ヽこ。である。である。のである。とサローヤンは書いている。ることがあった。ほしいと思いたかったのだ。しナ「どう乗っても、おれは勝つ」が燃えているようだった。二人の唖がいた。の座に一歩ふみこんでいる。れ、強くなると敬愛され……。」を演じていた。00キロを越えて菊ンボイントにだけは敗けたくない、と思っていた。世評ではテンポイントが上まわっていたが武邦彦はトウショウボーイがテンポイントに敗けるとは思っていなかったのである。と武邦彦は自負していた。レース五分前、武邦彦はちらっと鹿戸明の頻を見た。鹿戸明は、成絨不振だが、なぜかテンボイントに乗ったときだけは別人のようだった。射手座生まれ。一発屋。その目には燐のように肖い炎二人共、中年で黒いよれよれの外套を着て指話で話しながら、穴場に並んで立っていた。私は、そのすぐうしろに立って、馬券を買う順番を待っていた。二人の嘔は仲良く並んだ穴場に手をさし入れた。だが、買った馬券はべつべつだった。一人はトウショウボーイ。もう一人はテンポイントだったのである。なけなしの貯金をおろして、年の瀬の有馬記念に本命馬を買うことを唯一のたのしみにしている槌老院の沢松じいさんは、ことしもためらわずテンポイントを買った。(このじいさんは、去年は一番人気のトウショウボーイを買ったということをおほえているだろうか?)関西の鉄工所で仕事に失敗してクビになった吉武という男は、いま錦糸町でバーテンをやっていた。彼は関西から来た馬が敗けることにだけ賭けつづけるファンだった。テンポイントなんかに勝たれてたまるか、と吉武は心の中で思っていた。何が何でも、トウショウボーイに勝ってもらわねば困るのだ。成紬なんかどうでもいい。大衆の人気だけを伍じたい、と思っているのは、美保さん花賞のグリーングラス、有馬記念のトウショウボーイと互角、そして名実共に「日本一」不運の名烏のイメージは、今やテンポイントからトウショウボーイにうつりつつあった。だがその理由はたった一っしかない。それはトウショウボーイが天皇賞で謎の惨敗をした、ということだけなのである。「こうなったら意地でも人気にさからってトウショウボーイに賭けてやるぞ」と、バーテンの万田は思った。「大体、テンボイントはファンに愛されすぎるのだ。弱いと同情さ武邦彦の騎手生活の中でも、このトウショウボーイとテンボイントの二頭は微妙な役割鹿戸明で連勝してきたテンポイントに、ダービーで乗り替ったのが武邦彦だった。そして武邦彦は、ダービーで七着と惨敗して再び塵戸明に手綱を返すことになったのである。前年、わずか四勝しかしていない裏街道の鹿戸明に対し、つねに話縣を集め花形ジョッキーの座をあゆんできた武邦彦である。テンポイントを敗かしたいというのは男の意地でもあったことだろう。保田厩舎の主戦池上から手綱をもらって有馬記念でテンポイントの鹿戸明と対決し、これを破った。以来、「テンボイントの鹿戸明にだけは敗けない」という慈地を通してきて、今日の有馬記念である。このレースを最後に引退するということもあって、武邦彦はどうしてもテそして泳げないものが海に魅かれるように、男はその苦手に魅きつけられつづける「タカライジンとフジノオーの関係に似ているね」と、スシ屋の政が言った。「テンポイントがタカライジンで、トウショウボーイがフジノオーだ」というのである。タカライジンは他の馬にはほとんど敗けたことがなかったが、どうしてもフジノオーにだけは勝てなかった。ところが、フジノオーは、いろんな馬に敗けた。タカライジンにあっさり一蹴された馬にも、接戦の末、敗れそれでも中山大障害になると、タカライジンと一騎打ちをやって、必ずこれを葬ったの「ということは、テンボイントはトウショウボーイには勝てないということかい?」と訊くと、スシ屋の政はうなづいた。たぶん、この宿命の対決だけは、たとえトウショウボーイが跛になっても、テンボインバーテンの万田も、そう信じたい、と思った。たとえ理に叶わなくとも、そうであってだが、一年前とは状況が大きく変っていた。前年にファン投票一位だったトウショウボーイは、ことしは二位におちてテンボイントに王座をゆずっている。売れ行きも、前日発売で、一時は(生涯ではじめて)四位にまでおちている。一方のテンポイントは圧倒的に他を離しての一位。退ましさも身につけ、体重も、中間調教では五トにだけは勝つような気がするというの6 キ1111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111. 11111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111 20
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