ドバイゴールデンシャヒーンの後に行われる幻想的なショータイムが終わると、空はすっかり真っ暗になり、ナイター照明に照らされたメイダン競馬場は、より華やかな雰囲気を強めていた。
今年、日本から大挙5頭が出走したドバイターフ。その5頭の日本調教馬のうち、一昨年はリアルスティール(牡6歳、栗東・矢作芳人厩舎)が、昨年はヴィブロス(牝5歳、栗東・友道康夫厩舎)がこのレースを勝利している。この日ここまで、日本調教馬の勝利はなかったが、それを悲観せずに見ることができていたのも、このレースでの日本調教馬の層の厚さによるものだった面もあるはずだ。
ヴィブロス
リアルスティール
8頭立てだったひとつ前の競走(ドバイゴールデンシャヒーン)と打って変わって、こちらは15頭立て。各馬がパドックに続々と現れる。週中に矢作芳人調教師が「一昨年も5〜6人がかりだった装鞍がまずは一番の課題」と話していたリアルスティールも、馬番順とそう差なくパドックへと入ってきた。プロミシングラン(牝5歳)、ベンバトル(牡4歳)、ジャヌービ(牡4歳)の3頭はやや遅れての登場となった。
大外枠のブレアハウス(せん5歳)がゲートに入ると、残るは3頭。ヴィブロス、リアルスティールと過去2年の勝ち馬が誘導され、最後にモナークスグレン(せん4歳)がゲートに促される。馬場入り直後、管理するジョン・ゴスデン調教師は「久しぶりだけど、なんの不安もない。とてもハッピーな状態で送り出せるので楽しみ」と話していた。
ゲートが開いて、意外なことにクロコスミア(牝5歳、栗東・西浦勝一厩舎)が行く気配を見せない。また、ランカスターボンバー(牡4歳)とヴィブロスも今ひとつ、一歩目の出がよくなかったようだ。
先手を取ったのはジャヌービで、その後ろにチャンピオンシップ(せん7歳)、やや掛かり気味にネオリアリズム(牡7歳、美浦・堀宣行厩舎)と続き、その後ろにベンバトル、プロミシングランが追走した。クロコスミアはその後ろの列の外側で、その背後にリアルスティール、ブレアハウス、ディアドラ(牝4歳、栗東・橋田満厩舎)と続き、やや離れた後方をヴィブロス、ランカスターボンバー、レシュラー(牡4歳)が追走した。淀みのない流れの中、3コーナーを過ぎたあたりでベンバトルが少しずつポジションを押し上げ、直線を向いた頃には2番手の一角まで上がっていった。内にいたネオリアリズムは粘りを欠いて早々に失速してしまう。替わって後方からリアルスティールと連れられるようにディアドラが接近。さらに大外からグングンとヴィブロスも大きなストライドで伸びてくる。しかし、この間にベンバトルが一瞬の脚で抜け出すと、後続にセーフティーリードを取る。こうなると注目は2着争いで、内にリアルスティール、中にディアドラ、外にヴィブロスという攻防となった。この争いの中から頭ひとつ抜けたのはヴィブロスだったが、ベンバトルはさらに前方で万事休す。ベンバトルが初G1タイトルのゴールを悠々と駆け抜けた。勝ちタイムは1分46秒02。2014年にこのレースでジャスタウェイが記録した1分45秒52には及ばないものの、超高水準のタイムでの勝利となった。
直線で抜け出すベンバトル
初G1制覇を果たした
2着がヴィブロスで、最後まで攻防を繰り広げたリアルスティールとディアドラは3着同着となった。クロコスミアは7着、ネオリアリズムは8着に入った。
引き上げてきた2着のヴィブロスは、今までに見たことがないぐらい荒々しい呼吸をしていた。それだけ厳しいレースだったことが伝わってくる。
ディアドラ
クロコスミア
ネオリアリズム
ベンバトルは3歳時の昨年、英ダービーで勝ち馬のウイングスオブイーグルスから3馬身半差の5着という成績が示すように、中距離の雄として期待されていた。今年、ドバイに滞在して、G3、G2とステップアップするように勝利し、前走のG1ジェベルハッタこそ2着に敗れていたが、上がり馬の勢いを見せての勝利となった。
「前走は、ペース判断を誤って2着に敗れてしまったので、今日こうして乗せてもらえて、勝つことができたのはとてもありがたいことです。まるで夢のようです」
そう話したのはオイシン・マーフィー騎手。近年はカタールレーシングの主戦を務めているが、この勝利は今後に向けて新たな展開を彼に呼び込むかもしれない。また、馬主のゴドルフィンは、このあとの残る2競走も制して、この日4勝とするわけだが、その勢いを加速させる勝利だったといえよう。
喜ぶマーフィー騎手
表彰式の様子
「マーフィー騎手がうまく乗ってくれました。ベンバトルは2歳の頃は体質の弱い馬で、デビューが3歳の4月と遅くなりましたが、それでもここまで1年かからずに来られたことはこの馬の成長力をほめるほかありません」
管理するサイード・ビン・スルール調教師は、レースを2日後に控えた朝食会の場でも、その成長力を絶賛していたが、勝利を収めたことでそれを再度強調した。今後は一旦休養を挟んで、ロイヤルアスコットを目指すとのことだ。
文:土屋 真光
2着 ヴィブロス 友道 康夫 調教師のコメント
「スタートで後手を踏んでしまったけど、最後は良く伸びています。満足です。良く頑張っています」
2着 ヴィブロス C.デムーロ 騎手のコメント
「ここ最近のヴィブロスは、日本で充分な力を発揮できていなかったと聞いていたが、今日は馬も充分リラックスできていた。前半は抑えて後ろから行こうというのが調教師の指示でした。馬は頑張りましたが、勝った馬が強かったです」
3着(同着) リアルスティール 矢作 芳人 調教師のコメント
「何の不利もなく競馬できて、よく頑張ってくれた。休み明けだし、例年より時計が速かった」
3着(同着) リアルスティール M.バルザローナ 騎手のコメント
