ウインタースポーツ最大の祭典・冬季五輪に沸く中で、競馬の世界も大舞台の開幕を迎えた。出走16頭全馬が重賞ウィナー、うち9頭がGⅠ・JpnⅠ勝ち馬。ダートの頂点を争うにふさわしい豪華メンバーが集結したフェブラリーS（GⅠ）だ。

JBCスプリントの覇者ニシケンモノノフや川崎記念を逃げ切ったケイティブレイブが引っ張り、チャンピオンズC2着・東海S1着の2番人気テイエムジンソクも前につけて、1000メートル通過が58秒3という厳しいペースでレースは進んだ。直線に入ると、これら先行勢を中団待機組がたちまちのうちに飲み込む。とりわけ目立ったのは1番人気ゴールドドリームの力強さだ。残り300メートルで堂々と抜け出すと、連覇へ向けてゴールを目指す。

そこへ鋭く襲いかかってきたのがノンコノユメだった。

2015年の3歳シーズンにユニコーンS、ジャパンダートダービー、武蔵野Sと重賞3連勝を飾り、将来を嘱望される存在となったノンコノユメ。そこから2年以上も勝ち星から遠ざかるとは誰も想像していなかっただろう。去勢手術やリフレッシュ休養など、復活を期す陣営の取り組みが実を結んだのは、ようやく前走のこと。根岸Sで強烈な直線一気を決め、コースレコードを叩き出す復活勝利を遂げたのである。

この日も「厩舎が土台をしっかり作ってくれた」と、内田博幸騎手はノンコノユメの好調を感じ取っての騎乗。「後は自分がどう乗るかだけ。できるだけゴールドドリームには離されないようにしよう」と、いつも通り後方でパワーをためながらもターゲットを絞った策を敢行する。狙い通り、ラストスパートへ移ると現・砂の王者を1完歩ずつ追い詰めていくのだった。

最後は、懸命の粘りを見せるゴールドドリームを挟んで、外がノンコノユメ、内にはジリジリと迫る古豪インカンテーション、3頭の追い比べ。これをクビ差制してノンコノユメが先頭でゴールを駆け抜ける。「力を振り絞って走ってくれた」と内田騎手が称える渾身のラストスパートで、ノンコノユメが、JRA・GⅠという夢をつかみ取ったのである。

谷川　善久