎで逃げていたドーブネをかわして抜け出す盤石の競馬で、重賞初勝利を挙げた。ベテラン横山典弘騎手の好騎乗に加えて、その鞍上のコントロールに応えた馬も立派。去勢を経て、ようやく力をフルに発揮できるようになったようだ。東京・芝1800メートルは勝利こそないが、昨年にオープン特別・メイS2着、エプソムC3着がある舞台。力を出せる条件とみていいだろう。中山記念同様の走りができれば、2つ目のGⅡタイトル獲得があっても不思議はない。

戦績上、特に強調できるのが昨年のアイビーS（リステッド・東京・芝1800メートル）。2番手からメンバー中最速タイの上がり3ハロン32秒7(推定)の末脚で押し切った勝ち方も良かったが、さらに評価できるのが当時のメンバー。逃げて2着だったホウオウプロサンゲは翌年の若葉S（リステッド）で2着に入り皐月賞に駒を進めた馬。3着馬のレガレイラは次走のホープフルSを勝利した。本馬も重賞タイトルに手が届くだけの資質は備えているはずで、プリンシパルS（リステッド）は納得の勝利でもあった。日本ダービーでは直線で伸び切れず14着だったが、立て直して挑む今回は素質を見直す一戦になる。

初の芝1800メートル戦となった5月の白百合S（リステッド・京都）は逃げ馬を捕らえ切れずの2着だったが、距離適性を示すには十分な内容だった。同距離2度目のラジオNIKKEI賞では、ゲート内でうるさい面を見せて後方からとなったものの、直線で大外から矢のような伸び。ゴール寸前でシリウスコルトをかわして1着となった。成長を示したことはもちろん、しっかりと脚をためることで素晴らしい末脚が使えることが分かったことは、今回東京・芝1800メートルに舞台が替わるにあたって大きな強調点になるだろう。鋭さ勝負になれば、55キログラムの斤量も生きてきそうだ。