現地時間20日16時40分、日本時間14時40分発走予定だったコーフィールドカップ(G1・オーストラリア、コーフィールド競馬場、芝2400メートル)。パドックは比較的大人しく回っていたジョンスノー(牡5歳)が、ゲートイン後、前扉を開けて飛び出してしまい、発走時刻が少し遅れた。
馬場状態は前日まではGood4(稍重)。当日は未明に降り出した雨が一時は止んだものの、レース直前になって再び降ったり止んだりを繰り返し、最終的にはSoft6(重)。ジョンスノーがゲートインをし直してすぐにスタートが切られた。
枠順抽せんでは出走回避馬が出た場合にのみ出走が可能となる補欠馬2頭を加え、20の枠番が振り分けられた。結局、回避馬は出なかったため補欠馬に割り当てられた5番と10番の枠はそれぞれ外の馬が内へ詰める。更に最内1番枠は使用せず、18頭が枠入りする。つまり、1番が当たったドゥレット(せん6歳)が2番枠、2番のガリックチーフテン(牡5歳)が3番枠と続き、6番のキングズウィルドリーム(せん4歳)は7番枠となるところが補欠馬用の5番枠の分、詰められるため6番枠のまま。また、もう1頭の補欠馬用の12番も消滅するため、13番のチェスナットコート(牡4歳、栗東・矢作芳人厩舎)から外の馬はそれぞれ1つ内の枠番へ。20番のソールインパクト(牡6歳、美浦・戸田博文厩舎)が19番枠という形で全18頭がゲートインした。
スタートはほぼ一斉だったが、外でベストソリューション(牡4歳)が左右の馬に挟まれるようにして後方へ下がった。この時の心境を騎乗したP.コスグレイヴ騎手はレース後、次のように語っている。
「正直、一瞬『しまった!』と思いました。でも若い時と違い折り合いがついてコントロールの利くようになっているし、先行したかったので積極的に前へ動かそうと考えました」
1周目のスタンド前の直線では内からホームズマン(せん4歳)が先頭に立つ構え。しかし、外から掛かり気味になったエースハイ(牡4歳)がかわし、結局この馬が引っ張る形でコーナーへ向いた。
3番手の内にヴァンジュールマスク(せん6歳)、4番手は外にソールインパクト。その後ろの内にドゥレット。その横には本来追い込み一辺倒のザクリフスオブモハー(牡4歳)がいつもより前の位置につけている。
その外にチェスナットコートがいて、更にその外には早くもベストソリューションが番手を上げている。
チェスナットコート
ソールインパクト
日本馬2頭は積極的に前めのポジションをうかがう
先行勢はこの隊列で最初のコーナーを回り切ろうかというところで、ベストソリューションが少々強引にチェスナットコートの前に割り込む。チェスナットコートは内にヴァンジュールマスクがいたため一瞬、行き場を失いそうになるが、川田将雅騎手が上手に抑え、甚大な被害には至らなかった。ちなみにレース後に出された裁決リポートによると、ベストソリューションのコスグレイヴ騎手は20日深夜から30日深夜まで、トータル11日間の騎乗停止となった。
ラップタイムはスタート直後の13秒48から2ハロン目は11秒73と通常のレースによる見られる数字を刻んだが、その後は12秒89を挟んで以降、しばらく13秒が続く。レース中盤には14秒台まで緩む遅い流れとなった。
逃げるエースハイの後ろにソールインパクト、ホームズマン、ベストソリューションと続き、チェスナットコートは6番手。その半馬身後ろ、最内を回るのがドゥレットで、更に後ろにザクリフスオブモハー。その少し後ろは外にザタージマハル(牡4歳)がいて、内にキングズウィルドリーム。レッドヴァードン(牡5歳)やヤングスター(牝4歳)はさらにその後方で、流れを考えると、少々厳しい位置取りのまま後半に突入した。
このあたりでの心境を、ベストソリューションを管理するS.ビン・スルール調教師は後に次のように語っている。
「ジョッキーとは『3番手くらいで競馬をしたい』と話していた。だから上々だと思って見ていました」
コーフィールド競馬場は三角形というか、五角形というか、少し変わった形状をしており、向こう正面のカーブから最終コーナーへ差し掛かるまで、直線で結ばれている。
遅い流れを我慢し切れないとばかりにここで動いたのがザタージマハルのJ.マクドナルド騎手。外をまくって一気に先頭まで進出した。
この時、ただ1頭、これについて上がって行ったのがベストソリューション。再びコスグレイヴ騎手の弁。
「ハンデを背負っていたし(トップハンデの57.5キログラム)、ゴール前のスプリント勝負になっては厳しいと思っていたので、ついて行く判断をしました」
結果、この判断が吉と出る。
ザタージマハルを完全に行き切らせずに一緒に上がった事で、インコースを死守。最終コーナーをザタージマハルの内、内ラチ沿いから先頭に立つと、他馬に先んじて早目に抜け出した。
