2020年の桜花賞でGⅠ初制覇を果たしたデアリングタクトは、オークスと秋華賞も制し、史上初となる無敗での牝馬三冠を達成した。また、2019年の優勝馬グランアレグリアは2020年の安田記念、スプリンターズS、マイルチャンピオンシップを3連勝して、同年のJRA賞最優秀短距離馬に選出された。さらに、2018年の優勝馬アーモンドアイは、牝馬三冠を含むJRAの芝GⅠ8勝という、歴代最多記録を塗り替えた。近年の優勝馬は3歳時だけでなく、古馬になってからも活躍を続けている。今回は過去10年のレース結果から、好走馬に共通するポイントを分析してみたい。
過去10年の3着以内馬30頭中18頭は、前走がチューリップ賞だった。該当馬は3着内率も39.1%と優秀な水準に達している。今年もまずはチューリップ賞組に注目すべきだろう。〔表1〕
前走 | 着度数 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 |
---|---|---|---|---|
チューリップ賞 | 5-7-6-28 | 10.9% | 26.1% | 39.1% |
チューリップ賞以外 | 5-3-4-120 | 3.8% | 6.1% | 9.1% |
一方、前走がチューリップ賞以外だった馬のうち、前走の着順が4着以下だった馬は全て桜花賞でも4着以下に敗れている。チューリップ賞以外のレースを経由してきた馬に関しては、前走の着順で評価するのがよさそうだ。〔表2〕
前走の着順 | 着度数 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 |
---|---|---|---|---|
1着 | 3-3-3-37 | 6.5% | 13.0% | 19.6% |
2着、3着 | 2-0-1-34 | 5.4% | 5.4% | 8.1% |
4着以下 | 0-0-0-49 | 0% | 0% | 0% |
過去10年の3着以内馬30頭中29頭は、前走の単勝人気が5番人気以内だった。一方、6番人気以下だった馬は3着内率1.9%と苦戦している。前走を比較する際は、単勝人気にも注目してみたい。〔表3〕
前走の単勝人気 | 着度数 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 |
---|---|---|---|---|
5番人気以内 | 10-10-9-97 | 7.9% | 15.9% | 23.0% |
6番人気以下 | 0-0-1-51 | 0% | 0% | 1.9% |
過去10年の3着以内馬30頭中23頭は、通算出走数が4戦以内だった。一方、5戦以上だった馬は3着内率6.8%と苦戦している。キャリア5戦以上の馬は過信禁物とみるべきだろう。〔表4〕
通算出走数 | 着度数 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 |
---|---|---|---|---|
4戦以内 | 8-8-7-52 | 10.7% | 21.3% | 30.7% |
5戦以上 | 2-2-3-96 | 1.9% | 3.9% | 6.8% |
なお、通算出走数が5戦以上だった馬のうち“同年のJRAの1600メートルの重賞”において4着以内に入った経験のない馬は、3着内率が2.9%にとどまっている。3着以内に入ったのは2013年3着のプリンセスジャックが最後である。キャリア5戦以上の馬を比較する際は、年明け以降のマイル重賞での実績を重視したいところだ。〔表5〕
経験の有無 | 着度数 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 |
---|---|---|---|---|
あり | 2-2-1-30 | 5.7% | 11.4% | 14.3% |
なし | 0-0-2-66 | 0% | 0% | 2.9% |
過去10年の3着以内馬30頭中28頭は、“JRAの新馬・重賞以外のレース”において2着以下となった経験のない馬だった。一方、この経験があった馬は3着内率2.5%と苦戦している。未勝利、1勝クラス、オープン特別のレースで敗れたことがある馬は、思い切って評価を下げたい。〔表6〕
経験の有無 | 着度数 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 |
---|---|---|---|---|
あり | 0-1-1-77 | 0% | 1.3% | 2.5% |
なし | 10-9-9-71 | 10.1% | 19.2% | 28.3% |
過去10年の3着以内馬30頭中18頭は、“阪神・芝1600メートルの重賞”において3着以内に入った経験のある馬だった。一方、この経験がなかった馬は3着内率8.8%と苦戦している。阪神ジュベナイルフィリーズやチューリップ賞をはじめとする、阪神・芝1600メートルの重賞で好走したことがある馬は高く評価すべきだろう。〔表7〕
経験の有無 | 着度数 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 |
---|---|---|---|---|
あり | 6-7-5-23 | 14.6% | 31.7% | 43.9% |
なし | 4-3-5-125 | 2.9% | 5.1% | 8.8% |
なお、“阪神・芝1600メートルの重賞”において3着以内に入った経験がなかった馬のうち、同年1月もしくは2月に“JRAのオープンクラスのレース”において1着となった経験のなかった馬は、3着内率が2.9%にとどまっている。ちなみに、2014年以降の過去7年に限れば〔0・0・1・70〕(3着内率1.4%)とさらに好走率が下がっている。阪神・芝1600メートルの重賞で好走したことがない馬同士を比較する際は、年明け以降、かつチューリップ賞より前に行われた重賞やオープン特別を勝っている馬に注目したいところだ。〔表8〕
経験の有無 | 着度数 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 |
---|---|---|---|---|
あり | 4-3-2-26 | 11.4% | 20.0% | 25.7% |
なし | 0-0-3-99 | 0% | 0% | 2.9% |
過去7年の優勝馬7頭は、いずれも前走の馬体重が464キログラム以上だった。これより馬体重が軽い馬は、勝ち切る可能性が低いとみておきたい。また、この7頭は前走の単勝人気が3番人気以内だった点、“JRAの新馬・重賞以外のレース”において敗れた経験がなかった点も共通している。〔表3〕や〔表6〕で挙げた傾向も重視すべきだろう。〔表9〕
(伊吹 雅也)
年次 | 優勝馬 | 前走の馬体重 | 前走の単勝人気 | “JRAの新馬・重賞以外のレース”における戦績 |
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2014年 | ハープスター | 476kg | 1番人気 | 出走なし |
2015年 | レッツゴードンキ | 468kg | 2番人気 | 出走なし |
2016年 | ジュエラー | 498kg | 1番人気 | 出走なし |
2017年 | レーヌミノル | 468kg | 1番人気 | 出走なし |
2018年 | アーモンドアイ | 464kg | 1番人気 | 1戦1勝 |
2019年 | グランアレグリア | 482kg | 1番人気 | 出走なし |
2020年 | デアリングタクト | 466kg | 3番人気 | 1戦1勝 |
ご注意 当コーナーの情報は、特別登録の情報に基づき制作されております(データ分析は特別登録発表前に執筆されたものです)。出走回避・出走取消などによりレースに出走しない可能性がございます。また、当コンテンツの内容においては、JRAが特定の馬の応援や推奨などを行うものではありません。