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空高い好天の下、「アイリッシュチャンピオンズウィークエンド」のDAY1は開幕した。通常のレーシングプログラムに添えられたのは、日本語で記された簡易プログラム。パドックには競馬場で配られた日の丸の旗を振る地元ファンの姿も。レパーズタウン競馬場のCEO、パット・キーオ氏が「ついに日本馬を招待するという夢がかないました」と声を弾ませたように、レパーズタウンには日本馬への歓迎ムードが漂っていた。
しかし、そんな雰囲気の中、存在感を示したのは地元の天才的トレーナー、A.P.オブライエン調教師だった。開幕の第1レースを制すると、第3レースのG2・チャンピオンズジュベナイルSをモーグル、第4レースのG3・パディーパワーベッティングショップSをノルウェーで連勝。最高のムードで、この日のメインイベント、アイリッシュチャンピオンS(G1・アイルランド)を迎えた。
日の丸を振ってディアドラを応援する地元ファン
最高のムードでアイリッシュチャンピオンSを迎えたオブライエン勢
大方の予想通り、先陣を切ったのはハンティングホーン。直後にマジカルがつけ、アンソニーヴァンダイク、マジックワンドも追随と、オブライエン勢4騎が前を固めた。切れ味が身上のディアドラ(牝5歳。栗東・橋田満厩舎)、ヘッドマンは後方で脚を温存。馬群が一気に凝縮した直線で、マジカルが抜群の手応えで抜け出すと他馬はもう追いつけない。リードを2馬身1/4差に広げてゴールに飛び込んだ。
「すごく能力の高い牝馬。去年の秋はいいレースができませんでしたが、今年はすごくいいレースが続いています」(ムーア騎手)
プリンスオブウェールズS、エクリプスS、ヨークシャーオークス(以上、イギリス)とG1で2着が3度続いたが、そのうっぷんを晴らすかのような完勝。R.ムーア騎手は、9戦連続連対中とハイレベルな戦いで結果を出し続けるパートナーの首をなで、ねぎらった。
2着続きのうっぷんを晴らすかのように完勝したマジカル
ファンの声援に応えるムーア騎手
2011年のソーユーシンク以来となる、アイリッシュチャンピオンS8勝目。しかも、2着マジックワンド、3着アンソニーヴァンダイクとワンツースリーフィニッシュで上位を独占。8年ぶりに地元のビッグレースを制圧したオブライエン調教師は、ほほを緩めた。
「ガリレオも負けている(2001年の本レースでファンタスティックライトの2着)ようにハードなレース。同じようなレースは少ししかなくて、今年も日本から来たように、ハイレベルな馬が集まるのです。勝てない時も挑戦してきましたし、勝利を渇望していました」(オブライエン調教師)
マジカルの次走は未定だが、凱旋門賞(10月6日、G1・フランス)に参戦するプランもあるようだ。
「レースを決めるのはオーナーだったり、トレーナーだったり、ジョッキーだったりしますが、皆さんが勝敗にかかわらず、強い馬同士の戦いを見たいというのは分かっています。エネイブルはグレートフィリーですが、次が楽しみになりました」(オブライエン調教師)
オブライエン調教師は、4度対戦してはね返されてきた現役最強牝馬とのリマッチの可能性を匂わせた。
「1600から2000メートルが合う」というマジックワンドは暮れの香港国際競走が視野に入り、巻き返しに成功したアンソニーヴァンダイクは「やはり良馬場がいい」と、ブリーダーズカップターフ(11月2日、G1・アメリカ)がターゲットになりそうだ。
上位を独占したオブライエン勢3頭
本レース8勝目を挙げたオブライエン調教師とムーア騎手の名コンビ
表彰式で喜びの表情を見せるマジカル関係者
対照的に、悔しそうな表情が並んだのが4着のディアドラ陣営だった。後方2番手からレースを進めたが、直線で前が壁に。進路を外に切り替えてからは際立つ脚で追い上げたものの、前を捕らえきれず、ロスが響いた。それでも英ダービー馬(アンソニーヴァンダイク)とは半馬身差だった。
「最後の直線以外はベリーハッピーでした。上手くさばけていれば、もっと(前に)近づけたと思います。ベストを尽くしたんですが、勝てなくてすみません」(マーフィー騎手)
前走のナッソーS(G1・イギリス。1着)に続いてディアドラに騎乗したO.マーフィー騎手は「スーパーコンディション(素晴らしい状態)だった」と振り返り、改めて能力の高さに言及した。
「皆さんも、日本の馬は最高に質が高いということを認識しないといけません」(マーフィー騎手)
出走馬が引き揚げてきたパドックで流れるリプレイを見ながら、橋田満調教師は唇をかんだ。