「いいレースをしましたが、少し力が及びませんでした。まだまだ走れる馬だと思うので、次は頑張ってほしいです」
3着(同着) ディアドラ 橋田 満 調教師のコメント
「健闘してくれた。起伏のないコースで合う。まだ4歳で、海外の一流と渡り合えて、成長の余地があって楽しみ」
3着(同着) ディアドラ C.ルメール 騎手のコメント
「勝てると思った。ペースが速くなくて、この馬にはちょうど良かったし、直線に向いたときには本当に勝ったと思った。このコースが合うんでしょうね。でも、勝った馬は強かったです」
7着 クロコスミア 西浦 勝一 調教師のコメント
「レースまですごく状態が良くて、すごく落ち着いていた。展開も、うまく3、4番手につけて思うような形になったけど、切れる脚がないのが……。もうちょっと良い結果になるかな、と思ったけど、これが勝負だからね。良く頑張っています」
7着 クロコスミア 岩田 康誠 騎手のコメント
「自分のペースで走れて、最後も止まらなかった。以前より力をつけている」
8着 ネオリアリズム J.モレイラ 騎手のコメント
「集中しきれていなかったので、良いスタートが切れませんでした。道中も少しかかっていたので、最後も伸びませんでした。テンションが上がっていて、ベストなパフォーマンスを出せなくて残念です」
2018年3月31日(土) メイダン競馬場(アラブ首長国連邦) | ||
7R |
第23回 ドバイターフ(G1) |
北半球産馬4歳以上,南半球産馬3歳以上 定量 | 1800m 芝・左 | |||
賞金総額 | : | 6,000,000米ドル | 発走 19:35 (現地時間) | |
1着賞金 | : | 3,600,000米ドル | 天候:晴 芝:良 |
着順 | 馬番 (ゲート) |
馬 名 (生産国) | 性 齢 |
負 担 重 量 |
騎手 | タイム ・ 着差 |
馬 体 重 (kg) |
調教師 (調教国) | 単 勝 人 気 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 5 (05) | ベンバトル(GB) | 牡4 | 57.0 | O.マーフィー | 1:46.02 | S.ビン・スルール(UAE) | 2 | |
2 | 7 (07) | ヴィブロス(JPN) | 牝5 | 55.0 | C.デムーロ | 3.25 | 友道 康夫(JPN) | 4 | |
3 | 8 (08) | リアルスティール(JPN) | 牡6 | 57.0 | M.バルザローナ | クビ | 矢作 芳人(JPN) | 1 | |
3 | 13 (13) | ディアドラ(JPN) | 牝4 | 55.0 | C.ルメール | 同着 | 橋田 満(JPN) | 7 | |
5 | 3 (03) | プロミシングラン(USA) | 牝5 | 55.0 | P.コスグレイヴ | 4.75 | S.ビン・スルール(UAE) | 13 | |
6 | 14 (14) | レシュラー(USA) | 牡4 | 57.0 | C.スミヨン | 1 | S.ビン・スルール(UAE) | 14 | |
7 | 11 (11) | クロコスミア(JPN) | 牝5 | 55.0 | 岩田 康誠 | 0.5 | 西浦 勝一(JPN) | 9 | |
8 | 2 (02) | ネオリアリズム(JPN) | 牡7 | 57.0 | J.モレイラ | 1.25 | 堀 宣行(JPN) | 3 | |
9 | 10 (10) | ウォーディクリー(USA) | 牡4 | 57.0 | S.ヘファナン | 1 | A.オブライエン(IRE) | 15 | |
10 | 15 (15) | ブレアハウス(IRE) | せん5 | 57.0 | W.ビュイック | ハナ | C.アップルビー(UAE) | 6 | |
11 | 12 (12) | ランカスターボンバー(USA) | 牡4 | 57.0 | R.ムーア | 2.75 | A.オブライエン(IRE) | 5 | |
12 | 6 (06) | ジャヌービ(SAF) | 牡4 | 57.0 | J.クローリー | 1.75 | M.デコック(SAF) | 11 | |
13 | 4 (04) | トレスフリュオース(GB) | 牡4 | 57.0 | V.シュミノー | 5 | A.ファーブル(FR) | 10 | |
14 | 9 (09) | モナークスグレン(GB) | せん4 | 57.0 | L.デットーリ | 6.75 | J.ゴスデン(GB) | 8 | |
15 | 1 (01) | チャンピオンシップ(IRE) | せん7 | 57.0 | S.デソウサ | 2.25 | A.ビン・ハルマシュ(UAE) | 12 |
単勝 | 5 | 450円 | 2番人気 | 馬連 | 5-7 | 2,350円 | 10番人気 | 馬単 | 5-7 | 3,870円 | 12番人気 |
複勝 |
5 7 8 13 |
120円 190円 120円 290円 |
2番人気 4番人気 1番人気 8番人気 |
ワイド |
5-7 5-8 5-13 7-8 7-13 |
460円 220円 1,030円 320円 1,010円 |
7番人気 1番人気 24番人気 4番人気 23番人気 |
3連複 |
5-7-8 5-7-13 |
1,260円 6,580円 |
3番人気 48番人気 |
3連単 |
5-7-8 5-7-13 |
7,280円 27,700円 |
25番人気 190番人気 |