王者キタサンブラックが去った後の古馬中長距離路線を、どの馬が引っ張っていくのか。大阪杯（GⅠ）には、ハイレベルとの声が高い4歳馬たちと経験豊かな古豪たちが、その座を争うべく集結した。

ヤマカツライデンが作る緩やかな流れを、アメリカJCC勝ち馬ダンビュライト、中山記念を制したウインブライト、皐月賞馬アルアインといった4歳勢が好位で追う。続くのは、5歳のエース格サトノダイヤモンド、7歳となったゴールドアクターというグランプリホース2頭、さらにはジャパンカップ覇者の6歳シュヴァルグランだ。中団から後方にかけては、ふたたび若武者たち。マイルチャンピオンシップを差し切ったペルシアンナイト、3連勝中の上り馬トリオンフ、セントライト記念1着のミッキースワローが控えている。

昨年の日本ダービー2着馬スワーヴリチャードも後方に待機。アルゼンチン共和国杯圧勝、有馬記念4着、前哨戦・金鯱賞完勝と、昨秋以降の充実ぶりから1番人気に推されていた存在だ。

そのスワーヴリチャードが、向こう正面で一気に動いていく。

鞍上のミルコ・デムーロ騎手いわく、「有馬記念では馬群の外を通らされた。今日はスタートをゆっくり出て、ペースが落ち着いたら上がって行こうと考えていた」。つまりは「思った通り」の策。3コーナーでは早くも先頭に立ち、そのまま直線へと向かう。

「ヨーイドンになったときも、まだ感触は良かった」というデムーロ騎手の手応えは正しく、そこから鋭く、しぶとく、脚を伸ばすスワーヴリチャード。これまでの重賞3勝は左回りの東京と中京でのもの、中山の有馬記念では手前を替えず内にもたれたことから、右回りの阪神コースへの対応力が懸念されていたのだが、それも今回はまったく問題なし。スムーズかつ力強い脚さばきを、スワーヴリチャードは披露する。

結局スワーヴリチャードは、馬群から抜け出してきたペルシアンナイトと食い下がるアルアインを振り切って先頭ゴール。驚嘆の走りで待望のGⅠタイトルをつかみ、“今年の主役”候補として名乗りを上げたのである。

谷川　善久