馬場の湿潤度合を表します。
最も水分が少なく乾燥している状態を「良」として、水分が多くなるに従って稍重、重、不良となります。
JRAでは、芝コース、ダートコースとも「良、稍重、重、不良」の4段階に区分されています。
芝コース
注記:横にスクロールすることができます。
(芝の種類)
注記:横にスクロールすることができます。
ダートコース
注記:横にスクロールすることができます。
馬場から採取した試料(芝コースは路盤砂、ダートコースはクッション砂)に含まれている水分の割合を重量を基準として百分率(%)で示されます。
例えば、含水率が15パーセントのときは、100グラムの試料に15グラムの水分が含まれていることとなります。数値が大きいほど湿っていることになります。
(1)試料を採取します。
芝コース(内柵から1メートル)
ダートコース(内柵から1メートル)
試料の採取箇所(図中の赤丸部分)
(2)芝コースは、試料から芝(根、葉、茎)を取り除き(写真下)、路盤砂だけで測定します。ダートコースは、試料をそのまま測定します。
(3)試料の含水率を赤外線水分計(写真下)という測定器にて計測します。
試料は180度に熱せられ(写真右下)、蒸発した水分量から含水率が測定されます。
競馬場の馬場状態区分は、広い馬場全体の状態をひとことで表現することとなります。
坂の上下や日当たりの違い等、場所によって含水率は異なるもので、含水率によって自動的に馬場状態区分が決まるわけではありません。また、芝については表面の含水率ではなく少し下層の水分状態を測定していることになります。
したがって、馬場状態区分の決定にあたっては、馬場担当者が実際に踏査(写真下)して下表を判断基準とし、総合的に判断することとなります。含水率はその際に参考とすることがあります。
なお、馬場状態の変化があった場合の対応として、複数の馬場担当者が各所で常時状況を確認し、速やかに馬場状態区分の変更が発表できるよう体制を整えています。
《馬場状態区分の判断基準》
注記:横にスクロールすることができます。
各競馬場の芝コース路盤に使用している砂は、競馬場によって異なります。
また、芝が生育するのに必要な水分や肥料成分を保持するためと、路盤のクッション性を維持するために、競馬場の気候風土等に合った土壌改良材を選定し、路盤砂と混合しています。
そのため、芝コースの含水率の数値は、競馬場によって大きく異なります。
参考までに、各競馬場の芝コース路盤の特徴と、路盤築造時に使用した材料等を紹介します。
1989年に築造。
北海道岩内産の山砂にバーク堆肥(スギの皮を原料とした堆肥)とピートモス(コケ類等を乾燥させたもの)を混合したもので、排水性(不良馬場になりにくい)を維持しつつ、芝の生育のために必要な適度な栄養と保肥力(芝が生育するために必要な肥料分を保持する機能)、保水性を持った路盤としています。
山砂(北海道岩内産)
バーク堆肥
ピートモス
1994年に築造。
北海道岩内産の山砂にピートモスを混合したもので、排水性を維持しつつ、芝の生育のために必要な適度な保肥力と保水性を持った路盤としています。
山砂(北海道岩内産)
ピートモス
1996年に築造。
青森県野辺地産の山砂にバーク堆肥を混合したもので、排水性を維持しつつ、芝の生育のために必要な適度な栄養と保肥力を持った路盤としています。
山砂(青森県野辺地産)
バーク堆肥
2000年に築造。
新潟県寺泊産の山砂にピートモスとゼオライト(無機系の土壌改良材)を混合したもので、排水性を維持しつつ、芝の生育のための環境改善を意識し、適度な栄養と保肥力、保水性を持った路盤としています。
山砂(新潟県寺泊産)
ピートモス
ゼオライト
2014年に築造。
千葉県君津産の山砂にバーク堆肥を混合したもので、排水性を維持しつつ、芝の生育のために必要な適度な栄養と保肥力を持った路盤としています。
山砂(千葉県君津産)
バーク堆肥
2003年に築造。
千葉県君津産の山砂に他の競馬場よりも多くのバーク堆肥を混合しており、そのため良馬場でも高めの含水率を示すが、良好な排水性と適度な栄養、保肥力を持った路盤としています。
山砂(千葉県君津産)
バーク堆肥
2011年に築造。
千葉県君津産の山砂にバーク堆肥を混合したもので、排水性を維持しつつ、芝の生育のために必要な適度な栄養と保肥力を持った路盤としています。
山砂(千葉県君津産)
バーク堆肥
1994年に築造。
京都府城陽産の山砂にピートモスを混合したもので、排水性を維持しつつ、芝の生育のために必要な適度な保肥力と保水性を持った路盤としています。
山砂(京都府城陽産)
ピートモス
2006年に築造。
青森県野辺地産の山砂に有機堆肥(木片を主原料とした堆肥)を混合したもので、排水性を維持しつつ、芝の生育のために必要な適度な栄養と保肥力を持った路盤としています。
山砂(青森県野辺地産)
有機堆肥
1998年に築造。
排水性を良くするため、砂粒が荒い福岡県西戸崎産の山砂にピートモスを混合したもので、排水性を維持しつつ、芝の生育のために必要な適度な保肥力と保水性を持った路盤としています。
山砂(福岡県西戸崎産)
ピートモス
各競馬場の芝コースは、使用している路盤の材料等が同一ではないため、含水率と馬場状態区分の関係性は競馬場によって違いがあります。
したがって、含水率が同じ数値でも、競馬場によって馬場状態区分との関係性は異なります。
一方、ダートコースについては、表層に使用しているクッション砂の性状に大きな違いはありませんので、含水率と馬場状態区分の関係は全競馬場で同じものとなります。
