菊花賞（GⅠ）が阪神競馬場で開催されるのは1979年以来、実に42年ぶりのこと。“阪神・芝3000メートルを舞台とした最後の一冠”は、タイトルホルダーの逃げで始まった。

弥生賞を逃げ切り、皐月賞も早め先頭から2着に粘ったタイトルホルダー。だが日本ダービーでは6着、秋初戦のセントライト記念では13着に敗れている。「真面目過ぎるところのある馬」とタイトルホルダーについて語るのは鞍上・横山武史騎手。「ただ、1頭で抜け出せればリラックスして走れる。だから無理してでもハナを切りたかった」と、勢いをつけて先頭を奪ったのだ。

神戸新聞杯3着のモンテディオ、2連勝中の牝馬ディヴァインラヴなど数頭が間隔を空けて追走。故障から復活した素質馬オーソクレース、皐月賞と日本ダービーで3着に追い込んだステラヴェローチェ、京都新聞杯勝ち馬レッドジェネシス、セントライト記念を差し切ったアサマノイタズラらは後方集団を形成する。

これらを従えて、さほどペースを落とさず淡々とラップを刻むタイトルホルダー。「馬にやる気がある。喧嘩してまでペースを落とすよりリズムを大切にした」という、人馬一体の逃走が続く。

3コーナー過ぎで差は詰まったものの、後続の手綱が激しく動いているのに対してタイトルホルダーは余裕たっぷり。悠々4コーナーを回り切ると、いざスパート、再び後ろを突き放す。結局、オーソクレース、ディヴァインラヴ、ステラヴェローチェらの追い比べを5馬身後方に見ながら、鮮やかな逃げ切りでGⅠ初制覇を果たしたのである。

「馬の力を信じてあげられなかった自分が恥ずかしい」と横山騎手。確かに、力の違いを見せつけるかのような圧勝劇だった。ただ、皐月賞馬エフフォーリアは天皇賞（秋）、日本ダービー馬シャフリヤールはジャパンカップへと向かい、この日は不在。タイトルホルダーは今後、世代ナンバー1の座を懸けた戦いに挑むこととなるだろう。

（谷川　善久）