芝マイル戦としては、世界最高賞金額となった香港マイル。地元・香港での関心は、なんといってもエイブルフレンド(せん7歳。2014年の本競走勝ち馬)の復活なるか、という点に集約されていた。直前に行われた香港スプリントで、エアロヴェロシティ(せん8歳、2014年の香港スプリント優勝馬)が健在ぶりを示したことも手伝って、現地・香港では一時、2倍台の単勝オッズ(最終的には現地オッズ3.2倍の1番人気。JRAのオッズでは4.3倍の2番人気)を示すほどだった。
12月とは思えない強烈な日差しも和らいだ中、レースはスタートの時を迎えた。ビューティーフレーム(せん6歳)が好スタートを切り、大方の予想通りにレースを先導。直後にネオリアリズム(牡5歳、美浦・堀宣行厩舎)と、スタートが合わなかったものの、鞍上に気合をつけられてポジションを上げたロゴタイプ(牡6歳、美浦・田中剛厩舎)、そしてコンテントメント(せん6歳)の3頭が2番手集団を形成する。香港のオッズでは人気を集めていた地元馬のヘレンパラゴン(牡4歳)とビューティーオンリー(せん5歳)は後方から数えて4、5番手、エイブルフレンドは、大外14番枠からの発走で無理をせず、ゆったりと後方2〜3番手を追走。サトノアラジン(牡5歳、栗東・池江泰寿厩舎)が殿(しんがり)を進んだ。
隊列に大きな動きのないまま、4コーナーから直線を迎えると、残り200m手前でまずネオリアリズムが先頭に立つ。内ラチ沿いを進んでいたロゴタイプはネオリアリズムの外に進路を求め、馬体を併せにいく。さらにその外からコンテントメントとジョイフルトリニティ(せん4歳)が襲い掛かり、先頭は横一線に。これらをまとめてかわす切れ味を見せたのが、4コーナーで外に持ち出したビューティーオンリー。ヘレンパラゴンを従えるようにグイグイと伸びると、残り150m付近で先頭に立ち、大きくガッツポーズのZ.パートン騎手とともにゴールに飛び込んだ。エイブルフレンドも大外から伸びを見せたが、往時の爆発力ほどではなく6着に敗れた。
ビューティーオンリーが半馬身差の勝利
意気揚々と引き上げてくるZ.パートン騎手
引き上げてくる馬道で「イエス!!」と大きく雄たけびを上げたパートン騎手。
「僕らは、今まさにこれからが、この馬のベストを見始めることになるんだと思う。それだけ充実ぶりが素晴らしかった。良馬場ならどこまでもいい結果を出せると思いますよ」
パートン騎手は香港スプリントに続いてこの日、G1を2勝。
「今日は素晴らしい日になりました」
ニコル夫人のお腹にいる2人目の子供が、1月後半から2月に産まれるという。新しいファミリーに最高のプレゼントとなった。
一方、日本の3頭の中ではロゴタイプが最後まで健闘し5着に。
「今日のロゴタイプはすごく良かった。たぶん最近では一番。背中もものすごく柔らかくて、若いときのフォームで走れたと思う。直線で(ビューティーフレームが下がって)進路がなくなって、外に持ち出したのがもったいなかった」とM.デムーロ騎手。
サトノアラジンは外から伸びてエイブルフレンドには迫ったが7着。川田将雅騎手は「直線も頑張ってくれましたが、世界は強いということでしょうか。」と唇を噛んだ。
一旦は先頭に立ったネオリアリズムだったが、最後の踏ん張りが利かず9着。堀厩舎のほかの2頭が木曜日に追い切られたのに対し、別メニューで金曜日に追い切られた事情が少なからず影響したのだろうか。
「いい具合でレースに送り出せましたが、もうひと息でした。でも、来年はこの馬で安田記念に行きたいですね」とリップサービスをしてくれたのは、ヘレンパラゴン(2着)のJ.ムーア調教師。この日の最終レースでは、転入初戦のクイーンズランドダービー(G1/オーストラリア)優勝馬イーグルウェイ(せん4歳)が快勝。国際競走勝ちはなく、厩舎のエース格とも言えるエイブルフレンドも敗れたが、この日は終始上機嫌だった。
初の国際G1勝ちを果たしたビューティーオンリー
表彰式
文:土屋真光
5着 ロゴタイプ 田中 剛 調教師 のコメント
「ゲートで待たされてしまい馬がリラックスしすぎてしまいました。この大舞台で狭いところをこじ開け良い走りを見せてくれましたが、悔しいです。出遅れてこの差ですから、ロゴタイプの強さは証明できたと思います。」
5着 ロゴタイプ M.デムーロ 騎手 のコメント
「馬はすごく頑張りました。ゲートを長く待たされた影響がありました。直線はスペースがなく、スムーズならもっとやれていたと思います。」
7着 サトノアラジン 池江 泰寿 調教師 のコメント
