“アメリカ競馬の祭典”ブリーダーズカップ(以下、BC)が、カリフォルニア州にあるサンタアニタパーク競馬場で行われた。
日本から遠征したヌーヴォレコルト(牝5歳、美浦・斎藤誠厩舎)が参戦したBCフィリー&メアターフ(G1)は2日目(現地11月5日)の第5レース。
晴れ上がった明るく高い空のもと、多くの観客が見つめる中で注目の一戦の火蓋が切られた。
スタートからほどなくしてアベンジが先手を取り、これをキャッチアグリンプス、キットキャット、プリティパーフェクトらが追う展開。ヌーヴォレコルトもスタートをうまく決め、6番手を追走する形となった。
レースが動き出したのは4コーナー。レディイーライが外目から進出を開始し、直線に入ると先行勢を抜き去って、一完歩ごとに逃げ込みを図るアベンジに迫る。だが、そのさらに外。道中は後方追走で脚をためていたクイーンズトラストが一気のスパートを見せると、粘るアベンジをかわし、最後はレディイーライをゴール寸前でハナ差とらえて勝利を手にした。
ヌーヴォレコルトは4コーナーで勝ち馬のすぐ横にいたものの、これに付いていくことができず直線で失速。11着に敗れた。
ゴール前の攻防
クイーンズトラストが優勝
3着のアベンジに騎乗していたF.プラ騎手は、うまく先行することができただけに、がっかりした様子を見せていた。けれども好対照に、前日のBCディスタフ(G1)をビホルダーで勝利していたR.マンデラ調教師は、プラ騎手の肩を抱き「よくやったよ」と笑顔だった。優勝は逃したものの、果敢に攻める競馬をした点を評価していたに違いない。2着のレディイーライも惜しい競馬だった。
クイーンズトラストを管理するM.スタウト調教師は、L.デットーリ騎手に特別な指示を与えなかったという。デットーリ騎手を信頼していたからだろう。11番という外枠は「不安だった」が、レース前半のペースが思ったより落ち着いたためスムーズに追走でき「幸運だった」とも話していた。
ところで、BCではレース後にある“儀式”と呼ぶべきものが行われる。それは優勝を祝して、勝ち馬に掛けられる優勝レイにあしらわれた花を、勝利騎手がちぎって空に投げるという“儀式”だ。
さらに、L.デットーリ騎手は、大レースに勝利した時、必ず馬上から両手をあげて飛び降りる。「フライングディスマウント」と呼ばれるものだ。彼にとっては、これもまた“儀式”であり、カメラマンの要求にこたえるべく、「いいかい?」と聞いてからジャンプしてくれる。
花を空にまく
フライングディスマウント
このレースでも“フランキー(デットーリ騎手の愛称)”は、花をちぎったし、ジャンプもした。けれども今回は、その前に彼がしたことがある。
デットーリ騎手は笑顔を振りまきながらゴール地点に戻ってくると、まず水を飲んだのだ。それも当然だろう。この日、サンタアニタパーク競馬場の気温は29度。じりじりと日差しが照りつけ、真夏のような暑さだ。この環境のなかで一流の人馬たちが勝利を目指したのである。
デットーリ騎手は、レース後のインタビューでこう答えている。
「レースの前半、ペースは普通だったと思います。実は、スタートで少し出遅れてしまったのですが、クイーンズトラストは自分のペースで走ってくれました。向正面でポジションを見つけようとしたところ、人気のある馬の後方に付けることができました。最後の直線に来たとき、私は3着くらいに入れるかなと思いましたが、そこから突然、彼女にスイッチが入り、最後はトップギアで駆け抜けてくれました。ゴールした時、私は勝ったと確信していました」
勝利を喜びながら、丁寧に質問に答える姿はさすがだった。
L.デットーリ騎手
M.スタウト調教師(左)とおどけるデットーリ騎手(右)
レースの前々日、たまたまデットーリ騎手とすれ違った。
その時、近くにいた人が「今年のブリーダーズカップ、勝ちますか?」と聞くと、「ああ、勝つよ」と彼は答えた。
彼は、その言葉を現実のものとしたのだ。
文:村田利之
馬場へ向かうヌーヴォレコルト
ヌーヴォレコルトは11着に敗れる
ヌーヴォレコルト 斎藤 誠 調教師のコメント
「馬の状態は良く、スタートもしっかり出てスムーズに良いポジションにつけられました。ただ、全体的に速い時計に対応しきれず、小回りコースで息も入らなかったのは残念でした」
