秋のGⅠシーズン開幕を告げるスプリンターズS（GⅠ）は、10月とは思えぬ陽気に包まれてのスタート。その気温以上に熱い戦いを制したのは、ママコチャだ。

セントウルS逃げ切りのテイエムスパーダが懸命のダッシュを試みるが、これを制してCBC賞と北九州記念を連勝してきたジャスパークローネがハナへ。春雷S勝ち馬マッドクール、短距離重賞4勝のナムラクレアと同6勝のメイケイエール、一昨年の覇者ピクシーナイトらが好位から中団でポジションを争い、セントウルSで見せた末脚を生かすべくアグリは後方に構えた。

前半3ハロンが33秒3という流れの中、ママコチャは無理なく2、3番手を追走する。鞍上の川田将雅騎手いわく「行く馬を行かせて、自分のリズムを大事にしながら」の競馬だ。「内の馬からの圧で少し外に流れてしまった」という4コーナーでのロスも最小限に抑えて、逃げるジャスパークローネに並びかけながらママコチャは直線へと向かう。

さぁここからは我慢比べ。粘るジャスパークローネ、外から追いすがるナムラクレアを振り切ったママコチャに、内からマッドクールが激しく迫る。最後はハナ差、なんとか凌ぎ切ってママコチャは先頭ゴールを果たしたのだった。

マイルGⅠ3勝のソダシを全姉に持つママコチャ。自身も1400メートルから1600メートルを中心に使われてきたが、初めての1200メートル戦となった前走・北九州記念で僅差2着に好走すると、その経験を糧とし、一気にスプリント戦線の頂点へ上り詰めることに成功した。

「姉とタイプはまったく違うが、この馬はこの馬で素晴らしい背中をしている」と川田騎手。偉大な姉とは異なる舞台で、妹にもさらなる躍進を期待したいものである。

（谷川　善久）