直線入り口、その後ろで2番手争いを演じたのは同じウィリアムズ馬主系の3頭。ザタージマハルをホームズマンとザクリフスオブモハーが次々とかわす。
中でもホームズマンの伸び脚が目立ち、先に抜け出したベストソリューションに1完歩ごとに迫る。しかし、前半が遅かった分、最後は先に抜け出した方に分があった。ほぼ馬体を並べ、頭の上げ下げの勝負になったものの、ベストソリューションが0.1馬身早くゴール板を駆け抜けた。
最内(右端)のベストソリューションが
ホームズマン(右から2頭目)の猛追をぎりぎり凌いだ
日本馬の2頭は最後コーナー前の
勝負どころで離されてしまった
S.ビン・スルール調教師(右端)は
これが2度目のコーフィールドカップ制覇
勝ちタイムは2分33秒72で、3着がザクリフスオブモハー、4、5着はドゥレット、ザタージマハル。前走でウィンクスを苦しめ、上位人気に推されたキングズウィルドリームとヤングスターはいずれも後方から差を詰めていたものの前有利な流れで追い込み届かず、それぞれ6、7着。日本のチェスナットコートは道中の不利をうまくかわし追走していたかに思えたが、勝負どころから手応えが怪しくなり、ソールインパクトと共に残念ながら13、14着に敗れた。
勝利騎手のコスグレイヴは自身初のコーフィールドカップ制覇。調教師のS.ビン・スルールは2008年のオールザグッド以来、2度目の制覇となり、嬉しそうに次のように語った。
「ブリリアントなレースをまた勝つ事が出来て非常にハッピーだ。この馬はダービートライアルやドイツでも重い馬場で良い競馬をしていたので、雨でソフトになったグランドも合っていたのだと思う」
勝ったベストソリューションは勿論、初制覇。2歳時から期待は大きかった馬。2016年のクリテリウムドサンクルーではヴァルトガイストの2着で、後の愛ダービー馬カプリに先着。4歳となった今年は春のドバイシーマクラシックでホークビルの5着に敗れたが、レース内容は悪くなく、日本ダービー馬レイデオロとも僅差だった。夏になってからは本格化。12ハロンのプリンセスオブウェールズS(G2)で着差以上に強い勝ち方をすると、その後、ドイツへ遠征。ベルリン大賞、バーデン大賞とG1を連勝。そしてオーストラリア遠征となった今回のコーフィールドカップをも勝利し、重賞4連勝、G1を3連勝となった。
G1連勝中といえ、いずれもヨーロッパの中ではワンランク劣るドイツのものだったし、トップハンデに加え、外枠が当たった事もあり、ファンの皆様も買い辛いところだっただろう。しかし、終わってみればドイツのG1勝ちが後に凱旋門賞に駒を進めるデフォーや、イキートス、チンギスシークレットらを相手に約60キログラムを背負って完勝していた事を思えば、今回の57.5キログラムというのも決して酷な斤量ではなかったという事だろう。スルール調教師は言う。
「次は予定通りメルボルンカップへ向かいます。使われて更に良くなるでしょうし、3200メートルも問題ないと思います。鞍上は再びパット(コスグレイヴ騎手)に来てもらいます。私がまだ勝てていなくて今後勝ちたいレースはジャパンカップ、ブリーダーズカップクラシック、そしてメルボルンカップです。このチャンスを何とか生かしたいですね」
なお、昨年なら56キログラム以上でコーフィールドカップを制した馬の場合、メルボルンカップでもノーペナライズ(ハンデが増えない)というルールがあったが、今年はそれが廃止。果たしてメルボルンカップは何キログラムのハンデになるのか。注目したい。
文:平松 さとし
13着 チェスナットコート 矢作芳人調教師のコメント
「休み明けの影響で道中力んで走っており、仕掛けた時の反応の鈍さも感じました。レース後のダメージもないので、次走はかなり良い状態になると思います」
13着 チェスナットコート 川田将雅騎手のコメント
「スタートも良く、理想的な形で競馬を始めることができました。終始勝馬を見ながら道中進めていただのですが、勝負所で置いて行かれる形になりました。久々の競馬が影響したと思いますので、メルボルンカップに向けて更に良い状態になってくれればと思います」
14着 ソールインパクト 戸田博文調教師のコメント
「最終コーナーまで良い流れでレースを進めることができましたが、最後は瞬発力勝負になり、長く良い脚を使うソールインパクトの脚質には厳しい展開になりました」
14着 ソールインパクト 坂井瑠星騎手のコメント
「スタート後、良い位置でレースを進めることができましたが、終盤ペースが上がったときに他馬に付いていくことができませんでした。今回騎乗機会を与えてくださった関係者の皆様に感謝しております」
2018年10月20日(土) コーフィールド競馬場(オーストラリア) | ||
8R |
第141回 コーフィールドカップ(G1) |
3歳以上 ハンデキャップ | 2400m 芝・左 | |||
