ここまで5つのGⅠ・JpnⅠタイトルを積み上げてきたレモンポップが、チャンピオンズカップ（GⅠ）でラストランを迎えた。レース後には引退式も予定されているという衆人環視の中で、背負うのはもちろん1番人気。そしてこの大本命馬は、ダート路線のヒーローとしての務めをまっとうすることとなる。

平安S逃げ切りのあるミトノオーに絡まれたものの、レモンポップはハナを譲らない。好位には重賞連勝中のクラウンプライド、今年のフェブラリーS勝ち馬ペプチドナイル、シリウスS連覇のハギノアレグリアスなどが続き、みやこSで古馬をねじ伏せたサンライズジパング、JBCクラシックを制したウィルソンテソーロ、芝・ダート二刀流のドゥラエレーデとガイアフォースらが中団から後方にかけてひしめいている。

これらを引き連れてレモンポップは軽快に風を切っていく。1000メートル通過は昨年勝利時の60秒9に対して今年は60秒8。「去年と同じイメージで」との考えで臨んだ鞍上・坂井瑠星騎手が思い描いた通りのラップを刻みながら、レモンポップは最後の直線へと向かう。

堂々とゴールを目指すレモンポップ。ペプチドナイルが懸命に追いすがるもその差は縮まらない。代わって外から伸びてきたのはウィルソンテソーロだ。

「鬼のような気配を感じた。危なかったけれど馬が頑張ってくれた。大きいハナ差だった」と坂井騎手が振り返った通り、レモンポップはこの急追を何とか凌ぎ切って連覇を果たし、有終の美を飾ったのである。

二度の中東遠征では涙をのんだものの、国内では16戦13勝・2着3回とほぼパーフェクトな成績を残して現役生活を終えるレモンポップ。豊かなスピードと類稀なる勝負根性が描いた偉大なる蹄跡は、長く語り継がれることになるはずだ。

（谷川　善久）