NHKマイルC（GⅠ）に集結した馬たちの歩みは多彩だった。昨年の2歳女王で桜花賞2着のレシステンシアが1番人気に推され、朝日杯フューチュリティS2着、アーリントンC快勝のタイセイビジョンが2番人気。新馬、こぶし賞、毎日杯と3連勝中のサトノインプレッサ、同じく新馬、1勝クラス、ニュージーランドTと土つかずのルフトシュトロームが続く。

マイル中心に実績を積み上げてきた馬たちが注目を浴びる中で、しかし、勝利をつかんだのは、1200メートルと1400メートルでしか勝ち星がなく、まだ重賞タイトルも持たず、クロッカスS1着、ファルコンS2着というステップで臨んだ9番人気のラウダシオンだった。

おおかたの予想通り、ハナを切ったのはレシステンシア。その直後ではタイセイビジョンら先行勢が大きな馬群を形成したが、スルスルと抜け出してきたのはラウダシオンだ。初めてコンビを組むミルコ・デムーロ騎手が「VTRを見て、いつもスタートが速い馬だとわかっていた。後ろから行っても伸びない馬場なので、いいポジションにつけたかった」と振り返る積極策である。

結局レシステンシアは先頭を譲らず、1000メートル通過58秒フラットのペースを刻んで直線へ。そこからラウダシオンの追撃が始まる。相手は阪神ジュベナイルフィリーズを2歳コースレコードで逃げ切った馬。だがラウダシオンにも短距離で磨いてきたスピードがあった。

「手ごたえは抜群。これは行けると思った」とデムーロ騎手が感じた通り、ラウダシオンは残り400メートル地点で前に並びかけると、余裕たっぷりに追い出され、粘るレシステンシアを1馬身半競り落として先頭でゴールする。

ラウダシオンの父リアルインパクトは3歳の身で安田記念に挑み、やはり9番人気で重賞初制覇とマイル戦初勝利を果たした。大一番でこそ発揮される勝負強さを受け継いで、ラウダシオンもまた、輝くGⅠタイトルを手にしたのであった。

（谷川　善久）