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··:Oけあえるな。するよ。スターがいった。あんたの馬は何てったってヤネがいい、そちらのほうは受彦騎手の騎乗するヤマノテスコの厩務員さんだそうである。にはちょっと負けるな。よし、今夜はカンタの畠山さんのためにおれも乾杯畠山さんがしんみりした声でいった。そして、急に声をひそめて、私にささやいた。ああ、一度でいいから、ほんとうにシービーを負かしてやりたいよ、でだめなら五歳になってからでもいいんだ。ともかく、一度はシービーを負かしてやりたい。シービーはたしかに強い、でも、強いからこそカンタで一度は負かしてやりたいんだ。私が宿舎に帰ったのは九時前だった。宿舎の食堂に入ってみると、サンケイ全員が、どっと笑い声をあげた。マおれの馬も走るけど、ビンゴカンタみんないいやつらだよ、と、年長の厩舎に戻るとい、2苗山さんと別れ、これなら、つて岡部(騎手)も言ってたし、今度こそシービーを負かすぞ。むざむざと指をくわえてシービーに三冠を取らせたんでは、厩務員全体の恥みたいなもんだからね。ベストを尽くしてシービーを負かしにいく、それでも負けるんなら仕方がないよ。鈴木清調教師の顔も見えたので、挨拶をした。畠山さんから、あなたのことは聞いていますよ、と、鈴木調教師が、落ち着いた、ものやわらかな日調でいった。どうです、よろしかったら私たちと一緒に草津に出て食事でもしませんか?草津のステーキハウスで、私は近江牛の網焼きをご馳走になった。畠山さん、宗方調教助手も一緒である。カンタを三歳のときから応援してくださってたそうですね、と、鈴木調教師がいった。これからも、どうかカンタを応援してやってください。わたしも一度でいいからシービーを負かしてやりたいとおもってるんです。調教師の一員として、なんとかシービーの三冠を阻止してみたい。そのためにベストを尽くして、それでも負けたのであれば、そのときには素直にシーピーを祝福したいですね。真冬の一月にカンタの生まれた新冠のアラキファームにも行ってきました、と、私がいった。荒木さんのところで熊の肉のサシミと鹿の肉のサシミをご馳走になりました。あれはおいしかったですね。帰ろうとしたら、路面が凍ってて車がゆるい坂道をのぽれないんです。荒木さんをはじめ、牧場の人たち全員で車を押してもらって、やっと動き出すことができました。荒木くんも菊花賞には応援に来るといってましたよ。そうですか。ペケ印の赤い覆面がシービーを追いつめていったら、荒木さん、どんな顔をするでしょうね。これから新幹線で東京に戻るという鈴木調教師と別れて、私たちはトレセンに戻った。」ハ時すぎだった。厩舎に戻って寝るにはまだ早過ぎるよ、と畠山さんがいった。厩務員だった人がやってる飲み屋が近所にあるから、焼酎のお湯わりでも飲んで帰ろうや:私たちが店に入ると、やあ、ビンゴカンタの畠山さん、と、あちこちから声がかかった。どうやら、お客さんも全員が厩務員さんであるらしい。畠山さん、菊花賞の前祝い、ですか?うんうん、まあ、そんなもんだな、と畠山さんがやんわりと受け流した。いやあ、畠山さんの馬はいいよ、と元厩務員のマスターがいった。今日、トレセンに用があって行ったついでに馬を見てきたんだが、畠山さんの馬は実にいいデキだった。あれは絶対に走るな。おれが受けあうよ。ンターの中央から声がかかった。おれの馬も受けあってくれよ。うん、一度っきりでいいんだ。菊花買おれの馬はどうだった?と、カウおれの馬は?といったのは、武邦53 四けいば宝島ものがたり

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