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この1週間で最高の好天に恵まれた6月8日(現地)のベルモントパーク競馬場。ベルモントSを筆頭に8つのG1が組まれ、立錐の余地がないほどにファンで溢れかえっていた。この日のダートコースは超のつく高速馬場で、第7レースの3歳牝馬のエイコーンS(G1)ではレースレコードが叩き出され、サンダースノーらが出走した古馬のメトロポリタンハンデ(G1)も1マイルの勝ちタイムが1分32秒台と、日本のダートでは到底考えられない決着が続き、そして、いずれのレースでも差し、追い込み馬が台頭して、逃げた馬は苦戦という傾向が続いていた。
ライザ・ミネリが同名映画の劇中で唄い、フランク・シナトラがカバーした「ニューヨークニューヨーク」が場内に響き渡る中での本馬場入場。マスターフェンサー(牡3歳。栗東・角田晃一厩舎)の吉澤克己オーナーは「馬は最高(のデキ)だよ」と、笑顔で愛馬の馬場入りを見送る。一代で吉澤ステーブルを築き上げた人物の言葉は、単なる身内贔屓ではないことを感じさせた。
パドックを回るマスターフェンサー
勝利を目指して10頭がスタート
少しオレンジがかり始めた空の下、西日を背にして、スタンド前で各馬が枠に収まる。最後に大外枠のタシトゥスが入ると、大歓声の中、ゲートが開かれた。
大きな出遅れもなく、各馬が1コーナーに向かう中、まず最内からジョービアが先手を主張。直後からタックス、スピンオフ、ウォーオブウィルが続く。マスターフェンサーとバーボンウォーは控え気味。すると、ここでぽっかりと空いた中団を抜けるように、7番枠からサーウィンストンが内ラチ沿いにスッと馬体を潜り込ませる。1番人気のタシトゥスはその少し前の外から続いた。
前半の1200メートルは隊列に変化がないまま、1分13秒54で通過。この日の馬場状態を考えれば、明らかにスローペースだ。そして、3コーナーに入ると馬群に変化が出る。4番手の内を追走していたエバーファストが、ほんの少し膨れ気味になる。その隙を見逃さなかったのが、直後にいたサーウィンストンのJ.ロザリオ騎手だった。
「全てが考えていた中のベストで進められました」
レース後にそう話したロザリオ騎手は、一瞬空いた進路にすっとサーウィンストンを促す。勝負どころで馬群全体もペースアップし、外を回ったウォーオブウィルや、タシトゥス、後方のマスターフェンサーの鞍上の手は大きく動くが、サーウィンストンは最短コースを通ることでじっくりを機を窺う余裕があった。M.キャシー調教師はその攻防を振り返る。
「実のところ、前にいたウォーオブウィルの手応えが悪くなってから、(同厩舎の)サーウィンストンがどこにいるのか探しました。そうしたら、絶好の位置にいつのまにかいたので、思わずニヤけてしまいました」
直線に向くと、再び一瞬の進路取りで外に出すと、粘るジョービア、タックスをあっさりと交わす。外からタシトゥスも懸命に追うが、コーナリングの差が大きく万事休す。マスターフェンサーも追い込んだが5着まで。最後の一冠は、ここまでの二冠に不出走だったサーウィンストンに輝いた。
JRAのオッズでは8番人気のサーウィンストン(右)が優勝
トロフィーを掲げるロザリオ騎手
レース後の会見で、キャシー調教師は、アシスタントのJ.ベッグ氏を伴って現れ、殊勲として彼を称えた。
「昨年、厩舎の2歳馬の中でも正直なところ、上位20位に入るかどうかの馬でした。そこでこの馬をより鍛えていく中で、ジェイミー(・ベッグ氏)の存在が大きかったです。特に、ベルモントに移動してから、ピーターパンS(G3)、今回と使っていく過程で素晴らしい仕事をしてくれました」
ウォーオブウィルのプリークネスSと変則で二冠を制したキャシー調教師は次の目標を話す。
「今年の3歳で現状で一番強いのはマキシマムセキュリティであることに異論はありません。サラトガに移動して、ジムダンディS(G2)からトラヴァーズS(G1)を考えていますが、どこかで彼と戦わねばならないでしょう」
こうして、新たなライバル譜の始まりとともに、2019年のアメリカ3歳三冠は幕を閉じた。
文:土屋 真光
キャシー調教師(左)とベッグ氏(右)
