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2005年に初めてオーストラリアのスプリングカーニヴァルを取材したのを皮切りに、筆者はたびたびこの季節のダウンアンダー(オーストラリア)を訪れている。今年は7年連続での現地入り。コーフィールドCの10日前にメルボルン入りしたが、暖かいと感じたのは1日だけ。これほど寒い日ばかりなのは、過去に記憶がない。コーフィールドC当日も気温は14度までしか上がらず、しかも風が強かったため体感温度はかなり低く感じられた。
天候も不安定だった。早朝には小雨がパラつく場面もあったが陽光の射す時間帯もあって馬場は少し回復。2レースまではGood4も、3レースからはGood3。しかし、コーフィールドCの2レース前の時点で激しい雨が降り、それが上がったのも束の間、コーフィールドCのレース中にはまた雨粒が落ちて来た。
今年はニューヨークをモチーフにしたコーフィールド競馬場で、
アルコールが入り盛り上がる観客
不安定な天候の中、レース直前に吉兆の虹が架かったコーフィールド競馬場
日本馬メールドグラース(牡4歳。栗東・清水久詞厩舎)は18頭立ての17番枠からのスタート。同馬を始め有力各馬が外枠に入り、波乱を予想する声も囁かれたが、データ的にはあまり枠の内外は気にしないでよいレース。しかし、今年一点だけ違ったのは、直前の開催で内から10メートルの仮柵が使用された点。今年は内枠が有利になるかと思われる中、メールドグラースは互角のスタート。昨年は発馬前に1頭がゲートから飛び出しスタートをやり直したが、今年はゲートの中でチャカついたミスタークイッキーが出遅れたのが目立ったくらい。残る各馬はほぼ一斉にスタートを切った。
左回りで一周2080メートルの舞台。正面スタンド前を通過し最初のコーナーに差し掛かる頃には日本産馬で3日前に出走権を得たウォルフが先頭に。2番手にエンジェルオブトゥルースとハートネル。その外から掛かり気味にフィンシュが上がり、さらにミラージュダンサーらが一団。メールドグラースは無理せず後方から2番手まで下がって最初のコーナーをカーブ。同馬の手綱をとったD.レーン騎手はレース後に「1ハロン過ぎに流れが速くなったので無理をせず控えた」と語るのだが、実際に1ハロン目が13秒8(発馬と同時に計測)だったのに対し2ハロン目は11秒43と急激に速いラップを刻んでいた。
最初のコーナーをカーブして、先頭はウォルフ。2番手にハートネル。フィンシュ、ミラージュダンサーあたりが5から6番手にいたが外からブリムハムロックスとロストロポーヴィチが行きたがるようにかわしていく。中団の馬群の中にコンスタンティノープルがいて、ヴァウアンドディクレアは後ろから4頭目。メールドグラースは相変わらず後方2番手でおむすび型の頂点をカーブする。
最終コーナーへ向かうまでの直線。先頭ウォルフは変わらないが後方にいたヴァウアンドディクレアやメールドグラースらが前との差を詰め、馬群がグッと縮まる。
最大で6%のバンクがある最終コーナーは馬群が横に広がり、内からウォルフ、ロストロポーヴィチ、ブリムハムロックス、フィンシュら。外にはヴァウアンドディクレアが進出しており、そのさらに外がメールドグラース。一列後ろにミラージュダンサー、レッドヴァードン、コンスタンティノープルという形で直線へ向く。
先頭はまだウォルフで、馬群の真ん中からフィンシュが捕らえにかかるが、全く違う脚色で外から伸びて来たのがメールドグラース。この時、内へ切れ込みながら上がってきたためまずヴァウアンドディクレアが押圧され、その後も内へササりながらラスト200メートルでは玉突き的にサウンドやレッドヴァードンにも不利を与えてしまう。
1周目のスタンド前、ポジションを伺うメールドグラースのレーン騎手
(左から2頭目の赤帽)
最後の直線、早めに抜け出すメールドグラース
この時点でウォルフをかわしてフィンシュが抜け出しにかかっていたが、外からアッという間にメールドグラースが迫ると、一気に先頭に。これに迫る脚色の馬はなく、早々に勝負がついた感。レースの焦点は完全に2着争いに絞られた。