賞金総額 | : | 5,000,000豪ドル | 発走 16:40 (現地時間) | |
1着賞金 | : | 3,000,000豪ドル | 天候:小雨 芝:重 |
着順 | 馬番 (ゲート) |
馬 名 (生産国) | 性 齢 |
負 担 重 量 |
騎手 | タイム ・ 着差 |
馬 体 重 (kg) |
調教師 (調教国) | 単 勝 人 気 |
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1 | 1 (15) | ベストソリューション(IRE) | 牡4 | 57.5 | P.コスグレイヴ | 2:33.72 | S.ビン・スルール(GB) | 4 | |
2 | 13 (04) | ホームズマン(USA) | せん4 | 53.0 | B.メルハム | 0.1 | L.ハウリー(AUS) | 7 | |
3 | 2 (03) | ザクリフスオブモハー(IRE) | 牡4 | 56.5 | H.ボウマン | 1.85 | A.オブライエン(IRE) | 3 | |
4 | 8 (01) | ドゥレット(GB) | せん6 | 54.5 | D.ダン | 2.85 | A.ボールディング(GB) | 13 | |
5 | 7 (17) | ザタージマハル(IRE) | 牡4 | 55.0 | J.マクドナルド | 3.6 | L.ハウリー(AUS) | 12 | |
6 | 14 (05) | キングズウィルドリーム(IRE) | せん4 | 53.0 | C.ウィリアムズ | 3.8 | D.ウィアー(AUS) | 2 | |
7 | 18 (09) | ヤングスター(AUS) | 牝4 | 51.5 | K.マカヴォイ | 4.55 | C.ウォーラー(AUS) | 1 | |
8 | 16 (02) | ガリックチーフテン(FR) | 牡5 | 52.5 | D.イェンダル | 4.65 | D.ウィアー(AUS) | 14 | |
9 | 10 (06) | ヴァンジュールマスク(IRE) | せん6 | 54.0 | P.モロニー | 4.75 | M.モロニー(AUS) | 17 | |
10 | 11 (10) | ベンチュラストーム(IRE) | せん5 | 54.0 | R.ベイリス | 5.5 | D&Bヘイズ&T.デイバーニッグ(AUS) | 15 | |
11 | 9 (08) | レッドヴァードン(USA) | 牡5 | 54.0 | Z.パートン | 6.5 | E.ダンロップ(GB) | 9 | |
12 | 5 (14) | サウンドチェック(GER) | 牡5 | 55.5 | J.チャイルズ | 10.25 | M.モロニー(AUS) | 8 | |
13 | 3 (11) | チェスナットコート(JPN) | 牡4 | 55.5 | 川田 将雅 | 10.45 | 矢作 芳人(JPN) | 5 | |
14 | 15 (18) | ソールインパクト(JPN) | 牡6 | 53.0 | 坂井 瑠星 | 11.2 | 戸田 博文(JPN) | 10 | |
15 | 6 (07) | エースハイ(AUS) | 牡4 | 55.0 | D.オリヴァー | 11.4 | D.ペイン(AUS) | 6 | |
16 | 17 (16) | ナイツウォッチ(NZ) | せん5 | 52.0 | B.アレン | 12.4 | D.ウィアー(AUS) | 11 | |
17 | 12 (12) | マイティーボス(AUS) | 牡4 | 53.5 | T.クラーク | 13.9 | M.プライス(AUS) | 18 | |
18 | 4 (13) | ジョンスノー(NZ) | 牡5 | 55.5 | D.レーン | 14.65 | M.ベイカー&A.フォースマン(NZ) | 16 | |
取消 | 19 | パトリックエリン(NZ) | せん7 | 52.0 | C.ブラウン | C.ウォーラー(AUS) | |||
取消 | 20 | ジャーメー(IRE) | せん5 | 50.0 | C.パリッシュ | D&Bヘイズ&T.デイバーニッグ(AUS) |
単勝 | 1 | 700円 | 4番人気 | 馬連 | 1-13 | 6,750円 | 23番人気 | 馬単 | 1-13 | 11,800円 | 44番人気 |
複勝 |
1 13 2 |
250円 430円 250円 |
3番人気 8番人気 4番人気 |
ワイド |
1-13 1-2 2-13 |
2,670円 970円 1,590円 |
29番人気 6番人気 17番人気 |
3連複 | 1-2-13 | 13,190円 | 37番人気 |
3連単 | 1-13-2 | 80,160円 | 234番人気 |