「一度下げて外に出した分の差がゴール前につながりましたね。すごい脚を使っているんですが……。だけど、これで男馬と混じっても通用するということが分かりました。これを踏まえて今後を決めたいと思います。マジカルは今のトップの3頭のうちの1頭ですから」(橋田調教師)
敗戦のなかにも、4か月超に及ぶヨーロッパ遠征で得た確かな手応えを見出したようだ。
猛追を見せて4着のディアドラ(左、赤い帽子)
ディアドラとマーフィー騎手
森田和豊オーナー代理が、アイルランド神話に登場する悲劇のヒロインの名から名付けたというディアドラ。その由来に導かれるかのように、日本調教馬初の舞台に足を踏み入れた。
「これだけやれたらヨーロッパで通用すると思いますし、またどこかでチャンスがあると思います。うちの馬でなくても日本の馬がヨーロッパで活躍すると思いますし、こういう挑戦をして日本のためになればいいかな」(森田オーナー代理)
オーナーや厩舎の信念とともにヨーロッパで挑戦を続けるタフネス。日本の後進に示す確かな蹄跡はどこに続いていくのだろうか。
文:橋本 樹理
パドックから本馬場へ向かうディアドラとマーフィー騎手
果敢な挑戦を続けるディアドラ関係者
4着 ディアドラ 橋田 満 調教師のコメント
「状態も気配も良い感じでしたが、直線で内が開かずに外へ切り替えた分、遅れてしまいました。負けはしましたが、良い競馬ができたので、それを踏まえて今後のことはまた考えます。ご声援ありがとうございました」
4着 ディアドラ O.マーフィー 騎手のコメント
「良く走ってくれました。ペースも速く厳しいレースで、そして直線でスペースがなくなってしまいました。もっと差を詰められたと思います。ベストを尽くしましたが、勝てなくてごめんなさい。応援ありがとうございました」
2019年9月14日(土) レパーズタウン競馬場(アイルランド) | ||
5R |
第44回 アイリッシュチャンピオンステークス(G1) |
3歳以上,定量 | 2000m 芝・左 | |||
賞金総額 | : | 1,250,000ユーロ | 発走 16:15 (現地時間) | |
1着賞金 | : | 725,000ユーロ | 芝:良 |
着順 | 馬番 (ゲート) |
馬 名 (生産国) | 性 齢 |
負 担 重 量 |
騎手 | タイム ・ 着差 |
馬 体 重 (kg) |
調教師 (調教国) | 単 勝 人 気 |
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1 | 5 (03) | マジカル(IRE) | 牝4 | 59.0 | R.ムーア | 2:06.49 | A.オブライエン(IRE) | 1 | |
2 | 4 (05) | マジックワンド(IRE) | 牝4 | 59.0 | S.ヘファナン | 2 1/4 | A.オブライエン(IRE) | 7 | |
3 | 6 (02) | アンソニーヴァンダイク(IRE) | 牡3 | 57.5 | W.ローダン | アタマ | A.オブライエン(IRE) | 6 | |
4 | 3 (06) | ディアドラ(JPN) | 牝5 | 59.0 | O.マーフィー | 1/2 | 橋田 満(JPN) | 3 | |
5 | 7 (07) | ヘッドマン(GB) | 牡3 | 57.5 | J.ワトソン | 1/2 | R.チャールトン(GB) | 5 | |
6 | 8 (04) | マッドムーン(IRE) | 牡3 | 57.5 | C.ヘイズ | 1 1/4 | K.プレンダガスト(IRE) | 4 | |
7 | 1 (08) | エラーカム(GB) | 牡4 | 60.0 | J.クローリー | 2 1/4 | M.ジョンストン(GB) | 2 | |
8 | 2 (01) | ハンティングホーン(IRE) | 牡4 | 60.0 | E.マクナマラ | 1/2 | A.オブライエン(IRE) | 8 |
単勝 | 5 | 150円 | 1番人気 | 馬連 | 4-5 | 2,480円 | 7番人気 | 馬単 | 5-4 | 2,990円 | 11番人気 |
複勝 |
5 4 6 |
110円 470円 230円 |
1番人気 7番人気 6番人気 |
ワイド |
4-5 5-6 4-6 |
720円 310円 1,820円 |
10番人気 3番人気 17番人気 |
3連複 | 4-5-6 | 3,090円 | 12番人気 |
3連単 | 5-4-6 | 10,030円 | 35番人気 |
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