熱戦が終わり、日が沈む行くベルモント競馬場
5着 マスターフェンサー 角田 晃一 調教師のコメント
「スタートは上手に決まりました。ペースが落ち着いたので楽に追走出来ましたが、3コーナーからペースが上がった際についていけなかったようです。こういう展開も競馬なので仕方ないですが、『マスターフェンサー』チーム一丸となって1着を目指していたので悔しい思いがあります。ですが、マスターフェンサーは一生懸命走ってくれました。今後の予定は馬の様子を見て決めたいと思います。」
5着 マスターフェンサー J.ルパルー 騎手のコメント
「馬は非常に良い状態で、良いレースをしたと思います。スローペースだったこともあり、3コーナーで馬を押していこうとしたのですが、ペースが上がった際に少し置かれてしまいました。最後の直線では非常に良い脚を使ってくれました。」
直線で鋭く追い上げたマスターフェンサ―(左)は5着
馬房のマスターフェンサー
2019年6月8日(土) ベルモントパーク競馬場(アメリカ) | ||
11R |
第151回 ベルモントステークス(G1) |
3歳 定量 | 2400m ダート・左 | |||
賞金総額 | : | 1,500,000米ドル | 発走 18:37 (現地時間) | |
1着賞金 | : | 800,000米ドル | 天候:晴 ダート:良 |
着順 | 馬番 (ゲート) |
馬 名 (生産国) | 性 齢 |
負 担 重 量 |
騎手 | タイム ・ 着差 |
馬 体 重 (kg) |
調教師 (調教国) | 単 勝 人 気 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 7 (07) | サーウィンストン(USA) | 牡3 | 57.0 | J.ロザリオ | 2:28.30 | M.キャシー(USA) | 8 | |
2 | 10 (10) | タシトゥス(USA) | 牡3 | 57.0 | J.オルティス | 1 | W.モット(USA) | 1 | |
3 | 1 (01) | ジョービア(USA) | 牡3 | 57.0 | J.レスカーノ | 3/4 | G.サッコ(USA) | 10 | |
4 | 4 (04) | タックス(USA) | せん3 | 57.0 | I.オルティスJr. | 1 | D.ガーガン(USA) | 5 | |
5 | 3 (03) | マスターフェンサー(JPN) | 牡3 | 57.0 | J.ルパルー | アタマ | 角田 晃一(JPN) | 4 | |
6 | 6 (06) | スピンオフ(USA) | 牡3 | 57.0 | J.カステリャーノ | クビ | T.プレッチャー(USA) | 6 | |
7 | 2 (02) | エバーファスト(USA) | 牡3 | 57.0 | L.サエス | ハナ | D.ローマンズ(USA) | 9 | |
8 | 8 (08) | イントレピッドハート(USA) | 牡3 | 57.0 | J.ヴェラスケス | 1 3/4 | T.プレッチャー(USA) | 3 | |
9 | 9 (09) | ウォーオブウィル(USA) | 牡3 | 57.0 | T.ガファリオン | 2 1/4 | M.キャシー(USA) | 2 | |
10 | 5 (05) | バーボンウォー(USA) | 牡3 | 57.0 | M.スミス | 4 3/4 | M.ヘニグ(USA) | 7 |
単勝 | 7 | 1,810円 | 8番人気 | 馬連 | 7-10 | 2,590円 | 10番人気 | 馬単 | 7-10 | 7,220円 | 28番人気 |
複勝 |
7 10 1 |
400円 110円 1,160円 |
7番人気 1番人気 10番人気 |
ワイド |
7-10 1-7 1-10 |
840円 9,510円 2,690円 |
8番人気 44番人気 32番人気 |
3連複 | 1-7-10 | 33,430円 | 83番人気 |
3連単 | 7-10-1 | 222,400円 | 473番人気 |
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