オークス（GⅠ）では、二冠制覇を目指すステレンボッシュが1番人気に支持された。これに続く2番人気はチェルヴィニア。快勝のアルテミスS以来となった桜花賞では13着と不本意な結果に終わったものの、主戦クリストフ・ルメール騎手は「ポテンシャルは高い。2歳時から絶対クラシックに行けると感じていた」と評価。そんな素質馬の巻き返しに、多くのファンが望みをかけたのだ。

そして、ジョッキーと観衆の期待は現実のものとなる。

ヴィントシュティレとショウナンマヌエラが飛ばし、1000メートル通過57秒7のハイペースが作られる。離れた3番手に忘れな草賞を勝ったタガノエルピーダ、好位にクイーンC勝ち馬クイーンズウォーク、中団にはフローラSを差し切ったアドマイヤベルや桜花賞馬ステレンボッシュが構え、3連勝でスイートピーSを制したコガネノソラ、桜花賞3着ライトバック、同4着スウィープフィートらは後方で脚をためている。

チェルヴィニアはステレンボッシュを見ながらの追走。ドバイでの落馬負傷のため桜花賞には乗れなかったルメール騎手は「前走は残念だったけれど今日は勝つ自信があった」と、あらためてパートナーの高い能力をその背中越しに再認識し、絶大な信頼とともに直線へと向かったのである。

逃げた馬たちを交わしてランスオブクイーンが先頭に立つと、これに外からクイーンズウォーク、内からは馬群をこじ開けてステレンボッシュが襲いかかる。そこへ猛然と脚を伸ばしてきたのがチェルヴィニアだ。ルメール騎手が「本当のチェルヴィニアを見せられた」と称えるほどの鮮やかな瞬発力を披露し、ステレンボッシュを差し切って先頭でゴールを駆け抜ける。

まさに巻き返しのスパート、オークスで2着に敗れた母チェッキーノの雪辱ともなる勝利で、チェルヴィニアはGⅠ初制覇を果たしたのだった。

（谷川　善久）