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レース前日に、右前脚の不安でミスタースタニングが出走を取り消されて9頭立てとなり、下馬評では地元香港のビートザクロックと、オーストラリアのサンタアナレーンの一騎打ちの様相となった。単勝オッズは、日本ではビートザクロックが、香港ではサンタアナレーンがそれぞれ1倍台の支持で1番人気となった。
ミスタースタニングが不在となったことで、変わったのはオッズ面だけではない。確たる逃げ馬は不在で、逃げるのは前走(香スプリントC)同様にミスタースタニングかどうかと見られていたほど。どの馬がレースを引っ張るのかに注目が集まった。
目隠しをされ、最初にゲートに促されたピンウースパークだけが少し時間を要したが、以降の8頭はスムーズに枠入り。最後にラタンがゲート収まると、ほどなくゲートが開いた。9頭がややバラついてのスタートになり、ウィナーズウェイがやや立ち遅れ気味で後方に置かれる形になった。また、大外枠のサンタアナレーンもスタートは五分に出たが、内へと進路を取りながら控えて後方に下げた。好スタートを切ったのはラタンで、これにリトルジャイアントとビートザクロックが続くが、誰も積極的に前に行かないと見るやラタンの鞍上・C.スコフィールド騎手はパートナーを軽く促して先行させた。3コーナー手前でナックビーナス(牝6歳。美浦・杉浦宏昭厩舎)も先行勢に取り付く。これと入れ替わるように、ビートザクロックは、スッと息を入れるように4番手にまで位置を下げた。実はここが勝負の分水嶺だった。
香港チャンピオンズデーの舞台となったシャティン競馬場
最後の直線で力強く伸びたビートザクロック(馬番3)が優勝
前走・香スプリントCのビートザクロックは、この時点で前を行くミスタースタニングに照準を合わせ、ぴったりとマークしたことで、最後の最後で直後から伸びたラタンに屈した。今回は逆に“狙う位置”。自身に適切なビートを刻みながら、キリキリと矢を引くように、決め手を繰り出すタイミングをうかがっていた。
迎えた直線。逃げるラタンにナックビーナスが馬体を寄せに行くが、残り200メートルで逆に根負けするかのように失速する。かわって外からじわじわと伸びてきたのがビートザクロックだった。懸命に内のラタンも粘るも残り100メートルでの脚色の違いは明確だった。ラタンに半馬身差をつけてビートザクロックが先頭でゴール。この2頭の争いにリトルジャイアントも加わろうとするが時既に遅し。大外に回したサンタアナレーンは、いつもの爆発的な脚を見せることができず4着が精一杯だった。
「うまく行ったと思った。でも、今日は相手が一枚上手だった」
金星を逃したラタンのスコフィールド騎手は悔しさをにじませながらも、笑顔でレースを振り返った。
地元唯一のG1馬として意地を見せたビートザクロック。鞍上のモレイラ騎手も、12月の香港国際競走では0勝に終わっているだけに、久々に国際的なステージでの勝利となった。
「パーフェクトに乗れました。ラタンは最後まで諦めず、てこずりましたが、ビートザクロックの勇敢さがこれに勝ってくれました」
3コーナーで控えた点についても、モレイラ騎手は首肯する。
「あそこで追いかけていたらラタンのスタミナにやられていたと思います。あの馬はマイルでも強い馬ですからね。でもスプリンターの先行スピードはありません。だから離されることなく、少し溜められると判断しました」
ビートザクロックはこれで2018-2019年シーズンのG1・2勝目。今シーズンの香港の短距離G1はこれが最後となる。海外も含めて、今後のプランについてJ.サイズ調教師は話す。
「海外はないでしょう。蒸し暑くもなりますし、このまま休養に入るのが彼にとってもいいと思います」
時計の針は、すでに来シーズンを刻んでいる。
文:土屋 真光
愛馬の労をねぎらうモレイラ騎手
優勝馬の関係者の面々
日本から参戦のナックビーナスは6着
6着 ナックビーナス 杉浦 宏昭 調教師のコメント
「暑さが応えたのかいつもより大人しい感じでした。スタートは、いつもは上手なのですが出負けしました。道中は良かったのですが、最後に調整の難がでたのかな」
6着 ナックビーナス 武 豊 騎手のコメント
「もう少しいいスタートをと思っていたが、馬が落ち着きすぎていました。リカバリーは上手くいきました。ラスト200メートルくらいまではよく頑張ってくれましたが、最後は力尽きてしまいました」
2019年4月28日(日) シャティン競馬場(香港) | ||
6R |
第41回 チェアマンズスプリントプライズ(G1) |
3歳以上 定量 | 1200m 芝・右 | |||
賞金総額 | : | 16,000,000香港ドル | 発走 15:20 (現地時間) | |
1着賞金 | : | 9,120,000香港ドル | 芝:良 |
着順 | 馬番 (ゲート) |
馬 名 (生産国) | 性 齢 |
負 担 重 量 |
騎手 | タイム ・ 着差 |
馬 体 重 (kg) |
調教師 (調教国) | 単 勝 人 気 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 3 (05) | ビートザクロック(AUS) | せん5 | 57.0 | J.モレイラ | 1:08.26 | 509 | J.サイズ(HK) | 1 |
2 | 5 (08) | ラタン(NZ) | せん5 | 57.0 | C.スコフィールド | 1/2 | 523 | R.ギブソン(HK) | 3 |
3 | 4 (03) | リトルジャイアント(NZ) | せん6 | 57.0 | C.ホー | 3/4 | 470 | D.ホール(HK) | 5 |
4 | 1 (09) | サンタアナレーン(AUS) | せん6 | 57.0 | H.ボウマン | 2 1/4 | 537 | A.フリードマン(AUS) | 2 |
5 | 8 (04) | ピンウースパーク(NZ) | せん6 | 57.0 | K.リョン | 4 1/4 | 604 | T.ユン(HK) | 7 |
6 | 10 (07) | ナックビーナス(JPN) | 牝6 | 55.5 | 武 豊 | 4 1/2 | 523 | 杉浦 宏昭(JPN) | 4 |
7 | 7 (01) | ウィナーズウェイ(AUS) | せん6 | 57.0 | K.ティータン | 6 | 506 | A.クルーズ(HK) | 8 |
8 | 9 (06) | ビドラ(AUS) | 牝6 | 55.5 | J.ボウディッチ | 6 3/4 | 542 | L.ケネウェル(AUS) | 9 |
9 | 6 (02) | エンゾーズラド(AUS) | せん6 | 57.0 | J.マクドナルド | 13 1/4 | 575 | M.ピットマン(NZ) | 6 |
取消 | 2 | ミスタースタニング(AUS) | せん6 | 57.0 | Z.パートン | 498 | F.ロー(HK) |
単勝 | 3 | 180円 | 1番人気 | 馬連 | 3-5 | 400円 | 2番人気 | 馬単 | 3-5 | 590円 | 3番人気 |
複勝 |
3 5 4 |
110円 210円 420円 |
1番人気 3番人気 5番人気 |
ワイド |
3-5 3-4 4-5 |
200円 440円 860円 |
2番人気 5番人気 10番人気 |
3連複 | 3-4-5 | 1,600円 | 5番人気 |
3連単 | 3-5-4 | 3,600円 | 9番人気 |