「後方に待機して直線外に出す自分の競馬はできたと思います。少し馬場が合わなかったように見えました。もう少しペースが速くなってくれれば良かったですね。馬の状態は悪くはなかったと思います。」
7着 サトノアラジン 川田 将雅 騎手 のコメント
「スムーズなこの馬らしい競馬に徹して直線も頑張ってくれましたが、世界は強いということでしょうか。でも良く頑張ってくれました。」
9着 ネオリアリズム R.ムーア 騎手 のコメント
「最後の直線で馬が疲れてしまいました。」
ロゴタイプ(M.デムーロ騎手)
サトノアラジン(川田将雅騎手)
ネオリアリズム(R.ムーア騎手)
2016年12月11日(日) シャティン競馬場(香港) | ||
7R |
第26回 香港マイル(G1) |
3歳以上 定量 | 1600m 芝・右 | |||
賞金総額 | : | 23,000,000香港ドル | 発走 15:50 (現地時間) | |
1着賞金 | : | 13,110,000香港ドル | 芝:良 |
着順 | 馬番 (ゲート) |
馬 名 (生産国) | 性 齢 |
負 担 重 量 |
騎手 | タイム ・ 着差 |
馬 体 重 (kg) |
調教師 (調教国) | 単 勝 人 気 |
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1 | 5 (13) | ビューティーオンリー(IRE) | せん5 | 57.0 | Z.パートン | 1:33.48 | 523 | A.クルーズ(HK) | 4 |
2 | 6 (05) | ヘレンパラゴン(FR) | 牡4 | 57.0 | H.ボウマン | 1/2 | 481 | J.ムーア(HK) | 8 |
3 | 14 (11) | ジョイフルトリニティ(IRE) | せん4 | 57.0 | G.モッセ | 1 | 520 | J.ムーア(HK) | 9 |
4 | 2 (06) | コンテントメント(AUS) | せん6 | 57.0 | B.プレブル | 1 1/4 | 526 | J.サイズ(HK) | 7 |
5 | 3 (02) | ロゴタイプ(JPN) | 牡6 | 57.0 | M.デムーロ | 1 1/4 | 494 | 田中 剛(JPN) | 5 |
6 | 1 (14) | エイブルフレンド(AUS) | せん7 | 57.0 | J.モレイラ | 2 | 568 | J.ムーア(HK) | 2 |
7 | 12 (08) | サトノアラジン(JPN) | 牡5 | 57.0 | 川田 将雅 | 2 1/4 | 525 | 池江 泰寿(JPN) | 1 |
8 | 11 (04) | ロマンチックタッチ(AUS) | せん6 | 57.0 | M.チャドウィック | 3 | 520 | A.クルーズ(HK) | 11 |
9 | 7 (09) | ネオリアリズム(JPN) | 牡5 | 57.0 | R.ムーア | 3 1/2 | 499 | 堀 宣行(JPN) | 3 |
10 | 10 (07) | クーガーマウンテン(IRE) | 牡5 | 57.0 | D.オブライエン | 3 1/2 | 501 | A.オブライエン(IRE) | 12 |
11 | 4 (10) | ジャイアントトレジャー(USA) | せん5 | 57.0 | C.スミヨン | 3 3/4 | 539 | R.ギブソン(HK) | 10 |
12 | 13 (03) | サンジュエリー(AUS) | せん5 | 57.0 | S.デソウサ | 4 1/2 | 514 | J.サイズ(HK) | 6 |
13 | 9 (12) | ビューティーフレーム(IRE) | せん6 | 57.0 | K.リョン | 7 | 544 | A.クルーズ(HK) | 13 |
14 | 8 (01) | パッキングピンズ(NZ) | せん6 | 57.0 | M.ギュイヨン | 10 | 527 | P.イウ(HK) | 14 |
単勝 | 5 | 530円 | 4番人気 | 馬連 | 5-6 | 4,910円 | 18番人気 | 馬単 | 5-6 | 9,890円 | 33番人気 |
複勝 |
5 6 14 |
200円 480円 850円 |
2番人気 7番人気 9番人気 |
ワイド |
5-6 5-14 6-14 |
1,710円 2,250円 8,390円 |
18番人気 22番人気 51番人気 |
3連複 | 5-6-14 | 26,430円 | 77番人気 |
3連単 | 5-6-14 | 138,840円 | 375番人気 |