粘ろうとするフィンシュの外から併せ馬のようになって伸びて来たのがヴァウアンドディクレアとミラージュダンサー。この2頭がウォルフをかわし、さらに大外から一度は万事休すと思えたコンスタンティノープルが驚異の巻き返しをみせ馬体を並べた。しかし、この時すでに抜け出していたのがメールドグラース。最終的に2着に上がるヴァウアンドディクレアに1馬身の差をつけ、真っ先にゴールに飛び込んだ。2着はヴァウアンドディクレアで0.2馬身差3着がミラージュダンサー。さらに0.2馬身差の4着がコンスタンティノープル。早め先頭から捕まったフィンシュはさらにもう0.2馬身遅れた5着。
2014年のアドマイヤラクティ以来となる日本調教馬による優勝を飾ったメールドグラースの勝ち時計は2分30秒16だった。
同馬は4日前の火曜日にコーフィールド競馬場でスクーリングを兼ねて追い切った。その時のラスト2ハロンは25秒85。この日、現場で追い切られた17頭の中では最も遅い時計で、ライグラスを中心とした芝生が合わないのか?!と心配する声もあったが、結果を残すことでそんな雑音も封印した。
日本調教馬として2頭目の優勝を飾った
メールドグラース
メールドグラースを優勝に導いたレーン騎手
メールドグラース陣営(口取り式)
戦前から「8着以内なら次走にメルボルンCを考えたい」と語っていた清水師。見事に優勝した事で、大一番へ向かう公算はかなり大きくなった。南半球最大のレースは3200メートル。さらなる距離の克服が鍵になるが、この日のパフォーマンスを見る限り、こなしてもおかしくなさそうだ。
騎乗したレーン騎手はラスト200メートル地点での斜行と最終レースでも他馬に不利を与える騎乗をしてしまったため、10開催(1日に騎乗可能な2場での開催がある場合、その日は2開催分としてカウントされる)の騎乗停止処分。長い裁決を終えて同騎手が我々報道陣の前に姿を現したのは最終レースが終わってから2時間近く経とうとしていた午後7時40分過ぎ。「ソラを使ったわけではないけど、少し集中力を欠いてしまったかも……」と小首を傾げながら振り絞るように語った。ちなみにこの処分はコックスプレート後の26日深夜から効力を発揮。同レースで騎乗を予定しているリスグラシューとは問題なくコンビを組めるし、メルボルンCへの参戦も現時点では可能である。
文:平松 さとし
1着 メールドグラース 清水 久詞 調教師のコメント
「今回の遠征は初めての飛行機でしたし、環境もガラッと変わったので、レース前は心配していましたが、馬がよく耐えて頑張ってくれました。今日の乗り方はジョッキーに任せていましたが、直線に向いたとき完全に射程圏内に入れていたので完璧な騎乗でした。次走としては、行くならメルボルンカップになると思いますが、馬の状態を最優先にしっかりとケアして、オーナーサイドと相談したいと思います。」
1着 メールドグラース D.レーン 騎手のコメント
「スタートはそこそこ良かったのですが、他の馬のペースが早かったので、無理にポジションを取りに行くのではなく後方に控えることにしました。道中は行きたがる場面もあり完全に折り合うことは出来ませんでしたが、常に良い手応えでした。思っていたより早めに先頭に立ってしまいましたが、直線の伸び脚は良かったです。」
2019年10月19日(土) コーフィールド競馬場(オーストラリア) | ||
9R |
第142回 コーフィールドカップ(G1) |
3歳以上 ハンデキャップ | 2400m 芝・左 | |||
賞金総額 | : | 5,000,000豪ドル | 発走 17:15 (現地時間) | |
1着賞金 | : | 3,000,000豪ドル | 芝:良 |
着順 | 馬番 (ゲート) |
馬 名 (生産国) | 性 齢 |
負 担 重 量 |
騎手 | タイム ・ 着差 |
馬 体 重 (kg) |
調教師 (調教国) | 単 勝 人 気 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 3 (17) | メールドグラース(JPN) | 牡4 | 55.5 | D.レーン | 2:30.16 | 清水 久詞(JPN) | 1 | |
2 | 14 (07) | ヴァウアンドディクレア(AUS) | せん4 | 52.5 | C.ウィリアムズ | 1 | D.オブライエン(AUS) | 4 | |
