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競馬場・コース紹介

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ピムリコ競馬場

ピムリコ競馬場はアメリカ合衆国のメリーランド州ボルチモアに位置する。メリーランド州は、東海岸経済圏を構成する州のひとつ。そして同国で最も古い州のひとつでもあり、欧州大陸に近いという地理的な要因もあって、16世紀初頭にはイタリア人やイギリス人がこの地を踏んでいる。本ウェブサイトのアメリカ競馬の概要にある通り、米国の競馬は開拓初期のバージニア州を中心に、ヒート競走、つまりマッチレースとして広がりを見せ、同州に隣接するメリーランド州も、その「競馬圏」内に入っていく。それが馬産を育み、実際、現在の北米馬産の中心地であるケンタッキー州にはメリーランド州から移住した競馬一家が少なくない。それほど、メリーランド州には愛馬家が多かったということになる。そんな歴史的な背景もあって、競馬史上最も成功した種牡馬ノーザンダンサーはケンタッキー州ではなくメリーランド州で繋養されていた。

さて、1カ月半で三冠競走を開催する米国で、その二冠目であるプリークネスSの舞台となるピムリコ競馬場が開設されたのは1870年10月25日。これは1864年ニューヨーク北部に作られ、今でも夏開催で有名なサラトガ競馬場に次いで2番目に古い競馬場となる。実は1868年のサラトガ開催中のある夕食会で、当時のメリーランド州知事で馬主でもあったオーデン・ボウイとその仲間達が「2年以内にメリーランド州でも競馬開催を始める」と宣言。それが実現できるか否かという賭けまで発展し、メリーランド州競馬人の負けじ魂も後押しして、ボルチモア市北郊に70エーカーの土地を確保してピムリコ競馬場が開設された。なお、このピムリコという名前の由来は、植民地時代に英国ロンドンの名所のひとつ“Olde Ben Pimlico's Tavern”地区からのボルチモアへ渡った入植者たちである。

開設当時のピムリコ競馬場には小さな丘があり、馬場の改修を繰り返す中でも「丘のある内馬場」はそのまま残されて、競馬関係者やファンの憩いの場所として残された。現在のピムリコ競馬場で、内馬場にも出走関係者はじめ多くのファンがそこで観戦するのは、その小さな丘でのピクニックの風習が残っているためだ。かつてプリークネスS開催日には6万人が内馬場で観戦したという記録もある。こうした競馬観戦の楽しさを伝えたこの丘は、向正面のレースが見られるように、1938年に平らにならされている。

ところで、米国競馬史を振り返る上で、ひとつ転換点となるのが1910年からの賭博禁止の動きである。競馬も当然標的のひとつとされたが、ケンタッキー州同様、メリーランド州もこの難関を突破したことで競馬開催地としての信用を得た。さらに、1913年にはこれまでブックメーカーに依存していた馬券の販売方法から、パリミュチェエル方式へ切り替え近代競馬開催の礎を築くこととなった。

ピムリコ開催の最大のイベント、プリークネスSは2024年で149回目を迎える。同競走は東海岸の重要なスポーツイベントのひとつで、社交の場としても知られ、また競馬黎明期のヒート競走を連想されるような熱烈な地元衆が集う場として親しまれている。

文:吉田 直哉
(2024年5月現在)

  • ピムリコ競馬場 イメージ1
  • ピムリコ競馬場 イメージ2

ピムリコ競馬場ダート1900メートル

ピムリコ競馬場 コース図

米国三冠競走第二戦の舞台となるピムリコ競馬場ダート1900メートル。他の多くの米国の競馬場と同様、ここもメイン馬場であるダートコースの全周距離は5280フィート=1マイル(約1609.34メートル)である。一見、他の競馬場と同じように見えるが、ここの特異な点は直線が1152フィート(約351.13メートル)であることだ。例えば、西海岸主要競馬場のひとつで、2024年もプリークネスS出走馬数頭の拠点となっているサンタアニタパーク競馬場は、全周は5280フィートで同じだが、直線距離は990フィート(約301.75ートル)しかない。つまり約49.38メートルも短いわけだ。この事実からピムリコ競馬場は「長い直線、タイトなコーナー」ということが言える。

では勝つためにどのように騎乗すべきか。まずは内枠を得て先手をとって内ラチ沿いにと考えてしまうが、ここを拠点とする厩舎関係者や騎手たちにたずねると必ずしもそうではないそうだ。内は不利にはならないものの、最後の伸びに欠けることがあり、それはタイトなコーナーゆえの走りづらさや、手前を替えるタイミングを失することで余分な疲労を負ってしまうのではという仮説のようだ。

また5月中旬は夏の気候への移行期にあたり、天候が変わりやすく雨中でレースになることもしばしばだ。ピムリコ競馬場は春季以外にも開催があるため、ダート馬場はやや深めに整地されている。重馬場、不良馬場では内ラチ沿いに水が溜まり、重さが増す。

ダートコースの1900メートルは第4コーナーの出口からスタートしてコースを1周する。プリークネスSにはケンタッキーダービーを回避した有力馬が満を持して乗り込み、またダービー出走組も100メートル短いという距離的な安心感から前々でレースを組み立ててくることが多い。冒頭の「49.38メートルの見えない罠」を克服するのは内ラチから1頭分離れたラインを取れるか否か。そこがこのコースの観戦のポイントである。

文:吉田 直哉
(2024年5月現在)

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