エリザベス女王杯（GⅠ）では唯一の3歳馬レガレイラが断然の1番人気に推された。ホープフルSで牡馬を蹴散らし、今春のクラシックでも皐月賞6着、日本ダービー5着と善戦した実績の持ち主は、しかし、前走ローズSに続いてここも5着に敗れる。

勝利をつかんだのは、もう1頭のGⅠウィナー、スタニングローズだ。

中山牝馬S逃げ切りのあるコンクシェルが隊列を先導し、昨年3着のハーパー、新潟記念1着のシンリョクカが続く。新潟牝馬Sを制したホールネスらが好位を占め、府中牝馬S2着のシンティレーション、アルテミスSの勝ち鞍を持つラヴェル、そしてレガレイラは中団から。末脚鋭いサリエラやモリアーナは後方に控えている。

スタニングローズは4番手の追走。クリスチャン・デムーロ騎手にグッと手綱を引かれていたが、3コーナー過ぎから馬群の外を駆け上がっていく。「手ごたえよく最終コーナーを回れた」と鞍上が振り返った通りの力強さで、勢いよく前を捕えにいくのだった。

直線へ向かうと同時に先頭に立つスタニングローズ。早めの仕掛けにも見えたが、そこから脚色は一向に衰えない。馬場の真ん中を堂々と伸びると、外から詰め寄ろうとするラヴェル、内で競り合うホールネス、シンリョクカ、レガレイラらの激しい2着争いを2馬身後方に従えて、堂々の先頭ゴールを果たすのである。

2022年に秋華賞を制した後、エリザベス女王杯で初めて大きく敗れる（14着）と、以降は思うような走りを見せられず、左前脚の腱周囲炎による長期休養もあって勝ち星から遠ざかっていたスタニングローズ。だが、ここで一転、まるで「これが本来の底力だ」と示すかのようなスパートで栄冠を手にした。牝馬戦線で主役を務めるに値する素質馬の、鮮やかな復活劇であった。

（谷川　善久）