大雨だった朝の空模様が、午後からは降ったり止んだりを繰り返し、馬場状態は稍重発表。水分を多く含んだ馬場の上で、各馬がゲートにおさめられた。
ゲート内で落ち着かないことのあるヴィブロス(牝4歳、栗東・友道康夫厩舎)だが、ここでは枠越しに隣の馬に目をやるシーンこそあったものの、いつもよりはじっとしていた。ゲートボーイを付けた効果があったのだろう。
スタートは目立った出遅れもなく各馬一斉。ヴィブロスも好スタートを切った。徐々に隊列は縦長となる中、先頭に立ったのは2番人気のリブチェスター(牡4歳)。前走・クイーンエリザベス2世S(G1・イギリス)では、ここがG1・7勝目となったマインディングにゴール前で詰め寄って2着となり、前々走のジャックルマロワ賞(G1・フランス)では、直後にムーランドロンシャン賞(G1・フランス)を快勝するヴァダモスら好メンバーがそろう中で優勝。そんな実力馬が逃げ、最初の800m通過タイムは50秒33。ゆったりとした流れになった。
2番手も同じゴドルフィンのベリースペシャル(牝5歳)で、3番手の外がムタケイエフ(せん6歳)で内がザラック(牡4歳)。ムタケイエフは前年の英インターナショナルS(G1・イギリス)で直線不利を受けながらも、勝ったポストポンドを追い詰めて3着。今回は4番人気。そしてザラックは仏ダービー(G1・フランス)でアルマンゾルの2着などの好走歴がある“名牝ザルカヴァの仔”。前走・メイダン競馬場のドバイミレニアムS(G3)を楽勝し、1番人気に支持されていた。
ザラックを見るようにコースの内側を追走したのがエシェム(牡4歳)。前々走のドラール賞(G2・フランス)でザラックに先着していたこの馬が、ほぼ中団。その後ろに前哨戦のジェベルハッタ(G1)で見事な追い込みを決め、現在3連勝中のデコレーテッドナイト(牡5歳)。さらにその直後の最内をヴィブロスが追走した。
3コーナーではリブチェスターをかわしベリースペシャルが先頭。ムタケイエフ、ザラックといった有力馬が先行集団を形成する中、エシェムがその先団勢を見るように内の“経済コース”を虎視眈々と追走。さらにその後ろにヴィブロスという隊列のまま4コーナーへ向かった。
4コーナー手前では鞍上のJ.モレイラ騎手の手が動きつつも後方へ下がったように見えたヴィブロス。かなり苦しい形かと思われた。
直線に向くとリブチェスターが堂々と先頭。直線に向いたところでザラックとムタケイエフの外に上手に持ち出したエシェムの伸び脚も良い。
一方、手応えが悪いように思えたヴィブロスだが、内を突いてうまく中団から前へ上がってくると、直線では外に持ち出してラスト200mでは5番手。残り100mでエシェムがリブチェスターをかわして先頭に立ったが、その時には脚色に優るヴィブロスが前の2頭を完全に射程に捉えていた。ラスト50mで先頭に立つと、1分50秒20の時計でゴール。その瞬間、J.モレイラ騎手の右手が高々と上がり、勝利をアピールした。
5番人気のヴィブロスが優勝。昨年のリアルスティールに続き、今年も日本馬がこのレースを制した
勝ったヴィブロスは昨秋の秋華賞に続くビッグタイトル獲得
2着はエシェム。最も強い競馬をしたリブチェスターだが、結果的には休み明けと初めてとなるこの距離(芝1800m)がこたえたか、最後に失速し3着となった。
道中、厳しい位置かと思えるところから巻き返したヴィブロスに関し、友道康夫調教師は「慌てないで構えて競馬をしてくれて良いと伝えていたので、焦らずに見ていました。それにしても最後に伸びてきた時は興奮しました。今は本当に嬉しいです」と、満面の笑みで語った。
ヴィブロスは昨秋の秋華賞(GI)を勝利した後、前走の中山記念(GII)が初めて上の世代との競馬。牡馬と戦うのも未勝利戦以来だったそのレースで5着に敗れていた。GI を勝った後も無理をさせず、ひと叩きだけしてドバイへ連れて行った作戦がこの快勝劇につながったのだろう。それにしても、国内GI 未勝利で昨年のこのレースを制したリアルスティールといい、芝中距離路線での日本馬の強さを再認識させられる結果となった。
文:平松さとし
ヴィブロスを勝利へとエスコートしたJ.モレイラ騎手
ドバイターフの表彰式で喜びの表情を見せる関係者
1着 ヴィブロス 馬主 佐々木主浩氏のコメント
「本当にうれしく、興奮しました。去年GI を勝った後、秋は休ませてこのレースを目標にしました。野球より緊張しましたが、うれしいです」
