取材・撮影・監修 見上 愛
競馬の先には、 何が あるんだろう?
競馬がつくる
食の未来
見上愛
競馬場で、初めて競馬を観戦したとき、とてつもない迫力とエネルギーに圧倒されたことを今でも鮮明に覚えています。それからJRAのことをもっと深く知りたくなりました。
そんな思いの中、今回、JRAの社会貢献活動への取組みを取材する機会をいただきました。「馬が人の心を癒す時間。」「地域の想いが宿る木の再利用プロジェクト。」「日本の畜産と未来をつなぐ橋渡し。」3つのプロジェクトへの取材を通してわかったのは、それぞれの活動は、競馬と同じように「人と馬の関係」が根本だということ。そしてそこには静かだけれど確かな“想い”があるということ。このエッセイでは、そんな“想いがつながっていく先”を、私の目線で綴ってみました。
まさか、国産チーズづくりの裏に、
JRAが関わっていたなんて。
JRAは、畜産の未来も支え続けている。それは競馬とともに歩んできた長い時間のなかで、静かな情熱を持って取り組まれてきたものだと知りました。日本の風土から生まれる乳酸菌と麹を活かした国産チーズづくりもそのひとつ。私たちが食卓で楽しむ“おいしい!”の背景には、人と自然、そして動物との深いつながりがあったんです。
JRAと国産チーズの 意外な関係
私はチーズが好きで、国産のものもよく食べるんです。その国産チーズにJRAが関わっていたとは!競馬に関連する事業や取組みは知っていましたが、私たちの食卓に届く
畜産物の支援もしていると知って驚きました。
お話を伺った佐藤教授は、“日本の酪農家が衰退していく現状をなんとかしよう”という想いで、チーズの研究を始められたそう。乳酸菌や麹菌など、日本独自の微生物を使って、ほかの国には真似できないチーズを生み出そうと日々研究していらっしゃいます。JRAはその活動を支援しているそうです。普段、私が何気なく食べているチーズの奥には、目に見えないたくさんの“つながり”がありました。
競走馬も畜産も “同じ土”から育つ
チーズの背景をたどるうちに、JRAの支援が食に広がっていることを知りました。
「競走馬は良い土からできた草を食べてアスリートとして走る。畜産も、良い土からできた草や穀物を食べることによって、良い牛、良い豚、良い鶏、良い卵ができる。同じ土から競走馬も畜産も育つんです」
そう語ってくださったのは、JRAの古角さん。
JRAはチーズだけではなく、牛、豚、鶏などの畜産事業への助成も行っているそう。土が育てる草、草が育てる命。その命がまた人の暮らしを支えていく。“同じ土から育つ”という言葉には、自然の循環と、人の営みが重なり合う深い意味が込められているように思います。競馬が生み出すチカラは、ここにも、確かに届いていました。
食のつながりを想い、 味わう
競馬による支援が、どんな味を生んでいるのか。実際に食べて、確かめてみたくなりました。ここで、楽しみにしていた国産チーズの試食タイム。実際に国産チーズの研究に携わっている佐藤教授に説明してもらいながら、ゴーダチーズ、カマンベールチーズ、麹チーズ、3種類のブラウンチーズをいただきました。
麹チーズとブラウンチーズは初体験。麹チーズは、お味噌やお醤油作りに使われる麹を応用しているそう。九州のさしみ醤油と相性がいいと聞いて、試してみたくなりました。ブラウンチーズは、まるで生キャラメルみたいでこの日一番のお気に入りです。
もしかしたら、私の気づいていないところで、JRAが関わったものを口にしているかもしれないですよね。これからスーパーに行ったら、そのことに思いを巡らせながら、お肉や卵、乳製品を手に取ってみようと思います。
小さな積み重ねが
明日を照らす
今だけじゃなくて、これからずっと先の“食”を考える。その想いをもとに、畜産業に関わる方々が10年20年前から積み重ねてきた努力が、今の社会で実を結んでいる。そのことを今回の取材で実感しました。
チーズ作りから畜産と、話題が広がっていくなかで、「これからの畜産業を担う若者が減っている」という現状も知りました。そして、佐藤教授から若い世代へ向けた「チャレンジすることの楽しみを味わってほしい」という言葉。私は若い世代として受け取り、この活動を応援する一人として、何ができるか考えていきたいなと思います。
競馬から生まれた支援を受け取って、想いを持って新しい食づくりにチャレンジしている人たちがいる。馬たちのエネルギーが、人を動かし、よりよい社会につながっていく。そんな広がりを感じることができました。