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ヨーク競馬場はイングランド北部のノースヨークシャー州ヨークにある。首都ロンドンから北に300キロメートルほどで、最寄りの駅までは電車で約2時間。競馬開催日にはそこから競馬場行きのシャトルバスが運行している(歩いても20分ほど)。ヨーク競馬場のイギリス競馬界における重要度は非常に高く、アスコット競馬場が改修工事を行っていた2005年には王室主催のロイヤルアスコット開催を代替開催。しばしば“北のアスコット競馬場”ともいわれる。
紀元71年に要塞都市としてローマ帝国によって建設されたヨークでは、3世紀初頭にはすでに競馬(おそらくは戦車競走)が行われていたようだが、地元の記録によれば1530年には地元の全面的なサポートの下で競馬が行われるようになり、1709年からはクリフトンイングズという場所で行われていた競馬の詳細な記録も残されている。ヨークはこの頃から重要な競馬開催地のひとつであり、18世紀前半には当時のアン女王も自身の所有馬をこの地で走らせていた。
その後、ヨーク競馬場の公式ホームページによれば、クリフトンイングズにおける競馬は度重なる洪水被害によって1730年に現在のヨーク競馬場があるナヴェスミアに移転を余儀なくされ、その翌年の1731年にヨーク競馬場で最初のレースが施行。1770年には18戦無敗の伝説的な名馬であるエクリプスもこの競馬場で2度走った。
以降、ヨーク競馬場では数々のビッグレースが行われてきたが、100年以上が経過した今でも語り継がれているのは1851年5月13日に行われたザフライングダッチマン対ヴォルティジュールという1歳違いの英ダービー馬によるマッチレース(芝3200メートル、ザフライングダッチマンが優勝)。15万人もの観客が競馬場に押し寄せたといわれている。
ヨーク競馬場で行われるのは平地競馬のみで、5月から10月にかけての年間17日間の開催(2024年の日程)。そのメインとなるのは8月下旬に行われる「イボアフェスティバル」で、真夏のヨーロッパ中距離王者を決めるインターナショナルS(芝2050メートル)を筆頭に、ヨークシャーオークス(芝2370メートル)、ナンソープS(芝1000メートル)と3つのG1を含む10の重賞レースを水曜日から土曜日の連続4日間でまとめて開催するビッグイベントとなっている。また、最終日に行われるイボアハンデキャップ(芝2770メートル)はハンデ戦であるため重賞格付けはされていないが、1843年に創設された歴史あるレースで、総賞金は50万ポンド(約9000万円。1ポンド=180円で換算)。これはG1であるヨークシャーオークスやナンソープSと同額となっている(インターナショナルSは125万ポンド)。
競馬場は芝コースのみ。広々とした左回りの周回コース(1周3200メートル)に3本のシュートが伸びる形となっており、直線コースでは1200メートルまでのレースを行うことができる。最後の直線は約900メートルほど。以前は馬蹄型のコースだったが、2005年にロイヤルアスコット開催を代替開催する際に、馬蹄型の離れた部分を繋いで、周回コースへと造りかえられた。
走路は起伏が少なく平坦。直線も長く、枠順や脚質などによる有利不利は少ない。フェアで、実力が出やすい競馬場といわれている。
文:秋山 響(TPC)
(2024年8月現在)
インターナショナルS(G1・イギリス)が行われるヨーク競馬場の芝2050メートル(10ハロン56ヤード)は向正面からのスタート。その直後に緩やかではあるがコーナーを左に曲がり、550メートルほどまっすぐ走った後、今度は大きくコーナーを左に回って、最後の直線(約900メートル)に向いてゴールというのが大まかな流れになる。コースの起伏は小さく、たとえば同じイギリスのアスコット競馬場のようなタフなものではない。
ヨーク競馬場は一般的にゲート順や脚質などによる有利不利が少なく、フェアで、実力が出やすいといわれる。ただ、芝2050メートル戦については、上記のようにスタート後すぐに緩やかなコーナーを迎えるため、先行勢は内枠が理想だろう。スタートを決めることも肝要になる。
また最後の直線が長く、幅員も広いことから、馬場状態によっては内ラチ沿いではなく、馬場の真ん中から外ラチにかけて通る選択を取りやすいコースではあり、騎手の馬場状態の見極めを含む状況判断が重要になる。
コースレコードは2009年のインターナショナルSでシーザスターズが記録した2分05秒29。
文:秋山 響(TPC)
(2024年8月現在)