馬場状態区分は馬場全体の状態を総合的に判断するもので、測定された含水率で自動的に決めるものではありません。
下表は、競馬場ごとに、これまでの馬場状態区分と含水率のおおよその関係を整理したものです。
含水率を公表する際には、測定した数値と共に、この両者の関係性を表した早見表を公表します。
注記:横にスクロールすることができます。
芝コースの馬場状態と含水率の関係性 |
注記:横にスクロールすることができます。
ダートコースの馬場状態と含水率の関係性 |
注記:横にスクロールすることができます。
含水率早見表(含水率の測定値は早見表に合わせて記載されます) |
開催前日および当日に測定した含水率は、JRAホームページ馬場情報にて公表いたします。
発表時刻は開催日前日(金曜日)が昼過ぎ、開催当日は概ね9時30分頃を予定しています。
なお、ホームページに公表する含水率は、開催日早朝などに測定した数値を以下のような各競馬場の早見表と合わせて記載します。
注記:横にスクロールすることができます。
注記:横にスクロールすることができます。
馬場のクッション性を数値で表したものです。
競走馬が走行時に馬場に着地した際の反発力を数値化したもので、この数値が高いと馬場の反発力が高いといえます。
クッション値の測定には、ゴルフ場やサッカー場、ラグビー場などでも使用されている簡易型硬度測定器のクレッグハンマー(正式名称はクレッグインパクトソイルテスター)を使用します。
2.25キログラムの重りを45センチメートルの高さから自由落下させて馬場に衝突した際の衝撃加速度を測定します。
1箇所につき4回連続で重りを落下させ、その4回目の数値をその箇所の測定値とします。なお、この測定方法はクレッグハンマーを使用する際の一般的な方法です。
コースの内柵から2メートルと3メートルの間の場所をその地点の測定範囲とし、1地点につき5箇所測定を行い、その平均値をその地点のクッション値とします。
測定地点はゴール前と4コーナーおよびその間の各ハロン地点で、各地点の平均値をクッション値として公表します。
クッション値は馬場表層の含水率と密接な関係があり、含水率が高くなるほどクッション値は低くなる傾向があります。
クッション値と同様に馬場の状態を表す数値である含水率は、芝馬場路盤の芝の根より下の部分の水分状態を測定しています。
一方クッション値は芝の表面に重りを落下させた際の反発力を測定しており、芝の生育状況による影響も測定値に反映されます。含水率が芝馬場路盤のみの状態を表しているのに対し、クッション値は芝と路盤両方の状態を表します。
これらの特性からクッション値は同じ良馬場であっても、芝の含水率や芝の生育具合および路盤の締まり具合による影響を受けるため異なる値を示します。
クッション値は馬場表層のベースとなる芝草の種類によっても傾向が異なります。
札幌競馬場・函館競馬場で使用している洋芝3種混合(ケンタッキーブルーグラス、ペレニアルライグラス、トールフェスク)は地下部に細い根が密集したマット層を作るのが特徴で、このマット層がクッションとなり、また、保水量も多いことから、野芝の競馬場と比較し、クッション値は低くなる傾向があります。
本州以南の競馬場で使用している野芝(ノシバ)は地下部にほふく茎を持つことが特徴です。このほふく茎は地表付近を這うように広がり、競走馬の脚を支えるのに重要な役割を担っています。一方ほふく茎は洋芝のマット層にくらべ保水量が少なく、これらの特徴から野芝の競馬場のクッション値は洋芝馬場より高く出る傾向があります。
芝馬場の路盤は競走馬の走行や馬場管理作業車による踏圧により徐々に締め固められクッション性が失われていきます。そのため開催前にクッション性確保のための作業を行っています。代表的なものが「エアレーション」と「シャタリング」です。
「エアレーション」は芝馬場に小さな穴を一定間隔で開けて路盤の通気性を向上させるとともにクッション性を向上させる作業です。
「シャタリング」とは、ナタ状の回転刃で芝馬場に一定間隔で切り込みを入れていく作業で、さらに路盤を横方向に大きく揺さぶりほぐす効果もあり「エアレーション」以上に馬場のクッション性を高める効果があります。
JRAでは全ての競馬場で「エアレーション」と「シャタリング」を実施しクッション性の確保に努めています。
芝馬場のクッション値の基準は下表のとおりです。
芝馬場のクッション値 | 馬場表層のクッション性 | 馬場表層の水分状態 |
---|---|---|
12以上 | 硬め | |
10から12 | やや硬め | |
8から10 | 標準 | |
7から8 | やや軟らかめ | |
7以下 | 軟らかめ |
馬場表層の状態との関係性や舗装種類等の違いによる数値の参考表は以下の通りです。
舗装種類 | クッション値 | 用途等 |
---|---|---|
ダスト舗装 | 63 | 校庭 |
クレイ舗装 | 27 | 校庭 |
ゴムチップ舗装 | 22 | 陸上競技場 |
砂入り人工芝 | 52 | テニスコート |
人工芝 | 18 | 東京競馬場下見所 |
芝 | 10 | 野球場 |
芝 | 9 | サッカー場 |
ニューポリトラック | 7 | 美浦トレーニング・センター調教コース |
ウッドチップコース | 4 | 美浦トレーニング・センター調教コース |
畳 | 7 | |
体育マット | 5 |
開催前日および当日に測定したクッション値は、JRAホームページ馬場情報にて公表いたします。
公表時刻は開催前日(金曜日)が昼過ぎ、開催当日は概ね9時30分頃を予定しています。
なお、測定時刻は各競馬場の調教時間や天候等によって異なるため、公表値に並記します。