海外競馬発売

クイーンエリザベスⅡ世カップ(G1)

シャティン競馬場 2000メートル(芝)3歳以上

  • 発売開始時刻日本時間4月29日(祝日・日曜)午前7時00分

  • 発走予定時刻日本時間4月29日(祝日・日曜)午後5時40分

レース結果・回顧

香港馬パキスタンスターが先行策からG1初制覇

とにかく“事件”の相次いだ、今年のクイーンエリザベスⅡ世カップ(G1)。レース前日もそれは続き、パキスタンスター(せん5歳)に騎乗予定だったケリン・マカヴォイ騎手が、耳の感染症のためオーストラリアからの渡航をキャンセルした。再度の騎手変更で白羽の矢が立ったのは、チェアマンズスプリントプライズ(G1)のブルーポイントに騎乗するために香港に来る予定となっているウィリアム・ビュイック騎手。本人によれば、依頼の連絡を受けたのは代理人で、当の本人はすでに香港に向かう機中の人だったという。

直前に行われた2つのG1レース(チャンピオンズマイル、チェアマンズスプリントプライズ)を、ともにザカリー・パートン騎手が勝利したことで、パドック周回開始時点ではタイムワープ(せん5歳)が現地オッズで2倍を切る支持を集めた。
まずパドックに姿を現したのはゴールドマウント(せん5歳)で、それを追うようにタイムワープ、パキスタンスターと続いて、トニー・クルーズ厩舎の3頭がパドックをジャックした。その後に入ったアルアイン(牡4歳、栗東・池江泰寿厩舎)は、タイムワープとあまり距離を置かずに周回、ダンビュライト(牡4歳、栗東・音無秀孝厩舎)は2人引きながら落ち着いた様子を見せていた。ベストターンドアウト賞にはアルアインの陣営が選出された。

  • アルアイン

  • ダンビュライト

本馬場へは馬番どおりで、パキスタンスター、ピンハイスター(せん4歳)、ディノーゾ(せん5歳)がリードホースを伴っての入場。各馬が常歩で4コーナーからの引き込みのシュートコース上にある待機場所へと向かう中、イーグルウェイ(せん5歳)だけが入念に速歩で往復していた。また、パキスタンスターは輪乗りの直前までリードホースを伴っていた。

枠入りはイーグルウェイから始まり、最後のピンハイスターまで滞ることなく、すんなりと納まる。
ゲートが開いて、ロケットスタートを決めたのは、予想に反して最内のパキスタンスターで、イーグルウェイ、ダンビュライト、タイムワープも行き脚がいい。スピードに乗ったタイムワープが外から先手を取ろうとするも、ダンビュライトがなかなか譲らず、2頭が並ぶように1コーナーへと入っていった。その後に、ポジションを上げてきたアルアイン、内にパキスタンスター、その後ろに1馬身半間隔でイーグルウェイ、ディノーゾと同じ勝負服が続き、ここから3馬身開いてピンハイスター、さらに3馬身ほど開いてゴールドマウントが続いた。

向正面に入ると、徐々に馬群は凝縮。ペースでいえば、タイムワープにとってはレコード勝ちした同距離の香港ゴールドカップ(G1)よりもゆっくりとしたものだった。しかし、道中は常にダンビュライトにマークされ、3コーナーに入ると外にぴったりと張り付かれたこともあって決して楽な展開ではなかったようだ。残り600メートル付近ではさらにアルアインも外から迫って、4コーナーへと向かう。

この時点で、最内で隙を狙っていたのがパキスタンスターだった。ビュイック騎手に促されながら、直線に向いたところでタイムワープとダンビュライトの間がぱっくりと開いたのを見逃さない。残り300メートル地点付近で一気に抜け出し、あっという間に後続を突き放す。香港競馬においてカルト的な人気を集める馬が一気に抜けてきたところで、場内の歓声がひときわ大きくなる。パキスタンスターが抜けた後を追ったのが、ゴールドマウントとイーグルウェイで、逆に外を回ったのがピンハイスター。この時点でタイムワープはギブアップし、ダンビュライトアルアインもすでに余力はなかった。
そのまま、パキスタンスターが2着以下に3馬身差をつけてフィニッシュ。最後まで伸びたゴールドマウントが2着、イーグルウェイが3着となり、ピンハイスターは4着に終わった。この日のシャティンは内を通った馬が強く、2から4着争いは直線でのコース取りが大きく影響した形となった。

  • 内からパキスタンスターが抜け出す

  • パキスタンスターはこれがG1初制覇

戦前の予想を大きく覆した形でのワン・ツーフィニッシュとなったクルーズ調教師。まず、殊勲の2着となったゴールドマウントのアルベルト・サナ騎手を熱い抱擁で出迎える。「自分の形に徹した結果だけど頑張ってくれた。この競馬しかできないからね」とサナ騎手。続いて、大歓声の中引き上げてくるパキスタンスターを、ピースサインの両手を大きく掲げながら出迎えると、脱鞍後もパキスタンスターとともにカメラマンたちにポーズを取っていた。

パキスタンスターは3度目の挑戦で待望のG1初制覇。香港ではG1クラスのレースである4歳三冠も含めれば6度目の挑戦であった。類まれなる能力を持ちながら、出遅れ、競走拒否など気性面がその出世を妨げてきた。4歳三冠ではラッパードラゴンの後塵を拝していたが、そのラッパードラゴンがターフに散ってちょうど1年(2017年のチャンピオンズマイルで競走中に故障を発症し、その後死亡)、好敵手への手向けの勝利となった。
追い込みのイメージが強い同馬だが、過去のレースで筆者個人的に最も強さを感じたのが、昨年のこのレース。勝ち馬(ネオリアリズム)のトリッキーな立ち回りの前に2着に敗れてはいるが、まさに今回と同じくスタートを決めて、序盤はインの3番手、4コーナーでは仕掛けを我慢して、直線でズドンという競馬だった。しかも、気性面の爆弾もこのときは起爆しなかった。今回敗れた各馬たちも、道中の位置取りなどはプラン通りだったはず。しかし、ライバルのレースプランが完璧であればあるほど、この馬にとって有利になる状況がそろうこととなっていたと分析する。

