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競馬場・コース紹介

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ドーヴィル競馬場

フランス北西部のノルマンディー地方にあるドーヴィル競馬場は、フランスギャロの管轄する5つの競馬場の中の1つで、フランスの夏競馬の舞台として世界的に知られている。ドーヴィルの街は、パリからおよそ200キロメートル離れた位置にある海岸沿いの高級避暑地で、夏になると多くの人々がこぞってバカンスに訪れる。そのため“21区目のパリ”とも呼ばれる。

競馬場はパリ競馬界の避暑地のための施設としてナポレオン3世の異父弟に当たるモルニー公により建設され、1864年8月14日に初めて競馬が開催された。1991年の10月から秋にも数日間の開催が行われるようになり、その後2003年には芝コースの内側にオールウェザーコースが完成。2021年からはLEDライトを用いたナイター開催も可能となり、現在は年間を通じて開催が行われている。

とはいえ、ドーヴィル競馬の華はやはり夏であり、G1を含む主な重賞競走が行われるのも7月から8月の時期に限られる。ヨーロッパ中から優秀なサラブレッド、そしてトップジョッキーがやって来る夏の競馬は、実に華やかでパリの社交界が一斉に移動してきたような趣がある。日本のファンには1998年のモーリスドゲスト賞でシーキングザパールが日本調教馬の海外G1初勝利となるメモリアルVを挙げ、その翌週にタイキシャトルがジャックルマロワ賞で2週連続の凱歌を挙げたことも思い出深い。

現在開催されているG1レースは開催順にジャンプラ賞、ロートシルト賞、モーリスドゲスト賞、ジャックルマロワ賞、ジャンロマネ賞、モルニー賞の6つ。2018年から5着馬までに付与される総賞金が従来の70万ユーロから100万ユーロ(約1億3000万円。1ユーロ=130円で換算)に増額されたジャックルマロワ賞はドーヴィル競馬場における最大の競走で、真夏のヨーロッパ・マイルチャンピオンを決める最高峰の一戦だ。レース名はドーヴィル競馬協会初代会長のジャック・ル・マロワ伯爵にちなんでいる。

競馬場のコースは一周2200メートル、直線450メートルの右回り芝コースに、ジャックルマロワ賞の舞台となる1600メートルの直線コース、そして先述したファイバーサンド素材のオールウェザーコースがある。ドーヴィルには調教センターとしての役割もあり、内馬場には調教用のダートコースのトラックが併設されており、また本馬場も普段は追い切りのために開放されていて、2022年仏ダービー馬・ヴァデニなどを管理するジャン=クロード・ルジェ調教師が多くの馬房を借りてトップホースを仕上げていることは有名。競馬場とその周辺の厩舎には普段から計300頭ほどが入厩しているが、夏の時期にはさらに現地滞在する馬が加わり、その数は最大600頭にまで増えるそうだ。

土壌の豊かなノルマンディー北西地域はかつてノルマン種の馬の牧場があった背景から現在もフランス最大の馬産地であり、ドーヴィルはカラ競馬場があるアイルランドのキルデア、チャーチルダウンズ競馬場があるアメリカのレキシントンといった馬の街と姉妹都市の関係にある。

文:沢田 康文
(2022年8月現在)

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ドーヴィル競馬場芝1600メートル

ドーヴィル競馬場 コース図

ジャックルマロワ賞は直線競馬で、1600メートルの直線コースで行われる。馬場は平坦で、起伏はなく、競走馬にとって走りやすいコースだ。芝は弾力に富み素晴らしく、レースレコードは2013年にムーンライトクラウドが記録した1分33秒39で良馬場になれば高いスピード能力が要求される。ただ馬場が渋れば日本では考えられないほど時計がかかることも特徴で、不良馬場の1999年に勝利した歴史的名馬ドバイミレニアムの勝ち時計は1分44秒30だった。近年でも2014年に当時のヨーロッパ最強マイラーであるキングマンが1分41秒90で優勝している年もあり、洋芝のヨーロッパ競馬らしい傾向だ。

ジョッキーたちに話を聞くと、直線競馬はコーナーで膨れてしまう心配や馬群に包まれて進路がなくなるリスクなども低く乗りやすいコースという。レース序盤に息を入れリズム良く走ることが好走するための一つのポイントになる。周回競馬と比べ、枠順による有利・不利というのも少なく、各馬が各々の最大能力を発揮しやすい。馬場状態にもよるが、新潟の直線競馬と同じように、レースではスタンド寄りを走るのが一般的なレース展開だ。

3歳馬と古馬のトップホース同士の戦いとなることも毎年興味深いジャックルマロワ賞は、過去の優勝馬にミエスク、ゴルディコヴァといったヨーロッパ競馬史を代表する名マイラーが連なっている。

ドーヴィル競馬場で行われるG1は6つのうち5つがこの直線コースを用いた競走であり、真夏のマイルチャンピオンの座を決める最高峰のレースに相応しいフェアな舞台設定で、好レースが期待できる。

文:沢田 康文
(2022年8月現在)

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ドーヴィル競馬場 紹介動画(2018年制作)

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