3 | 2 (09) | ミラージュダンサー(GB) | 牡5 | 56.0 | B.メルハム | 1.2 | T.バスティン&N.ヤング(AUS) | 7 | |
4 | 11 (05) | コンスタンティノープル(IRE) | 牡3 | 53.0 | L.ノレン | 1.4 | D&Bヘイズ&T.デイバーニッグ(AUS) | 2 | |
5 | 6 (15) | フィンシュ(GB) | せん5 | 54.5 | M.ウォーカー | 1.6 | C.ウォーラー(AUS) | 3 | |
6 | 4 (12) | ムスタジアー(GB) | せん6 | 55.5 | D.オリヴァー | 1.8 | K.リース(AUS) | 8 | |
7 | 1 (13) | ハートネル(GB) | せん8 | 58.0 | B.ローウィラー | 3.05 | J.カミングス(AUS) | 6 | |
8 | 8 (11) | レッドヴァードン(USA) | せん6 | 54.5 | P.コスグレイヴ | 3.8 | E.ダンロップ(GB) | 16 | |
9 | 16 (18) | ザチョーズンワン(NZ) | 牡4 | 52.0 | S.バスター | 3.9 | M.ベイカー&A.フォースマン(NZ) | 9 | |
10 | 19 (06) | サウンド(GER) | 牡6 | 54.0 | J.ウィンクス | 4 | M.モロニー(AUS) | 18 | |
11 | 12 (08) | ミスタークイッキー(AUS) | せん4 | 53.0 | J.アレン | 4.2 | P.ストークス(AUS) | 5 | |
12 | 7 (02) | ゴールドマウント(GB) | せん6 | 54.5 | M.デュプレシス | 4.4 | I.ウィリアムズ(GB) | 11 | |
13 | 18 (03) | ウォルフ(JPN) | せん4 | 50.0 | B.マーテンズ | 5.4 | G.ウォーターハウス&A.ボット(AUS) | 10 | |
14 | 15 (16) | ブリムハムロックス(GB) | せん5 | 52.0 | M.ディー | 5.5 | C.ウォーラー(AUS) | 13 | |
15 | 9 (10) | エンジェルオブトゥルース(AUS) | せん4 | 54.0 | D.イェンダル | 5.6 | G.マークウェル(AUS) | 12 | |
16 | 5 (14) | ロストロポーヴィチ(IRE) | せん4 | 55.5 | D.ダン | 7.1 | D&Bヘイズ&T.デイバーニッグ(AUS) | 14 | |
17 | 17 (04) | クオフィラ(AUS) | 牝4 | 51.5 | C.パリッシュ | 7.5 | D&Bヘイズ&T.デイバーニッグ(AUS) | 17 | |
18 | 10 (01) | ビッグデューク(IRE) | せん7 | 54.0 | B.プレブル | 99 | K.リース(AUS) | 15 | |
取消 | 13 | クラウンプロセキューター(AUS) | せん4 | 52.5 | C.グリルス | S.マーシュ(NZ) | |||
取消 | 20 | ヌフボスク(FR) | せん4 | 54.0 | J.マクニール | D&Bヘイズ&T.デイバーニッグ(AUS) | |||
取消 | 21 | トゥルーセルフ(IRE) | 牝6 | 52.0 | D.ベイツ | W.マリンズ(IRE) | |||
取消 | 22 | プリンスオブアラン(GB) | せん6 | 53.5 | J.カー | C.フェローズ(GB) |
単勝 | 3 | 280円 | 1番人気 | 馬連 | 3-14 | 1,880円 | 5番人気 | 馬単 | 3-14 | 2,420円 | 3番人気 |
複勝 |
3 14 2 |
150円 220円 400円 |
1番人気 4番人気 7番人気 |
ワイド |
3-14 2-3 2-14 |
640円 1,050円 1,400円 |
4番人気 12番人気 15番人気 |
3連複 | 2-3-14 | 6,960円 | 18番人気 |
3連単 | 3-14-2 | 26,200円 | 56番人気 |
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