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直前のレース(香港ヴァーズ)でのグローリーヴェイズによる勝利の興奮がまだまだ残る中、香港国際競走の2つ目である香港スプリントのパドックに、出走予定馬が続々と姿を現した。
前々日にリトルジャイアントが、そして当日朝にオーストラリアのインハータイムが出走を取り消して12頭立て。
昨シーズン、G1で2勝を挙げ、香港の最優秀スプリンターの栄誉を獲得し、今シーズン初戦を3着として本番に駒を進めてくる。そんなビートザクロックは、普通に考えれば1番人気となっておかしくないはずが、現地のファンは単勝6.5倍の3番人気というオッズで評価した。
何しろ、香港のスプリント路線は層の高さ故か、絶対的な存在がしばらく不在で、新ヒーローの登場を渇望していた。そこへ、まだ3歳2か月余りのスピードスターが、この馬に乗るために鞍上が6週間に渡る減量を自身に課したというサイドストーリーとともに現れたのだから、ファンが地元オッズで1.5倍という驚異的な支持率で期待をかけてしまうのも無理はなかった。
それが面白くなかったのか、パドックの中でビートザクロックは、時折、ぶいんぶいんと音が聞こえるかのような勢いで尻尾を振り回していた。前には1番人気の14番エセロ、後ろには2番人気の2番ホットキングプローン。ゼッケン番号1番の3番人気はそのどちらとも大きく間隔を取って歩を進める。ビートザクロック自身1135ポンド(約515キログラム)と小さい馬ではないのだが、1250ポンド(約567キログラム)のエセロ、1231ポンド(約558キログラム)のホットキングプローンに挟まれる圧は避けたかったようだ。合図がかかって、J.モレイラ騎手が騎乗すると尻尾の振りも、すっと落ちついた。
ゲートが開いて、鞍上に気合をつけられながら飛び出したのがエセロ。直後にミスタースタニングが続いて、その後ろに内からホットキングプローン、ラタン、リージェンシーレジェンドが並んで追走。そこから1馬身後ろのグループの内からビートザクロック、アイヴィクトリー、フルオブビューティー、ダノンスマッシュ(牡4歳。栗東・安田 隆行厩舎)らが前を追った。
「ゲートが開いたときに、思っていたよりも後ろになってしまった」
レース後にモレイラ騎手が話すように、ビートザクロックは先団の好位置に取り付いて、直線で前をかわすという、そつのない競馬が身上。しかし、この日は普段よりも1列後ろからの競馬となった。
隊列はほぼ変わらないまま、最後の直線を向かえる。逃げるエセロとミスタースタニングの間が開いたところを狙って、ホットキングプローンが割って入る。じわじわとエセロとの差を詰めるその間、ミスタースタニングの外に切り替えて差を詰めてきたのがビートザクロックだ。エセロ、ホットキングプローン、ビートザクロックが横一線になっての攻防は、終いの勢いに勝ったビートザクロックに軍配が上がった。
直線鋭く伸びて優勝したビートザクロック
ヴァーズに続く連勝を飾ったモレイラ騎手
2着にホットキングプローン。前年、モレイラ騎手が騎乗して1番人気を裏切った(9着)馬だ。開催後、モレイラ騎手に、乗っていたことがあるからこそかわせる自信があったのか、と尋ねた。
「そんなことはありません。あの馬(ホットキングプローン)が強いことはよく知っていますので、こちらも必死でした」
3着にエセロ。残念ながら歴史は作られなかった。
「よく走っていますよ。また来年こそですね」
Z.パートン騎手は3歳馬をむしろ健闘したと称えた。
「正直なところ、まだベストではありませんでした。それでも、今日できるベストを出してくれました」
昨年モレイラ騎手が騎乗し9着に敗れたホットキングプローンが2着
1番人気に応えられなかったものの、来年の飛躍が期待される3着のエセロ
5頭出しでワンツーフィニッシュを飾ったJ.サイズ調教師が振り返る。2頭はともに、1月に行われるセンテナリースプリントC(G1・香港)に向かうという。日本の競馬ファンとして気になるのはその次だ。
「もちろん、世界レベルの短距離馬ですから、高松宮記念(GⅠ)というのもオプションには入っています」
「スプリント王国」香港の快速馬たちが紡ぐこれからの物語に目が離せない。
文:土屋 真光
表彰式で喜びの表情を見せるビートザクロック関係者