ヌーヴォレコルト 武 豊 騎手 のコメント
「スタートも良く、良い位置でレースを進めることができました。人馬ともにベストを尽くしましたが、結果は残念でした。ナイストライだったと思います。いつか日本の馬で、ブリーダーズカップを勝ちたいと思います」
2016年11月5日(土) サンタアニタパーク競馬場(アメリカ) | ||
5R |
第18回 ブリーダーズカップフィリー&メアターフ(G1) |
3歳以上 牝 定量 | 2000m 芝・左 | |||
賞金総額 | : | 2,000,000米ドル | 発走 12:43 (現地時間) | |
1着賞金 | : | 1,100,000米ドル | 天候:晴 芝:良 |
着順 | 馬番 (ゲート) |
馬 名 (生産国) | 性 齢 |
負 担 重 量 |
騎手 | タイム ・ 着差 |
馬 体 重 (kg) |
調教師 (調教国) | 単 勝 人 気 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 11 (11) | クイーンズトラスト(GB) | 牝3 | 54.5 | L.デットーリ | 1:57.75 | M.スタウト(GBR) | 5 | |
2 | 8 (08) | レディイーライ(USA) | 牝4 | 56.0 | I.オルティスJr. | ハナ | C.ブラウン(USA) | 1 | |
3 | 4 (04) | アベンジ(USA) | 牝4 | 56.0 | F.プラ | 1 | R.マンデラ(USA) | 4 | |
4 | 3 (03) | セブンスヘブン(IRE) | 牝3 | 54.5 | R.ムーア | 3/4 | A.オブライエン(IRE) | 2 | |
5 | 6 (06) | ジペッサ(USA) | 牝4 | 56.0 | J.ブラーヴォ | 1 1/2 | M.スティッドハム(USA) | 13 | |
6 | 9 (09) | ライアンズチャーム(USA) | 牝6 | 56.0 | R.ベハラーノ | 1 1/4 | P.ギャラハー(USA) | 10 | |
7 | 1 (01) | シーカリシ(FR) | 牝4 | 56.0 | F.ジェルー | ハナ | C.ブラウン(USA) | 6 | |
8 | 2 (02) | キャッチアグリンプス(USA) | 牝3 | 54.5 | J.カステリャーノ | 1 1/4 | M.キャシー(USA) | 8 | |
9 | 5 (05) | アルズギャル(USA) | 牝5 | 56.0 | J.オルティス | 1/2 | M.メイカー(USA) | 9 | |
10 | 7 (07) | センティエロイタリア(USA) | 牝4 | 56.0 | J.ロザリオ | 3/4 | K.マクラフリン(USA) | 7 | |
11 | 13 (13) | ヌーヴォレコルト(JPN) | 牝5 | 56.0 | 武 豊 | 1/2 | 斎藤 誠(JPN) | 3 | |
12 | 10 (10) | キットキャット(CHI) | 牝4 | 56.0 | G.ウジョア | 1 1/4 | J.シルバ(CHI) | 11 | |
13 | 12 (12) | プリティパーフェクト(IRE) | 牝3 | 54.5 | S.ヘファナン | 1 3/4 | A.オブライエン(IRE) | 12 |
単勝 | 11 | 840円 | 5番人気 | 馬連 | 8-11 | 1,590円 | 4番人気 | 馬単 | 11-8 | 3,460円 | 13番人気 |
複勝 |
11 8 4 |
270円 130円 220円 |
6番人気 1番人気 3番人気 |
ワイド |
8-11 4-11 4-8 |
640円 1,580円 450円 |
5番人気 17番人気 3番人気 |
3連複 | 4-8-11 | 3,890円 | 8番人気 |
3連単 | 11-8-4 | 30,760円 | 92番人気 |
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