1着 ヴィブロス 友道康夫調教師のコメント
「ドバイに来てからすごく落ち着いていました。1回後ろに下がってヒヤッとしましたが、そこから伸びてくれました。雨がずっと降っていましたが、日本馬向きの硬めの馬場だったと思います」
1着 ヴィブロス J.モレイラ騎手のコメント
「大変うれしく、興奮しています。向正面では風がとても強く、他の馬の後ろにつけることを心がけました。直線は内側から上がろうとしたら、馬が内ラチを嫌がったので、外に出しました。最後はすごくよく伸びてくれました」
2017年3月25日(土) メイダン競馬場(アラブ首長国連邦) | ||
7R |
第22回 ドバイターフ(G1) |
北半球産馬4歳以上,南半球産馬3歳以上 定量 | 1800m 芝・左 | |||
賞金総額 | : | 6,000,000米ドル | 発走 19:30 (現地時間) | |
1着賞金 | : | 3,600,000米ドル | 天候:雨 芝:稍重 |
着順 | 馬番 (ゲート) |
馬 名 (生産国) | 性 齢 |
負 担 重 量 |
騎手 | タイム ・ 着差 |
馬 体 重 (kg) |
調教師 (調教国) | 単 勝 人 気 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 9 (09) | ヴィブロス(JPN) | 牝4 | 55.0 | J.モレイラ | 1:50.20 | 友道 康夫(JPN) | 5 | |
2 | 3 (03) | エシェム(IRE) | 牡4 | 57.0 | G.ブノワ | 0.5 | C.フェルラン(FR) | 7 | |
3 | 1 (01) | リブチェスター(IRE) | 牡4 | 57.0 | W.ビュイック | 0.5 | R.フェイヒー(GB) | 2 | |
4 | 2 (02) | ザラック(FR) | 牡4 | 57.0 | C.スミヨン | 1.75 | A.ドゥロワイエデュプレ(FR) | 1 | |
5 | 6 (06) | ムタケイエフ(GB) | せん6 | 57.0 | J.クローリー | 3 | W.ハガス(GB) | 4 | |
6 | 4 (04) | デコレーテッドナイト(GB) | 牡5 | 57.0 | A.アッゼニ | 1.25 | R.チャールトン(GB) | 3 | |
7 | 12 (12) | ドーヴィル(IRE) | 牡4 | 57.0 | R.ムーア | クビ | A.オブライエン(IRE) | 6 | |
8 | 11 (11) | クーガーマウンテン(IRE) | 牡6 | 57.0 | D.オブライエン | 1.25 | A.オブライエン(IRE) | 13 | |
9 | 10 (10) | デットコレクター(NZ) | せん4 | 57.0 | M.ロッド | 1.25 | C.ブラウン(SIN) | 12 | |
10 | 8 (08) | ベリースペシャル(IRE) | 牝5 | 55.0 | S.デソウサ | 4.5 | S.ビン・スルール(UAE) | 9 | |
11 | 7 (07) | モンディアリスト(IRE) | 牡7 | 57.0 | D.タドホープ | 4.25 | D.オメーラ(GB) | 8 | |
12 | 13 (13) | ロングアイランドサウンド(USA) | 牡4 | 57.0 | S.ヘファナン | 2 | A.オブライエン(IRE) | 11 | |
13 | 5 (05) | オパールティアラ(IRE) | 牝4 | 55.0 | O.マーフィー | 18 | M.シャノン(GB) | 10 |
単勝 | 9 | 880円 | 5番人気 | 馬連 | 3-9 | 11,640円 | 28番人気 | 馬単 | 9-3 | 20,350円 | 52番人気 |
複勝 |
9 3 1 |
350円 510円 200円 |
5番人気 7番人気 2番人気 |
ワイド |
3-9 1-9 1-3 |
3,480円 1,240円 1,950円 |
32番人気 14番人気 19番人気 |
3連複 | 1-3-9 | 20,220円 | 63番人気 |
3連単 | 9-3-1 | 162,710円 | 415番人気 |