日本のダノンスマッシュは出遅れが響いて8着
8着 ダノンスマッシュ 安田 隆行 調教師のコメント
「スタートはタイミングですね。後手にまわってしまいました。道中は流れに乗っていると思って見ていましたが、残念でしたね」
8着 ダノンスマッシュ L.デットーリ 騎手のコメント
「スタートで跳び上がってしまいました。ポジションが後ろになってしまい残念です」
2019年12月8日(日) シャティン競馬場(香港) | ||
5R |
第21回 香港スプリント(G1) |
3歳以上 定量 | 1200m 芝・右 | |||
賞金総額 | : | 20,000,000香港ドル | 発走 14:25 (現地時間) | |
1着賞金 | : | 11,400,000香港ドル | 芝:良 |
着順 | 馬番 (ゲート) |
馬 名 (生産国) | 性 齢 |
負 担 重 量 |
騎手 | タイム ・ 着差 |
馬 体 重 (kg) |
調教師 (調教国) | 単 勝 人 気 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 1 (03) | ビートザクロック(AUS) | せん6 | 57.0 | J.モレイラ | 1:08.12 | 514 | J.サイズ(HK) | 2 |
2 | 4 (01) | ホットキングプローン(AUS) | せん5 | 57.0 | K.ティータン | クビ | 557 | J.サイズ(HK) | 4 |
3 | 14 (08) | エセロ(AUS) | せん3 | 53.0 | Z.パートン | クビ | 566 | J.ムーア(HK) | 1 |
4 | 3 (02) | ミスタースタニング(AUS) | せん7 | 57.0 | H.ボウマン | 3/4 | 503 | F.ロー(HK) | 5 |
5 | 11 (04) | フルオブビューティー(AUS) | せん5 | 57.0 | C.ホー | 1 1/4 | 522 | J.サイズ(HK) | 7 |
6 | 9 (07) | ウィッシュフルシンカー(AUS) | せん6 | 57.0 | C.スミヨン | 1 1/2 | 542 | R.ギブソン(HK) | 11 |
7 | 2 (11) | ディービーピン(NZ) | せん7 | 57.0 | R.ムーア | 2 | 530 | J.サイズ(HK) | 9 |
8 | 7 (06) | ダノンスマッシュ(JPN) | 牡4 | 57.0 | L.デットーリ | 2 1/2 | 474 | 安田 隆行(JPN) | 3 |
9 | 10 (12) | シーズンズブルーム(AUS) | せん7 | 57.0 | G.ファンニーカーク | 3 1/4 | 476 | C.シャム(HK) | 6 |
10 | 5 (05) | ラタン(NZ) | せん6 | 57.0 | C.スコフィールド | 3 3/4 | 521 | R.ギブソン(HK) | 8 |
11 | 8 (09) | アイヴィクトリー(AUS) | せん6 | 57.0 | A.サナ | 5 | 490 | J.サイズ(HK) | 12 |
12 | 12 (10) | リージェンシーレジェンド(NZ) | せん4 | 57.0 | S.デソウサ | 6 1/2 | 506 | C.シャム(HK) | 10 |
取消 | 6 | リトルジャイアント(NZ) | せん7 | 57.0 | J.マクドナルド | D.ホール(HK) | |||
取消 | 13 | インハータイム(AUS) | 牝7 | 55.5 | B.アヴドゥラ | 501 | K.リース(AUS) |
単勝 | 1 | 420円 | 2番人気 | 馬連 | 1-4 | 950円 | 4番人気 | 馬単 | 1-4 | 1,690円 | 6番人気 |
複勝 |
1 4 14 |
120円 170円 110円 |
2番人気 4番人気 1番人気 |
ワイド |
1-4 1-14 4-14 |
310円 170円 260円 |
4番人気 1番人気 3番人気 |
3連複 | 1-4-14 | 670円 | 1番人気 |
3連単 | 1-4-14 | 4,540円 | 8番人気 |
返還馬番 | 13番 |