大粒の雨に打たれたながらも稍重のコンディションに踏みとどまった東京競馬場の芝コース。ヴィクトリアマイル（GⅠ）のゲートから3世代・18頭が飛び出した。

逃げるカワキタエンカを、昨年のNHKマイルC覇者アエロリットが早め追走。レーヌミノルとレッツゴードンキという2頭の桜花賞馬や、阪神牝馬S2着のレッドアヴァンセが続き、これら好位勢を見ながら重賞3連勝中のミスパンテールが内に構える。オークス馬ソウルスターリング、連覇を目指すアドマイヤリードは中団、このコースで重賞2勝のリスグラシューは後方から末脚に賭ける策だ。

JRA・GⅠウィナー5頭を含むハイレベルなメンバーが、緩みのないペースでコーナーを回っていく。そして追い比べへ。直線の坂を駆け上がりながらアエロリットとレッドアヴァンセが並んで抜け出すと、そこへ襲いかかっていったのがジュールポレールだった。

好スタートを決めたジュールポレールの鞍上・幸英明騎手は「最後は必ずいい脚を使う。いつでも動ける位置を取ろう」と、無理に前を追いかけずにいったん下げ、中団外のポジションをキープ。そこでスムーズに折り合い、直線では周囲の様子をうかがうほどの余裕を示す。「最初は後ろの馬を待とうと思った」と言う幸騎手だったが、前2頭の勢いがいいと見て取ると、すぐさま目標を切り替えてスパート。一気に差を詰め、交わし、外から追い込んできたリスグラシューをハナ差抑えてジュールポレールは先頭でゴールへと飛び込む。

昨年のこのレース3着、阪神牝馬Sは昨年が3着、今年は5着というジュールポレールの歩みを「チャンスがあったのに勝たせてあげられなかった」と振り返る幸騎手。その悔恨を払拭する鮮やかな手綱さばきに応え、ジュールポレールも力強い末脚を繰り出して、重賞初制覇をGⅠの大舞台で成し遂げたのだった。

（谷川　善久）