雨にたたられた週半ばとは一転、快晴の空の下、クイーンエリザベスII世カップは行われた。気温は25度、馬場状態は良(グッドトゥファーム)。出走予定馬8頭にアクシデントはなく、全ての馬がパドックに現れた。
装鞍所に入る前は少しうるさそうな素振りをみせたネオリアリズム(牡6歳、美浦・堀宣行厩舎)だが、パドックでは落ち着いていた。茶色いメンコ(耳覆い)を被され、一見、2人曳きのようにみせるが、金子晋二郎調教助手は寄り添っているだけ。実際には1人で曳けていたことが、同馬の落ち着きぶりを物語っていた。そしてその様子はJ.モレイラ騎手が乗った後も変わらなかった。
その他の各馬も、デザインズオンローム(せん7歳、J.ムーア厩舎)が時おりクビを上下に激しく動かしていたくらいで、概ね落ち着いていた。
馬場入りしてからネオリアリズムの発汗が多少目立ちだしたものの、これも気合が入ってきたということだろう。同馬のメンコが外され、最後にパキスタンスター(せん4歳、A.クルーズ厩舎)が入ってしばらくするとゲートが開いた。
ザユナイテッドステイツ(牡7歳、R.ヒックモット厩舎)、ブレイジングスピード(せん8歳、A.クルーズ厩舎)、パキスタンスターらが好スタートを切ったのとは対照的に、O.ペリエ騎手の乗るフランスのディクトン(牡4歳、G.ビエトリーニ厩舎)が出遅れた。そして、ネオリアリズムも決して良いとは言えないスタート。最初のコーナーでは窮屈になる場面もあり、後方に控える形となった。
本馬場に姿を現したネオリアリズム
スタート。ディクトン(4番ゲート)がやや出遅れる
ハナへ行ったのはB.プレブル騎手騎乗のザユナイテッドステイツ。2番手の内にパキスタンスター、外にブレイジングスピードが並んで最初のコーナーを回る。4番手が1番人気でH.ボウマン騎手騎乗のワーザー(せん5歳、J.ムーア厩舎)、その内にディクトン。その後ろに位置したのがネオリアリズム、シークレットウェポン(せん7歳、C.イプ厩舎)。少し離れた最後方をデザインズオンロームが追走する隊列となった。
前半の800mを通過する頃には馬群がぎゅっと詰まって先頭のザユナイテッドステイツから最後方のデザインズオンロームまでが7馬身くらいの間に収まった。それもそのはず、800mの通過ラップは54秒80。戦前から逃げ馬不在で遅い流れになるであろうことは予想されていたが、それにしても遅い。
この流れを打ち破ったのがモレイラ騎手とネオリアリズムだ。前半1000m地点通過を前に外から一気に進出。1000mを過ぎてすぐの地点ではザユナイテッドステイツをもかわしまたたく間にハナを奪ってみせた。
この時点でワーザーの鞍上ボウマン騎手はまだ必死に抑えていた。これがレースの明暗を分けることになる。
先頭に立ったモレイラ=ネオリアリズムのコンビは、一旦ペースを落とそうという素振りを全く見せない。そのままの勢いで加速していくと、馬群が少しずつ縦長になった。
ここで初めてワーザーの鞍上の手も動く。パキスタンスターの上でもS.デソウサ騎手がついていこうとするしぐさをみせるが、同馬は惜敗が多いことでも分かるように瞬時に反応できるタイプではない。鞍上の手の動きに反して少し置いていかれそうになってしまった。
ネオリアリズムが先頭で4コーナーを回り直線に向く。2番手はブレイジングスピードでその外にやっとワーザーが迫ってきた。パキスタンスターはさらにその外から必死に追い上げようとする。しかし、モレイラ騎手に操られたネオリアリズムが粘りに粘る。序盤が極端に遅かったため、余力は充分だ。ラストの800mを22秒39−22秒41でまとめられては後続勢が差し切るのは容易ではない。最後はパキスタンスターが驚異の追い上げをみせ2着に上がったが、クビ差まで迫るのが精一杯。ワーザーはネオリアリズムから半馬身差の3着だった。
後続が詰め寄ろうとするも、ネオリアリズム(左)の脚色に衰えは見えない
ネオリアリズムが香港の地で自身初のビッグタイトルを奪取
