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レース当日に香港島のビクトリアパークで大規模なデモが予定され、情勢に不安を残すなか、対岸の九龍にあるシャティン競馬場が舞台の香港国際競走は雲ひとつない青空の下、大きな混乱もなく無事に開催された。G1・4戦の初戦となるヴァーズ(VASE)で日本馬快進撃の口火を切ったのは、レース名と同じ名を持つグローリーヴェイズ(GLORY VASE)(牡4歳。美浦・尾関 知人厩舎)だった。
主導権を握ってペースメイクをしたのは前年の覇者エグザルタント。2番手の外に英ダービー馬アンソニーヴァンダイク、中団馬群にグローリーヴェイズが構え、ラッキーライラック(牝4歳。栗東・松永 幹夫厩舎)、ディアドラ(牝5歳。栗東・橋田 満厩舎)の牝馬2頭は後方で脚を温存した。 「ゲートを真っすぐに出すこと、道中でリラックスさせることを心がけました」とはグローリーヴェイズのJ.モレイラ騎手。
実戦での騎乗は初めてだったが、その言葉通り呼吸はぴたり。ただ、周囲を囲まれて動くに動けない状態。抜群の手応えでそのまま4コーナーを迎えると、最内にいたプリンスオブアランがコーナリングを利用してさらに内をすくったことでできたスペースに瞬時に入り込み、スパートをかけた。粘り込みを図るエグザルタントと追い上げるラッキーライラックの間を抜けると、一気に引き離してラッキーライラックに3馬身半差。GⅠ・2勝牝馬を置き去りにし、初のG1タイトルは圧勝で手にした。
3馬身半差をつけて優勝したグローリーヴェイズ
ファンの声援に応えるモレイラ騎手
ゴールの瞬間、右手を2度突き上げたモレイラ騎手が興奮気味に振り返る。
「いつでも行ける手応えで、スムーズに抜けることができました。最後に抜け出したときのスピードはめちゃくちゃすごかったですよ」
2016年のサトノクラウン以来、再び日本馬とのコンビでヴァーズを制したモレイラ騎手がパートナーをたたえれば、尾関調教師は鞍上にも賛辞を贈る。
「さすがモレイラ騎手ですね。抜けてきたところで勝ったと思いました。いいメンバーがそろっていましたが、素晴らしい騎乗で勝ってくれました。いつの間にかポジションを取っているあたりが“マジックマン”ですよね」
3コーナー手前から徐々に、そして馬に負担をかけることなく前との差を詰め、息の長い末脚を発揮させた名手の手腕にうなった。
ジョッキーの好騎乗もさることながら、国内の王道であるジャパンカップや有馬記念を見送って、ここ1本にターゲットを絞り、万全の状態に仕上げた陣営もたたえられるべきだろう。
「坂がないですし、2分22秒台とか極端に速い時計にならないですからね。ここが一番合うと思いましたし、1頭でも調教できる馬なので」
笑みを浮かべた尾関調教師は2015年のサクラゴスペル、2016年のレッドファルクス(いずれもスプリント12着)に続く3度目の挑戦で香港国際競走初V。過去に味わった悔しさを糧に変え、タイトルをつかんだ。
「もちろん馬によってそれぞれ違うと思うんですけど、過去のこうすれば良かったかなという経験を生かせたかなと思います。香港で3度目の正直です」
3度目の挑戦で香港国際競走初優勝となった尾関調教師(左)(表彰式)
口取りでのグローリーヴェイズとモレイラ騎手
日本屈指のオーナーブリーダーが残した、三冠牝馬メジロラモーヌと宝塚記念馬メジロライアンのひ孫。そして、7月30日にこの世を去った父ディープインパクトの血が海外であらためて存在感を示した。
「初めての遠征でしたが、牧場でも厩舎でもうまくケアしてくれて、今までで一番いい状態でした。このカテゴリーのチャンピオンになれたので、今度はより高いステージで結果を残してくれれば」
シルクレーシングの米本昌史代表は期待を膨らませる。
日本を代表する血脈がさらなる夢を追う。
文:橋本 樹理
初の海外遠征で2着と好走したラッキーライラック
今年一年海外挑戦を続けたディアドラは展開が向かず4着
1着 グローリーヴェイズ 尾関 知人 調教師のコメント
「このコースはこの馬に合っていると思い目標にしていました。前走は負けてしまいましたが、オーナーの後押しもありチャレンジできました。自分が携わった馬に勲章を与えることが自分の仕事であり、皆さんに祝福されて幸せです」
1着 グローリーヴェイズ J.モレイラ 騎手のコメント
「馬混みがタフな状況でしたが、馬はとてもリラックスしてレースをしていました。前が空いたら、素晴らしい反応を見せ、良い末脚を使ってくれました」
2着 ラッキーライラック 松永 幹夫 調教師のコメント
「最後は良い脚を使いましたが、前が残る形になりました。今日は勝馬が強かったですね。馬は初遠征ですが頑張ってくれました。次につながる良い競馬ができたのでまた頑張ります」
