17頭が秋のマイル王の座を争ったマイルチャンピオンシップ（GⅠ）。読売マイラーズCで2着に逃げ粘ったグァンチャーレ、ダービー卿チャレンジTを制したフィアーノロマーノの間から、函館記念勝ち馬マイスタイルが抜け出してペースを握る。この緩みのない流れを、人気上位3頭も積極的に追走する展開となった。

1番人気ダノンプレミアムは好位の外。前走・天皇賞（秋）2着で示した確かな地力を、いつでも披露できるポジションだ。日本ダービー2着、秋初戦の毎日王冠勝利と3歳屈指の実力を誇る2番人気ダノンキングリーは先行集団を見ながらのイン。持ち前の末脚を生かそうと脚を溜めている。

同じ勝負服の2頭の間に、安田記念の覇者、3番人気のインディチャンプは構えた。

「スタートをしっかり出てくれて、いいポジションを取れた」と、この馬とは初めてコンビを組む池添謙一騎手。左斜め前にダノンプレミアムを見ながら、インディチャンプはリズムよく3コーナーから4コーナーを駆けていく。

直線。仕掛けられたダノンプレミアムが先頭に並びかける。これを射程圏に捉えて機を待つのはインディチャンプ。「叩いて状態は良くなっている。手応えは十分。でも早めに先頭へ出るとソラを使う馬だから」と、ギリギリまで追い出しを待つ策だ。そして残り200メートル、池添騎手にアクセルを踏み込まれて、インディチャンプは瞬時に突き抜けていく。食い下がるダノンプレミアム、馬群を突いて追い込むペルシアンナイト、粘るマイスタイル、内ラチ沿いで脚を伸ばすダノンキングリーらの激しい2着争いを1馬身半振り切って、インディチャンプは堂々の先頭ゴールを飾る。

今年2月の東京新聞杯で重賞初制覇を果たすと、安田記念を差し切り、そしてマイルチャンピオンシップも勝利。レースで見せる抜群の瞬発力と同様、頂点への駆け上がり方も“一気に”と形容したくなる、そんなマイル王の誕生である。

（谷川　善久）