3歳と古馬の比較が常に話題となるエリザベス女王杯（GⅠ）。今年はオークス馬ラヴズオンリーユーが1番人気、秋華賞馬クロノジェネシスが2番人気と、ファンは「3歳優位」と判断した。これに待ったをかけたのが4歳代表、3番人気のラッキーライラックだ。

2017年夏のデビュー戦から、アルテミスS、阪神ジュベナイルフィリーズ、翌春のチューリップ賞と4連勝をマーク、3歳牝馬クラシックの大本命へと上り詰めたラッキーライラック。だが桜花賞2着、オークス3着と勝ち運に見放され、ここまで7連敗。それでも鞍上のクリストフ・スミヨン騎手は「調教でもパドックでもコンディションの良さを感じた」と自信を抱いての参戦だった。

このレース2年連続2着と好相性を誇るクロコスミアがハナを切り、1000メートル通過62秒8のゆったりとした流れを作り出す。スローペースを見越して、ラヴズオンリーユーにクロノジェネシス、4番人気スカーレットカラー、5番人気センテリュオと人気上位馬たちも先行集団に取り付く。ラッキーライラックは中団のイン。スミヨン騎手いわく「当初のプランより後ろの位置。でも、ちょうど前には有力馬たちがいる。無理せず内で脚を溜めていこう」というポジショニングだ。

3コーナー過ぎからペースが一気にアップ、各馬勢いをつけて最後の直線へと飛び込んでいく。懸命に差を詰めようとする後続と、粘りに粘るクロコスミア。ここで驚くほどの脚を見せたのがラッキーライラックだ。「内が空いていたので突いた。切れる脚を使ってくれた」と、内ラチ沿いから突き抜けたラッキーライラックは、クロコスミアを1馬身4分の1差し切って先頭ゴールを飾るのである。

ラッキーライラックの勝利は1年8か月ぶり、スミヨン騎手もJRA・GⅠ制覇はジャパンカップ（エピファネイア）以来5年ぶりのこと。騎手の好判断、そして馬の状態の良さが完璧に噛み合って成し遂げられた、鮮やかな復活劇であった。

（谷川　善久）