ファン投票1位を背負い、天皇賞（秋）、ジャパンカップに続くGⅠ3連勝に挑むはずだったドウデュースが出走取消。だが、その衝撃をかき消すほどの激闘と、歴史に刻まれるであろう驚異の瞬間が、有馬記念（GⅠ）のゴールには待っていた。

日本ダービー馬ダノンデサイルが最内1番ゲートからハナを主張し、大阪杯の覇者ベラジオオペラが差のない位置をキープする。その後ろにはスターズオンアース、レガレイラ、スタニングローズの牝馬3頭、さらには菊花賞を制したアーバンシック、昨春の天皇賞以来の栄冠を目指すジャスティンパレス、世界を股にかけて奮戦するシャフリヤール、宝塚記念を制したブローザホーンらがひしめき、BCターフ2着のローシャムパーク、コックスプレート2着のプログノーシスは後方に構える展開となった。

ゆったりとした流れの中で、満足感を覚えていたのがレガレイラの鞍上・戸崎圭太騎手だ。いわく「二の脚が速くてポジションを取れたし、道中もスムーズなリズムで追走できた」。確かに、各馬の手綱が動き始めた3、4コーナーでも余裕たっぷりの手ごたえで前へと迫るレガレイラの姿が好位馬群にはあった。

そして直線。ベラジオオペラを振り切ってラチ沿いを駆けるダノンデサイルに、レガレイラとシャフリヤールが詰め寄る。2頭は激しい追い比べを演じながらダノンデサイルを交わし、馬体を接したまま決勝線へ。写真判定の末、「気持ちで負けないように」と戸崎騎手に懸命に追われたレガレイラに軍配は上がる。

昨年暮れのホープフルSを勝利したものの、今年は皐月賞6着、日本ダービー5着、ローズSとエリザベス女王杯も5着と苦しんだレガレイラの復活劇。それは1960年のスターロッチ以来、実に64年ぶりとなる“3歳牝馬の有馬記念制覇”という歴史的な勝利ともなったのだった。

（谷川　善久）