京都競馬場の整備工事にともない、1994年以来、27年ぶりに阪神競馬場での開催となった天皇賞（春）（GⅠ）には、個性あふれる17頭が集った。

ハナを切ったのは、このコースで唯一勝ち鞍があるディアスティマ。悲願のGⅠ制覇を狙うカレンブーケドール、阪神大賞典圧勝のディープボンドらが好位につけ、昨年の菊花賞でコントレイルを苦しめたアリストテレスが続く。日経賞を勝ったウインマリリン、ダイヤモンドS2着のオーソリティは中団、阪神大賞典2着のユーキャンスマイルは後方からの追走だ。

ワールドプレミアは先行勢の後ろ。初のコンビとなった福永祐一騎手は「調教で特性はつかんだ」と自信を抱きながら、アリストテレスを前に置いてじっくりと折り合う。だが、向こう正面でウインマリリンが動き出す気配を見せると、ワールドプレミアもすかさずペースアップ。進路を確保しつつ、3コーナー、4コーナーと回っていく。

勝負は直線へ。先頭に立ったカレンブーケドールと懸命に粘るディアスティマに、ディープボンド、アリストテレス、そしてワールドプレミアが次々と襲い掛かる。とりわけ目立ったのは、いちばん外、ワールドプレミアの勢い。アリストテレスを振り切り、ディープボンドとカレンブーケドールも競り落とすと、堂々の先頭ゴールを果たすこととなる。

一昨年、菊花賞を制覇し、有馬記念で3着と好走した後、脚部不安のため長期休養を余儀なくされたワールドプレミア。昨秋の復帰以降は、ジャパンカップ6着、有馬記念5着、日経賞3着と、惜敗を繰り返しながらも少しずつ勝ち馬との差を詰めていた。そしてこの日、「長くいい脚を使ってくれた」と福永騎手も称賛するパワフルなラストスパートで1着。得意とする長丁場で能力全開、3分14秒7のレコードタイムとともに披露した、鮮やかな復活劇と盾獲りであった。

（谷川　善久）