朝日杯フューチュリティS（GⅠ）では紅一点のグランアレグリアが単勝オッズ1.5倍の断然人気を集めた。新馬戦では後の2歳女王ダノンファンタジーを一蹴し、サウジアラビアロイヤルCでも後続を3馬身半突き放した逸材だ。だがGⅠの舞台で牝馬が牡馬の壁を突き破ることは、たやすい仕事ではなかった。

意地の勝利をつかんだのはアドマイヤマーズだ。

好ダッシュを決めたグランアレグリアは、ハナを主張するイッツクールの直後2番手につける。アドマイヤマーズは3番手。鞍上ミルコ・デムーロ騎手いわく、「ポンと出てくれたら、前にグランアレグリアがいた。この馬を見ながら行こうと考えていたので、ちょうどよかった」という、願ってもないポジショニングだ。

レースが淡々と進む中で、いち早く動いたのがアドマイヤマーズだった。4コーナーから手綱が動き始め、直線入口では逃げるイッツクールと仕掛けのタイミングを計るグランアレグリアに外から並びかけて、そのまま一気に先頭へと躍り出る。するとグランアレグリアも激しく抵抗、伏兵クリノガウディーもジワジワと差を詰めてきた。

ここからがアドマイヤマーズの本領発揮。新馬戦、中京2歳S、デイリー杯2歳Sと、追いすがる相手をアドマイヤマーズはことごとく競り合いの末に突き放してきた。ここでもグランアレグリアを振り落とし、クリノガウディーの追撃を許さず、さらには外から脚を伸ばしてきたファンタジストも封じ込めて、2馬身差の先頭ゴールを果たす。

デムーロ騎手が「僕と同じで『負けたくない』という気持ちが強い馬」と賞賛する通り、“勝利へのひたむきさ”を武器にして成し遂げたデビュー4連勝、そしてGⅠ制覇である。

（谷川　善久）