桜花賞（GⅠ）ではラッキーライラックが単勝オッズ1.8倍の断然人気に支持された。新馬、アルテミスS、阪神ジュベナイルフィリーズ、そしてチューリップ賞と4戦して土つかず、しかも完勝続きとなれば、当然の評価だといえただろう。

だが、「あの馬は強い」と大本命に敬意を払いながらも「こちらも自信はあった」というのがクリストフ・ルメール騎手だ。その自信の源=2番人気アーモンドアイは、鞍上が想像していた以上の走りで女王の座を奪い獲ることとなる。

ラッキーライラックのレースぶりは完璧だった。1番ゲートから素早く飛び出すと、行きたい馬を行かせて好位の内に落ち着く。そのまま流れに乗り、直線入口ではスッと外へ持ち出されて、タイミングを計ってスパート。前を交わして後続を突き放しにかかったラッキーライラックは、さあ後はゴールを目指すだけという体勢へと持ち込んだのである。

そこへ、大外を飛んできたのが後ろから2、3頭目という位置にいたアーモンドアイだ。デビュー戦の2着、3馬身半突き抜けた未勝利戦、他の馬が止まって見える追い込みを決めたシンザン記念、3戦とも出走メンバー中最速の上り3ハロンタイム（推定）を記録した鋭い末脚が、ここでも火を噴く。「自分で走ってくれた。凄い瞬発力。アンビリーバブル！」とルメール騎手も驚く豪脚を炸裂させて、瞬く間に十数頭を抜き去っていく。最後はラッキーライラックに1馬身4分の3差をつけて先頭ゴール。1分33秒1のレースレコードまで叩き出して、アーモンドアイは鮮やかに3歳牝馬GⅠの第一冠を手中に収めたのだった。

父はスプリント王のロードカナロア。第二冠・オークスへ向けては距離が気になるところだが、ルメール騎手は「三冠も考えられる」と言い放つ。その言葉を疑うことを許さないほど衝撃的な“直線一気の戴冠劇”を、アーモンドアイは成し遂げたのだった。

谷川　善久