勝ち時計は2分04秒59。先述したように序盤の800mが54秒80だったのに対し、上がりのそれは44秒80。ぴったり10秒も違うのだから後ろにいた馬では追いつけない。前半の流れを察知して後半をコントロールしたモレイラ騎手の作戦勝ちということだろう。もちろん、鞍上の意図にうまく順応したネオリアリズムの高い能力が、勝利を呼び寄せたことは言うまでもない。
文:平松さとし
半兄・リアルインパクトに続く海外G1勝利となったネオリアリズム
レース後の表彰式で檀上に並ぶ関係者の面々
1着 ネオリアリズム 堀宣行調教師のコメント
「昨年の12月に続いて2回目の香港遠征になりましたが、今回は馬の学習能力にも助けられ、前回より良いコンディションで出走させることができ、良いレースをお見せすることができました。今後については、日本に帰ってから馬の状態を見て、レースを選択していきたいと思います」
1着 ネオリアリズム J.モレイラ騎手のコメント
「先手を取るつもりでいましたが、スタートが良くなかったので、我慢させなくてはなりませんでした。向正面でペースが遅くなったので、外に出して前に行かせました。直線では良い脚を使う自信があり、実際にそのようになりました」
2017年4月30日(日) シャティン競馬場(香港) | ||
8R |
第43回 クイーンエリザベス2世カップ(G1) |
3歳以上 定量 | 2000m 芝・右 | |||
賞金総額 | : | 20,000,000香港ドル | 発走 16:35 (現地時間) | |
1着賞金 | : | 11,400,000香港ドル | 芝:良 |
着順 | 馬番 (ゲート) |
馬 名 (生産国) | 性 齢 |
負 担 重 量 |
騎手 | タイム ・ 着差 |
馬 体 重 (kg) |
調教師 (調教国) | 単 勝 人 気 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 5 (06) | ネオリアリズム(JPN) | 牡6 | 57.0 | J.モレイラ | 2:04.59 | 510 | 堀 宣行(JPN) | 2 |
2 | 8 (03) | パキスタンスター(GER) | せん4 | 57.0 | S.デソウサ | クビ | 514 | A.クルーズ(HK) | 3 |
3 | 1 (02) | ワーザー(NZ) | せん5 | 57.0 | H.ボウマン | 1/2 | 469 | J.ムーア(HK) | 1 |
4 | 4 (07) | ブレイジングスピード(GB) | せん8 | 57.0 | N.カラン | 1 1/4 | 532 | A.クルーズ(HK) | 5 |
5 | 6 (05) | ザユナイテッドステイツ(IRE) | 牡7 | 57.0 | B.プレブル | 3 1/2 | 522 | R.ヒックモット(AUS) | 7 |
6 | 2 (08) | シークレットウェポン(GB) | せん7 | 57.0 | Z.パートン | 3 1/2 | 506 | C.イプ(HK) | 4 |
7 | 7 (04) | ディクトン(GB) | 牡4 | 57.0 | O.ペリエ | 6 3/4 | 481 | G.ビエトリーニ(FR) | 6 |
8 | 3 (01) | デザインズオンローム(IRE) | せん7 | 57.0 | T.ベリー | 8 1/4 | 483 | J.ムーア(HK) | 8 |
単勝 | 5 | 330円 | 2番人気 | 馬連 | 5-8 | 1,040円 | 4番人気 | 馬単 | 5-8 | 1,920円 | 9番人気 |
複勝 |
5 8 1 |
120円 130円 110円 |
2番人気 3番人気 1番人気 |
ワイド |
5-8 1-5 1-8 |
330円 170円 180円 |
5番人気 1番人気 2番人気 |
3連複 | 1-5-8 | 500円 | 1番人気 |
3連単 | 5-8-1 | 3,970円 | 14番人気 |