JRA Dressage Training
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問題解決のパターン097◆ケース1パッサージュからピアッフェへスムーズに移行しないフェと認識するように、またその作業意欲を掻き立てるように、トレーニングを行うべきである。ピアッフェへの意欲を掻き立てるには、やはり馬自らの意思が必要であって、騎手がいくら強い脚で圧したとしても、ピアッフェには繋がらない。普段のトレーニングから、ピアッフェへの意欲を創造していなければならない。半減却を使ってパッサージュの歩幅を詰めても、馬がより活発にならない場合は、ペナルティとして脚または鞭で推進の強い合図を送る。そして、もう一度トライして馬の意思を待つ。このことを常に繰り返し、馬の自発的な運動意欲を掻き立てる必要がある。◆ケース2ピアッフェをすると立ち上がる運動の応用て、ピアッフェにスムーズに移行せず、停止してしまったり、活発なピアッフェをしなかったりする場合がある。ピアッフェの妥協点ピアッフェをどの程度要求するかという問題は、主に調教進度に関わってくるが、調教初期は僅かに前進しながら行うべきである。初めから同じ場所(スポット)で実施しようとすると、後躯へ過度の負担が掛かり過ぎてしまい、後肢の動きがスローになり、軽快なステップを踏む機会を逸してしまう。また、前進することと同様に妥協すべき点は、後肢の動きである。初めから大きくスイングした後肢のステップを要求するのではなく、ほんの僅かにリズムが生まれれば直ちに常歩にして、褒めるべきである。その後、数歩でも同じように実施できれば、長い間継続しないほうが良い。騎手がピアッフェを要求した時に、いつでもすぐに反応するということが重要であり、それがピアッフェを成功に導くことになる。馬が疲れてしまうほど長時間要求すれば、後肢のリズムが失われ、馬も自信をなくしてしまう。ピアッフェという運動が、馬にとって楽しく思えるようにすることが最も大切なことである。これは、騎手がパッサージュとピアッフェを全く別のものと考え、移行の際にエンジンのパワーを弱くしてピアッフェへ移ろうとするために起こることが多い。これを解決するには、移行の間に、パッサージュの歩幅をできるだけ小さくしていく段階を作ることである。ピアッフェを始めるポイントから3歩ほど遡り、ステップの幅を縮めたパッサージュの段階を作る。そのときの扶助は、拳でのコンタクトを強く保ちつつ、脚の推進を強めてハミにぶつけていって収縮度を高める。半減却が通っていれば、次のピアッフェへの移行の準備が整う。そうして、エンジンが吹き上がりながらピアッフェへ移行できるようになる。パッサージュの歩幅が縮まると馬自らが次はピアッこの問題は、馬の反抗から生じている。ピアッフェを調教し始めた初期のころに起こりやすいが、長く調教されている馬でも苦しくなった時にはこのような行動に出ることが多い。これを解決するには、推進とハミ受けのバランスに変化を付けてみるとよい。特に、ハミ受けはピアッフェ前に強く譲らせておいて、抵抗を取り除いておく必要がある。馬が立ち上がる場合の多くは、ハミを受けた体勢になっておらず、いつでも頭を上げられる状態にある。例えば、ハミを受けた状態で、馬の頸を左右どちらかの低い位置で大きく屈曲させながらピアッフェに入ると、立ち上がりにくい体勢を作ることができる。立ち上がって興奮する馬に対して強く懲戒すると、馬がピアッフェに対して嫌なイメージを抱くことになるので、騎手は決して感情的になってはならない。ピアッフェを苦しい運動と認識してしまっている場合は、懲戒することによって問題をさらに大きくしてしまうことになる。よって、ピアッフェの反応が出た直後に愛撫してピアッフェを終え、再度短いピアッフェを実施する。また、頭頸を低く保ち、1mほど前進しながらのピアッフェをすることもリラックスした環境になって効果がある。

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