無敗の二冠達成か、それとも逆転か、あるいは別路線組の台頭があるのか。大歓声に包まれて日本ダービー（GⅠ）のゲートは開いた。

プリンシパルSを逃げ切ったパクスオトマニカがここでも先手を主張し、向こう正面では2番手ホウオウビスケッツとの差を大きく広げていく。皐月賞で豪快な直線一気を決めたソールオリエンスは、単勝オッズ1.8倍の人気を背負い、今日は早め6番手を確保。その後ろではベラジオオペラ、ファントムシーフ、シャザーンらが皐月賞敗退からの巻き返しを狙っている。外を上がっていくのはスキルヴィングとハーツコンチェルトの青葉賞組、京都新聞杯から歩を進めてきたサトノグランツは後方に構える。

好スタートから5番手につけたのがタスティエーラだ。「ポジションを取れれば、すぐにリラックスできる馬。その特徴を意識して乗った」と振り返るのはダミアン・レーン騎手。「強い馬は後ろから。それより有利な位置で」というプラン通り、ソールオリエンスを背後に従えるポジションでレースを進めることに成功していた。

やがて勝負は直線の追い比べへ。パクスオトマニカを交わし、残り200メートルでタスティエーラが先頭に立つ。「折り合いもついてリズムよく走れた。先頭に立ってからも集中力を切らさず最後まで頑張ってくれた」というレーン騎手の言葉通り、タスティエーラは渾身のスパートをゴールまで貫く。ホウオウビスケッツをねじ伏せ、外から差を詰めるソールオリエンスとハーツコンチェルト、内から伸びてきたベラジオオペラを振り切る。

「日本ダービーは、全てがスムーズでないと勝てない。今日は理想通りのレースだった」とレーン騎手。スタートから道中、そして直線の攻防に至るまで完璧な走りを披露して、タスティエーラは皐月賞2着惜敗の雪辱を果たすとともに、第90代日本ダービー馬の称号を手に入れたのである。

（谷川　善久）