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フランス競馬の概要

フランス競馬の概要

ヨーロッパを代表する競馬主要国

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フランスはヨーロッパを代表する競馬主要国のひとつ。IFHA(国際競馬統括機関連盟)が定めるパートT国であり、イギリスやアイルランドと共に世界の競馬を牽引している。パリのブローニュの森にあるパリロンシャン競馬場で行われる凱旋門賞は世界最高峰のレースのひとつ。

我が国との関連では20世紀中盤から人馬の深い国際交流が途絶えることなく続いており、とりわけ近年は日本の多くのトップホースが凱旋門賞に出走している。1969年にスピードシンボリが初挑戦(着外)したこのレースを制覇することは、日本競馬界にとって積年の宿願となっている。

中世のフランスにおいて競馬はブルターニュ地方とブルゴーニュ地方で行われ、一般大衆の娯楽であったという。“職人たちがきわめて不良の馬に騎乗していた”という当時の草競馬は午後2時から始まり、賞品は1着が金の指輪、2着がタフタの白のスカーフ、3着が手袋だった。

イギリスで発祥したスポーツ・オブ・キングスと呼ばれる近代競馬がフランスに輸入される最初の兆候が現れたのは17世紀頃。イギリス外交官だったド・バソンピエール元師は、イギリスの競走馬をフランスへ持ち込んだところ「非常に尊ばれた」と1626年に語っている。ただ貴族たちは身近なスポーツだった狩猟に熱心で猟騎馬の生産や改良に力を入れていたため、サラブレッドへの関心が高まるまでには時間を要した。

18世紀に入るとブローニュの森、サブロン平原、フォンテーヌブローなどでイギリス式の競馬が行われるようになり、以後はルイ16世やマリー・アントワネット、イギリスですでに競走馬を所有していたオルレアン公などの庇護を受け、繁栄を見ていくようになる。1770年代にはフランス産のサラブレッドが競馬場で出走し、勝利をおさめるようになっていた。フランス革命の影響で競馬は一時中断したが、1805年8月31日の布告によってナポレオン・ボナパルトが内務省の統括する新たな競馬についての制度を確立した。ナポレオンの失脚後、1833年にフランス馬種改良奨励協会ができると同協会の主催による最初の競馬が1834年5月15日にシャンティイで行われ、1836年にはフランス版ダービーのジョッキークラブ賞、1843年にはフランス版オークスのディアヌ賞が誕生した。この頃の競馬はパリから北東40キロメートルにあるシャンティイへの旅が不便だった時代であり庶民からの人気は得られなかったが、1856年12月、パリのブローニュの森にロンシャン競馬場が誕生してからいよいよ競馬人気が花開く。1857年4月に行われた第1回ロンシャン競馬には空前の大観衆が集い、交通の便も良く、快適なロンシャンはたちまちパリの人々にとって人気の日帰り行楽地となった。大衆は盛装し酒を飲み、そして賭けの楽しみを味わった。ロンシャンの開設から8年後にはフランス初の国際競走パリ大賞典が創設されている。

20世紀に入ると、産業革命で富を蓄えたアメリカ人がフランス競馬に参入し、調教技術や優れた血統を持ち込み、これによってフランス競馬のレベルは飛躍的に高まった。現在は世界最高峰のレースの一つとして名高い凱旋門賞ができたのは、1920年のこと。リボー、シーバード、ミルリーフなど歴史的名馬が誕生し、凱旋門賞をモデルとして3歳以上、芝2400メートルの国際G1競走が世界中にできた。

現在のフランス競馬は平地・障害・速歩の3つで構成されており、競馬場は国内に240か所。1年365日、どこかで必ず競馬が開催されており多様性に富んだ魅力あるものとなっている。中央場所と言えるパリ地区およびドーヴィルの競馬は1995年以降フランスギャロが統括しており、その立場は日本のJRAに近い。フランスの馬券売り上げは2019年の統計によると世界6位(88億2547万3709ユーロ)と堅調で、街の至る所にある「PMU」と呼ばれる馬券購入ができるカフェは人々の生活と意識に溶け込んでいる。ブックメーカーは排除されており現地の馬券は日本と同様のパリミュチュエル方式であり、これによる利益が、安定した競馬の施行と賞金の供給につながり、公正競馬が確保されている。

瀟洒な雰囲気の下、10月第1日曜日に行われることが慣例の凱旋門賞は、早秋のパリを代表する国際的スポーツイベントのひとつとなっている。ヨーロッパの隣国からの参戦はもちろん、その他の大陸からの参戦馬があることも珍しくはない。

フランス競馬のレースは、伝統的にその多くがスローペースで行われ、ゆったりと行って最後に仕掛けるのが典型的なフレンチスタイル。馬と馬の間隔が極端に狭い密集した馬群でひしめき合い、前半に一度各馬のポジションが決まれば道中はメリーゴーランドのように同じ位置取りでレースが進んでゆく。ゆったりとしたペースの中で人馬の折り合いや勇気が問われ、直線に入ってからの攻防で勝負はクライマックスを迎える。

ホースマンたちがあくなき情熱をたぎらせ、年間の生産頭数はフランスギャロの統計によると2021年で5596頭。近年は生産の現場において早い時期から活躍のできる短距離馬の育成も求められるようになりつつあるが、やはり芝の中・長距離のレースにこそフランス競馬の格式と真価がある。

かつて平地競馬は厳寒期に入るとシーズンオフの時期となっていたが、近年はオールウェザーコースがカーニュシュルメール競馬場(コートダジュール競馬場)、ドーヴィル競馬場、シャンティイ競馬場などに続々と開設されており、年間を通じて全土で開催が行われるようになっている。ただし、芝の重賞競走が行われるのは現在も気候の良い3月から11月の期間に限られている。

文:沢田 康文
(2024年9月現在)

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