2着 ラッキーライラック C.スミヨン 騎手のコメント
「馬は良い競馬をしてくれましたが、今日は自分のより強い馬がいました」
4着 ディアドラ 橋田 満 調教師のコメント
「スローペースになるのは分かっていたので、もう少し前で競馬がしたかったですね。馬は良い状態でしたが今日のレース展開ではこれが精一杯だったと思います」
4着 ディアドラ O.マーフィー 騎手のコメント
「今日は馬がとても落ち着いていましたし、最後も伸びてくれました。ヨーロッパで戦ってきた馬たちに先着してくれました。ディアドラの末脚が素晴らしいのはわかっていたので、ラッキーライラックが上がっていったときにもあえてまだゴーサインは出しませんでした。今年一年、本当に頑張ってくれました。少し休んでまた来年頑張ってほしいです」
2019年12月8日(日) シャティン競馬場(香港) | ||
4R |
第26回 香港ヴァーズ(G1) |
3歳以上 定量 | 2400m 芝・右 | |||
賞金総額 | : | 20,000,000香港ドル | 発走 13:45 (現地時間) | |
1着賞金 | : | 11,400,000香港ドル | 芝:良 |
着順 | 馬番 (ゲート) |
馬 名 (生産国) | 性 齢 |
負 担 重 量 |
騎手 | タイム ・ 着差 |
馬 体 重 (kg) |
調教師 (調教国) | 単 勝 人 気 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 (07) | グローリーヴェイズ(JPN) | 牡4 | 57.0 | J.モレイラ | 2:24.77 | 446 | 尾関 知人(JPN) | 3 |
2 | 11 (01) | ラッキーライラック(JPN) | 牝4 | 55.5 | C.スミヨン | 3 1/2 | 507 | 松永 幹夫(JPN) | 2 |
3 | 1 (14) | エグザルタント(IRE) | せん5 | 57.0 | Z.パートン | 3 3/4 | 486 | A.クルーズ(HK) | 1 |
4 | 10 (02) | ディアドラ(JPN) | 牝5 | 55.5 | O.マーフィー | 4 1/4 | 506 | 橋田 満(JPN) | 4 |
5 | 6 (04) | コールドトゥザバー(IRE) | せん5 | 57.0 | M.ギュイヨン | 6 1/2 | 477 | P.ブラント(FR) | 10 |
6 | 9 (05) | ホーホーカーン(NZ) | 牡5 | 57.0 | C.ホー | 7 1/4 | 474 | D.ホール(HK) | 13 |
7 | 12 (06) | トゥルーセルフ(IRE) | 牝6 | 55.5 | K.マカヴォイ | 7 1/2 | 453 | W.マリンズ(IRE) | 14 |
8 | 4 (09) | サザンレジェンド(AUS) | せん7 | 57.0 | A.サナ | 10 1/2 | 531 | C.ファウンズ(HK) | 7 |
9 | 5 (10) | ヤングラスカル(FR) | せん4 | 57.0 | L.デットーリ | 12 1/4 | 463 | W.ハガス(GB) | 9 |
10 | 8 (03) | イーグルウェイ(AUS) | せん7 | 57.0 | J.マクドナルド | 12 3/4 | 489 | J.ムーア(HK) | 12 |
11 | 7 (08) | プリンスオブアラン(GB) | せん6 | 57.0 | M.ウォーカー | 13 3/4 | 456 | C.フェローズ(GB) | 8 |
12 | 13 (12) | アンソニーヴァンダイク(IRE) | 牡3 | 55.0 | R.ムーア | 14 1/4 | 469 | A.オブライエン(IRE) | 5 |
13 | 3 (11) | アスペター(FR) | せん4 | 57.0 | J.ワトソン | 14 3/4 | 427 | R.チャールトン(GB) | 6 |
14 | 14 (13) | マウントエベレスト(IRE) | 牡3 | 55.0 | W.ローダン | 18 1/2 | 469 | A.オブライエン(IRE) | 11 |
単勝 | 2 | 550円 | 3番人気 | 馬連 | 2-11 | 1,820円 | 8番人気 | 馬単 | 2-11 | 3,100円 | 12番人気 |
複勝 |
2 11 1 |
150円 160円 110円 |
2番人気 5番人気 1番人気 |
ワイド |
2-11 1-2 1-11 |
670円 330円 280円 |
9番人気 4番人気 2番人気 |
3連複 | 1-2-11 | 1,640円 | 6番人気 |
3連単 | 2-11-1 | 10,120円 | 35番人気 |