  • 抱擁を交わすクルーズ調教師と2着のサナ騎手

  • パキスタンスター陣営

「香港にこんなサプライズプレゼントが用意されているとは思いませんでした」
急遽、いわば“代打の代打”で騎乗しながらも、見事に結果を出したビュイック騎手は振り返った。
「彼はとても有名な馬なので、もちろん彼のことは知っていましたし、騎乗依頼を受けてから改めてしっかりと彼の情報もチェックしました。同時に、彼に対しては先入観なくフレッシュな、そして前向きな気持ちで騎乗することが重要だとも思いました。トニー(クルーズ調教師)にも、子供を相手にするような気持ちで、彼の走る気持ちを損なわないように接して欲しいと言われました」
実はクルーズ調教師からの指示はこれだけだったのだという。もちろん時間も限られていたこともあっただろうが、試行錯誤の末に導かれた結論だったのではないだろうか。
「でも、心配していたようなことは、彼から何ひとつされませんでしたよ。そして素晴らしい走りを見せてくれました。彼は間違いなくワールドクラスの2000メートルのランナーです」
そうビュイック騎手は話すと足早に競馬場を去っていった。もう帰国便に乗るために空港に向かわないといけなかったらしい。

「まったく、この馬にはまた驚かされました。でも、これで彼の能力が証明できたと思います」
クルーズ調教師は会心の表情で答えると、逆に取材陣を驚かせるプランを発表した。
「今日の走り、そして今シーズンはまだ4回しか走っていないことから、チャンピオンズ&チャターカップ(G1、芝2400メートル、5月27日)のあとにロイヤルアスコットにも挑戦することを考えています」

前走での競走拒否によって出走停止の間際に追い込まれ、さらに度重なった直前の騎手変更など、相次いだ“事件”について自ら幕を引き、香港競馬のカルトスターから、名実ともに香港競馬を代表するスターとなったパキスタンスター。次は世界のスターとなるのだろうか。その輝きはこれからだ。

文:土屋 真光

5着 アルアイン 池江 泰寿 調教師のコメント
「前残りの競馬が続いていたので、3・4番手に付けるというのは作戦通りでした。ジョッキーによると、4コーナーで競馬をやめるような仕草をしたとの事で、香港に来てから調教でも見せていましたが、気難しい面が出てしまったようです。調教内容を見直して根本的に直していきたいと思います。今日もダンビュライト陣営に色々気遣ってもらい無事にレースを終えられました。ダンビュライト陣営には感謝しています」

5着 アルアイン C.デムーロ 騎手のコメント
「先行するというのは作戦通りで、そこまでは完璧でした。ただ、前に取り付くところで気難しい面を見せました。ブリンカーをつけた方がいいかもしれません」

7着 ダンビュライト 小林 慎一郎 調教助手のコメント
「タイムワープが逃げるのを見ながらの競馬になるのは想定どおりでした。4コーナーまで持ったままで雰囲気良くこられたので期待しましたが、最後は失速してしまいました」

7着 ダンビュライト T.ベリー 騎手のコメント
「道中は良い感じでした。残り800メートルでスピードに乗って行けましたが、最後はワンペースになってしまいました」

2018年4月29日(日) シャティン競馬場(香港)

8R

第44回 クイーンエリザベスⅡ世カップ(G1)

3歳以上 定量 2000m 芝・右
賞金総額24,000,000香港ドル 発走  16:40 (現地時間)
1着賞金13,680,000香港ドル 芝:良
着順 馬番
(ゲート)
馬 名 (生産国)



騎手 タイム ・
着差



(kg)
調教師 (調教国)


1 3 (01) パキスタンスター(GER) せん5 57.0 W.ビュイック 2:00.21 523 A.クルーズ(HK) 5
2 7 (08) ゴールドマウント(GB) せん5 57.0 A.サナ 3 443 A.クルーズ(HK) 7
3 6 (02) イーグルウェイ(AUS) せん5 57.0 B.プレブル 4 1/4 491 J.ムーア(HK) 6
4 5 (03) ピンハイスター(NZ) せん4 57.0 J.モレイラ 5 1/4 551 J.サイズ(HK) 1
5 2 (06) アルアイン(JPN) 牡4 57.0 C.デムーロ 6 1/2 516 池江 泰寿(JPN) 3
6 8 (04) ディノーゾ(IRE) せん5 57.0 K.ティータン 8 1/4 467 J.サイズ(HK) 8
7 4 (05) ダンビュライト(JPN) 牡4 57.0 T.ベリー 9 1/2 468 音無 秀孝(JPN) 4
8 1 (07) タイムワープ(GB) せん5 57.0 Z.パートン 12 560 A.クルーズ(HK) 2
 着差は1着馬からの着差を表しております。
払戻金
単勝 3 790円 5番人気 馬連 3-7 11,910円 16番人気 馬単 3-7 19,330円 27番人気
複勝 3
7
6
270円
810円
670円
5番人気
7番人気
6番人気
ワイド 3-7
3-6
6-7
1,830円
1,800円
6,660円
16番人気
15番人気
24番人気
3連複 3-6-7 34,400円 39番人気
3連単 3-7-6 209,530円 200番人気

香港ジョッキークラブの結果ページ(外部サイトに接続されます)

ページトップへ戻る