馬と向き合い、仲間とつながる。
JRA総研サマースクールが果たす、
次世代育成の使命。

「馬の医療に特化したインターンシップがあるの?」そう驚く人もいるかもしれません。
馬の獣医療を学ぶ5日間の「JRA総研サマースクール」。それは単なる就職活動の枠を超え、
馬の命を守り、馬産業の未来を担う人材を育てるための活動です。
技術を次世代へつなぐJRAの使命を、若き参加者の体験談を通じてご紹介します。

animal-life
実習の様子

獣医学部のカリキュラム課題を解決するJRAのサマースクール

「JRA総研サマースクール」は、馬に関わる獣医師を志す学生を対象に、毎年8月に開催される5日間のインターンシッププログラムです。このプログラムには、感染症対策を深く学ぶ「感染症コース」と、診察や実務を体験する「臨床コース」の2種類が用意されています。

サマースクール発足の背景には、獣医療界が抱える構造的な課題がありました。
「大学の授業だけでは、馬のような大きな動物を診る実習はどうしても少ない・・・」という切実な声。それに応えるために、JRAは日本で唯一の競走馬専門の総合研究所を、学びの場として提供することを決めたのです。

「日本の馬医療を、もっと良くしていきたい。」
JRAの担当者は、そんな熱い使命感を胸に、獣医師を目指す若者を温かくサポートしています。

獣医学部のカリキュラム課題を解決するJRAのサマースクール

馬房の清掃から始まる、現場のリアル

実習は、馬と人とのコミュニケーションの大切さから学びます。毎朝、馬房の清掃から1日が始まり、引き馬や乗馬なども実施。治療技術以前に、「馬」という生き物の特性や適切な関わり合い方を理解することが重視されています。

現在、ばんえい競馬場内の診療所に勤務する林さんは、当時の経験をこう振り返ります。
「実習では馬獣医師に必要な知識・手技を学ぶ前に、まず馬に慣れることが徹底されました。人馬共に怪我無く診療をするためには馬との適切な距離感を保つことが重要だと考えています。常に馬の習性や個体の性格を意識するという臨床現場にも通じる姿勢を学ぶことができました。」

この5日間は、単なる知識の習得に留まりません。学生たちが「一人の学び手」から「プロフェッショナルの卵」へと意識を塗り替え、自らの将来を具体的に描き出す場となります。

馬房の掃除から始まる、現場のリアル 馬房の掃除から始まる、現場のリアル

研究と臨床をつなぐ最先端の学び

サマースクールの最大の特徴は「研究」と、日々の「臨床」が直結している現場を体感できる点にあります。

公益財団法人軽種馬育成調教センター(BTC)で働く植田さんは、実習で目にした「研究と臨床のサイクル」が、現在の自身の働き方の基盤になっていると話します。

「印象的だったのは、臨床現場で採取した菌を研究所で特定し、即座に治療薬の選択に活かす実習です。現場の課題を研究で解決し、研究の成果を現場に還元する。この循環こそが馬の命を守る術であることを、第一線の先生方の背中から学びました。」

また、林さんも「インターンシップで学んだ感染症発生時の対応やワクチン接種などの防疫の重要性は、そのまま今の現場での危機管理に直結している。」と語ります。

JRAが蓄積してきた知見を惜しみなく学生に共有することは、将来的に日本全国のどこで馬の病気が発生しても、適切に対処できる獣医師を育てることに他なりません。これは、畜産振興や動物福祉の向上に貢献するJRAの社会貢献のひとつの形なのです。

研究と臨床をつなぐ最先端の学び 研究と臨床をつなぐ最先端の学び

同じ志を持つ同世代との交流が生まれる

「JRAのインターンシップは、単なる採用活動ではありません。馬業界全体の未来を担う人材を増やすこと、それが目的です」と担当者は語ります。
サマースクールの大きな特徴の一つは、全国の獣医学部から集まる学生同士が、生活を共にしながら学び合えること。進みたい分野や関心のあるテーマは違っても、「馬を学びたい」という共通点が、すぐに打ち解けるきっかけになります。
林さんも当時の体験を振り返ります。
「参加者のみんなそれぞれで今までの馬とのふれあい経験や知識が違いました。でもみんなで目標や夢を語り合う中で、自分の夢とその実現への道がもっと具体的になった気がします。みんなさまざまな職に就きましたが、今でも連絡を取り合っていて、大事な仲間になっています。」

実際、参加者のなかには、競馬の世界だけでなく、大学の研究職や小動物臨床や牛や豚の獣医師の道に進む人もいます。しかし、このインターンシップでの体験が、今も彼らをつないでいる。JRAのサマースクールは「馬の医療」というひとつの入り口を通して、動物の命を支える人たちのつながりも作っていたのです。このつながりは、将来さまざまな現場で馬と向き合うときに支えとなり、“馬を救う”力を広く社会へ届けるための協働にもつながっていきます。

同じ志を持つ同世代との交流が生まれる

JRAという枠を超え日本中の馬の命と向き合う力になる

四半世紀続くこのサマースクールで学んだ学生たちは、JRAという枠を超えて日本各地の現場で活躍しています。

実際に、林さんや植田さんのように、ここで得た「防疫の意識」や「臨床の基礎」を携え、それぞれのフィールドで馬の命と向き合っている卒業生は少なくありません。

JRAが長年培ってきた技術や知見を、惜しみなく共有することは、馬に関わる「人」を絶やさず、日本全国で馬の病気に適切に対処できる土壌を整えるための未来への投資でもあります。

「馬業界全体を支える人材を育てる入口になる。」
5日間のスクールの先に広がるのは、競馬の枠を超え、馬と人が共生する日本の豊かな未来。

JRAはこれからも、実体験を通じた「獣医療界の学びの場」を提供し続けることで、“馬を守る医療の担い手”を全国に育て、獣医学の未来を支える社会貢献に取り組んでいきます。

JRAという枠を超え日本中の馬の命と向き合う力になる

取材にご協力いただいた方

林 真優さん

合同会社アテナ統合獣医ケア Ban'ei競走馬診療所 獣医師

林 真優さん
(2022年総研サマースクール感染症コース受講)

仕事の内容

帯広競馬場でばんえい競走馬を対象に、中獣医学も併用した統合獣医療を提供。日ごろのケア、疾病治療、レース前の調整だけでなく飼養衛生管理指導や調査研究など幅広く実施。

植田 咲喜さん

軽種馬育成調教センター(BTC)診療課診療係

植田 咲喜さん
(2023年総研サマースクール感染症コース受講)

仕事の内容

世界に通用する強い馬づくりのために、軽種馬育成調教センター(BTC)で1〜2歳の未来の競走馬である「育成馬」のかかりつけ医として、1次診療に従事。

表示モード: